偏差値75のモテない男子校生たちはなぜギャルゲーを作ろうとしたのか

今、ネット上であるギャルゲーがちょっとした話題になっている。それが「天穹の境界線」。

といってもこのタイトルはまだリリース前。昨年末にクラウドファンディングサイトで発表されると、目標金額の30万円をあっという間に達成し、今では140万円に届こうとしている。
一見ただのギャルゲーであるこのタイトルが話題になっているのには理由がある。これを制作しているのはなんとモテない男子校生たちなのだ。
8人からなる制作チームのうち6人は、偏差値75とも言われる名門・麻布学園の生徒。毎年80名近い東大合格者数を出す名門校の中高生がなぜクラウドファンディングで資金を集めてまでギャルゲーを作ろうとしたのか?

「ギャルゲーを作ってみることはオタクの夢なんです」
偏差値75のモテない男子校生たちはなぜギャルゲーを作ろうとしたのか
Noel Worksの男子校生メンバー。この他にTwitterでの呼びかけに応じて参加した2名の女子高生がいる。


ベンチャー企業並みの企画・遂行力


インタビューに応じてくれたのは、メンバーで唯一の中学生である電球くん(ハンドルネーム)。

「プロジェクトチームNoel Worksの代表のCleyera*(ハンドルネーム)がギャルゲーを作りたいと言い出してクラウドファンディングをすることにしました」

これだけを聞くとただ高校生がノリで始めただけのものに聞こえるけれど、ここからが彼らのスゴイところ。


「やるなら本格的にやりたいね、ということでかなりがんばりました」

Cleyera*くんが、学内の「オタクネットワーク」(電球くん)とゲーセン仲間から人を集めて8人のチームを編成。全国大会にも出場しているプログラマーを引き入れ、シナリオは複数人からなるチームを編成。ゲームのイメージを決定するキャラクターデザインと歌には学外の女子高生をリクルーティングし、声優は声優養成学校に通う中高校生をブッキング。

さらにプロジェクトをすすめるにあたり、ティーンエージャーの起業を支援する投資家の支援をとりつけ、オフィシャルサイトを立ち上げTwitterFacebookページでも発信を始め、そしてクラウドファンディングを実行したのだ。
偏差値75のモテない男子校生たちはなぜギャルゲーを作ろうとしたのか


綿密なクラウドファンディング戦略


「私はシナリオとクラウドファンディングを担当しています。ちゃんとプレスリリースも作って、ネットメディアにアポなしで掲載の依頼をして採用されたこともあります」(電球くん)

自分のことを「私」と呼び、飛び込みでメディア掲載を勝ち取る中学二年生を擁するこのチームは、もはや中高生のサークル活動というよりはベンチャー起業そのもの。

クラウドファンディングでも闇雲に支援を募集するのではなく、5,000円から始まるギャルゲータイトルが多い中、3,000円から支援可能という価格戦略に出て、ストレッチゴールの内容もどんどん充実させて支援額を伸ばし続けている。


そしてリリース前からすでに翻訳版の発売の話まできているというのだからスゴイ!


怖いのは締切と炎上


資金も順調に集まりさぞかし楽しいのかと思いきや、

「予想よりもお金が集まって、プレッシャーを感じています。ネット上で炎上したこともありますし、締切りにも追われていますし、7割がたは大変さが勝っています」(同上)

と発言までベンチャー起業家さながらだ。

このプロジェクトを支援しているのは、主に20代~30代の男性とのこと。

「この世代の人が多くプレーをしていることもあると思いますが、やはりギャルゲーをする人にとって実際にギャルゲーを作ってみるのは一つの夢みたいなところがあるんです。そういう人が僕らに夢を託してくれているところもあると思います」(同上)
偏差値75のモテない男子校生たちはなぜギャルゲーを作ろうとしたのか
「天穹の境界線」への支援は2018年1月12日までクラウディファンディングサイト「Campfire」で募集されている。


「モテない男子校生」がギャルゲーのシナリオを書ける?


ところでここで大きな疑問が湧いた。このギャルゲーを作っているNoel Worksの面々、「モテない男子校生」ということはリアルでの恋愛経験はさほど多くないはず。それどころか、男子校ということは女の子との接点もあまりないのでは? それで本当に面白いギャルゲーのシナリオが書けるの? そんな意地悪な質問をぶつけてみた。


「恋愛できていないから妄想が膨らむんです! その思いを、思い切りぶつけて創ってます!!」(同上)

ベンチャー起業さながらの緻密な計画と、思春期の抑えきれないリビドーが融合してできた「天穹の境界線」は2018年1月12日まで支援可能だ。
(鶴賀太郎)