第3週「そんなん絶対ウソ!」 第13回10月15日(月)放送より
脚本:福田 靖 
演出:渡邉良雄
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎
「まんぷく」13話。横流しって何?シリアスとコミカルの大胆な掛け合わせ
連続テレビ小説 まんぷく Part1 (NHKドラマ・ガイド) NHK出版

連続テレビ小説 まんぷく Part1

13話のあらすじ


眼の前で萬平が、軍事物資横領(根菜裁断機の材料・ジュラルミン)の疑いで憲兵に逮捕されてしまった福子(安藤サクラ)は涙にくれる。

横流しって何?


物資の横流しといえば、野呂(藤山扇治郎)が思い浮かぶ。
缶詰を3年に渡って横流ししていた疑いがある。自分で買ったのかもしれないが出処がぼかされている。

つまり、2週間に渡って“横流し”を事前にちらつかせていたのだ。なんという遊び心!
・・・というにしては話がヘヴィ過ぎる。

福子の大切な萬平さんが大変なことに。
ショックでぼーっとしていると、鈴(松坂慶子)は自分と同じく、亡くなった咲(内田有紀)のことを考えていると思い込んで、ちっとも悩み相談に乗ってくれない。

福子「横流しってなに? お母さん」
鈴「えっ ぼんぼり 川に流す あれは精霊流し なくなった人の魂弔って・・・」
福子「そんなに悪いことなん?」
鈴「悪いことやないわよ(後略)」

ここでおもしろを入れてくるところで、伝統朝ドラと見せて、それだけでないことがわかる。

Q 横流しって何?
A あなたのもらった缶詰よ
と思った視聴者も少なくないのではないか。


ロッカー室での女子トーク


ダーン! っと、ふざける気持ちをぶった切る音がして、
「事態の深刻さは福ちゃんの想像をはるかに越えていたのです」と芦田愛菜ちゃんのナレーション。

萬平さんはひどい目にあっている。
顔を殴られ、メガネも壊れてしまった。
彼が横流しした相手は自殺してしまい、彼の無罪を晴らす証拠がいまのところない。

東大阪分遣隊・村城啓治(平原テツ)
東大阪分遣隊軍曹・原拳三郎(木内義一)
・・・と、このドラマ、出てくる人にちゃんとフルネームがついているのが良い。

ホテルのロッカールームで福子がぼーっとしてると、保科さん(橋本マナミ)は自分の恋の話に夢中。

保科「一緒にしないで」
福子「保科さんなら(後略)」
保科「今井さんなら(後略)」
福子「じつは立花さんが」
保科「もういい」(立ち去る)
福子「えーー」

木のロッカーでクラシックだが現代の女子ロッカー室での会話と同じようで可笑しい。
でも事態は深刻だ。

牧善之助の治療シーン


てっきり加地谷(片岡愛之助)が犯人かと思いきやそうでもなさそうで、萬平逮捕に苛立ちを見せる。
いったい誰が萬平を陥れたのか。ミステリー的な興味も加わった。

野呂も保科さんに夢中で、福ちゃんのことなどお構いなし。あんなに思い入れていたのに。
そして彼の恋のライバル・牧善之助(浜野謙太)の治療シーンがいよいよ登場。

患者の田窪平吉(上原厚文)が、近所で人(萬平のこと)が捕まった噂話をする。
憲兵に捕まったら大変だということをここで説明。

ここもクラシックな歯医者の美術がすてき。
馬の置物があって牧が馬好きなのがわかる。
ボリューミーな助手もいいかんじ。
「まんぷく」は美術が丁寧。
豚の蚊取り線香から煙がもくもく出ているところも風情がある。

説明台詞の処理が巧い


ようやく、ご学友・鹿野敏子(松井玲奈)と池上ハナ(呉城久美)が福子の話を聞いてくれる。
回想の形ではなく、ひとに話す形で先週の物語を繰り返す。今週から見た人にも、先週のことを忘れてしまった人にも親切設計だ。歯医者のシーンといい、ここといい、福田靖は、説明台詞の処理が巧い。

牢屋に入れられてしまう萬平。

牢屋主が稲村大悟(六平直政)でいかにもワルのボス感を醸す。
萬平「僕は・・・無実です」
稲村「そういうこというやつがいっちゃん悪さしとるんねん」と笑い飛ばす。

こういう追い詰められた場面は長谷川博己の真骨頂といえるだろう。藤原竜也と並ぶ二大追い詰められ俳優と私は思っている。
長谷川と戦争ものといえば、映画「この国の空」(15年、荒井晴彦監督)が鮮烈だが、戦争で追い詰められる話なら、舞台「赤い月」(05年 「てるてる家族」のなかにし礼作)で阿片中毒になってしまう役が忘れられない。このとき彼は関東軍秘密諜報機関員の役だった。


朝のドラマらしからぬ不穏な空気全開の一方で、福子が「た〜ち〜ば〜な〜さん〜ん」と漫画っぽい。
まだ十代の子供感を出しているのもあると思うし、ふたりしてディープになると見ていて辛いという配慮であろうか。
芦田愛菜ちゃん「萬平さんを助けることなどできるはずもありませんでした」という快活な優等生の読書のようなナレーションも“これは物語ですよー”とフォローしてくれているようで救いである。

13話はシリアスとコミカルを大胆に組み合わせた挑戦回といえるだろう。
(木俣冬)

連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝ドラ「べっぴんさん」もBS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
いびりもあるけど、戦地から早くも人が帰ってくる。「べっぴんさん」第13話レビューはコチラ