熊本市議会の緒方夕佳議員(42)が、議会に生後7か月の子どもを連れて出席しようとした件が未だ話題だ。BBCやガーディアンなどの海外メディアでも取り上げられるなど、その反響は大きい。


初出の報道では緒方議員が何の前触れもなく議場に子供を連れてきたとの印象が強かったが、実際には妊娠が分かってから何度か、事務局側に環境整備を求めていたようだ。


■「私と赤ちゃんが座っているその存在自体が、一番強く訴えられるのではないかと思った」



議会事務局によると今年1月頃、緒方議員から、「子どもを連れて議会に参加したいので託児所を作って欲しい、だめな場合はベビーシッター代を公費で出してほしい」との要望があり、事務局側は、市民が子供を預ける際には個人的にお金を払っていることを挙げ、「気持ちは分かるが、議員のために税金で作ることはできない。個人で預けてきてください」と回答してきたという。


議場に連れていきたいとの相談はなかったというが、「もし事前にあって連れてきていたら、議場に入る前に止めていた」と、対応を明かす。


NPO法人フローレンスの代表理事・駒崎氏は自身のブログで、緒方議員の行動を「通常のルートで訴えをしていて、それが叶わなかった」と擁護していた。これを踏まえ議会事務局に対し、子育て環境の充実化を訴える方法が今回の行動以外にあったと思うか訊ねると、



「委員会への要望書提出が考えられます。

これは委員会に出席していなくても誰でも可能です。他にやりようはあったと思います」


と、赤ちゃんを議場に連れてくる以外にも手段は残されていた、との回答だった。


一方で緒方議員は、子育て環境の整備を訴えても変わらない現状に歯がゆさを抱えていたようだ。26日放送の「Mr.サンデー」(フジテレビ)では事務局の対応について「(子育ては)個人的なものでしょと矮小化されてしまう。どんなに訴えても前に進まない」と話し、その上で、



「(子育て世代の)悲鳴のような声を可視化したい。私と赤ちゃんが座っているその存在自体が、一番強く訴えられるのではないかと思いました」


と、今回の行動に踏み切った理由を明かしていた。


■議会は処分を検討? 過去に前例のない事態


番組では他の熊本市議員の声として「市役所に託児所を設置するのも大事だが、それより優先すべき事業もたくさんある」「これを許すなら、我々も高齢者や障害者などを連れてきて出席していいのか」などの批判が紹介されていた。


緒方議員のフェイスブックページには、今回の行動に対して賛否両論のコメントが寄せられている。つるの剛士さんなど著名人もツイッターやブログでこの件に触れているが、必ずしも好意的な見方ばかりではない。


一部報道では、議会開始を40分遅らせた緒方議員に対し処分が検討されているとも言われ、事務局によると、今週水曜日の議会運営委員会で話題に上がる可能性があるという。なお、過去の熊本市議会では、会議開始を遅らせたことを理由に処分された例は無いとのことだった。