真海「清濁併せ呑んで生きてきた人間は、必ず自分の中に悪魔を抱え込むことになる。私は、あの呪われた家に住む悪魔を、目覚めさせただけだ」

5月17日(木)放送の木曜劇場モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―(フジテレビ系列)第5話。

真海の復讐劇において、ついに死者が出た。亡くなったのは、外務省職員・出口文矢(尾上寛之)。入間公平(高橋克典)の娘である未蘭(岸井ゆきの)の婚約者だ。
ディーン・フジオカ「モンテ・クリスト伯」家にいるだけで華麗なる復讐が進む5話
イラスト/Morimori no moRi

最初の死人に「喜びの歌」


真海「これで、入間家は崩れ去る。最愛の息子にすべての遺産を遺すために、悪魔は必ず壊すはずだ。入間公平の、一番の宝物を」

5話では、無実の真海(ディーン・フジオカ)をラデル共和国の刑務所に送った公平が、復讐の標的となった。
父・貞吉(伊武雅刀)への憎しみから、権力への執着心が強い公平。
彼は、外務省の若手官僚・出口と未蘭を結婚させて家系に箔をつけようとしていた。一方、海外で出口と交友を温めていた真海。遺産のために貞吉を殺すことを、出口に提案する。

出口を演じている尾上寛之は、『アンナチュラル』(TBS系列)、『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系列)と続けて殺人犯役を演じてきた。本作でも焚きつけられて貞吉を殺してしまうかと思いきや、亡くなってしまったのは出口のほうだった。

もしや真海の計画が崩れたのか、と心配になる。

他にも、南条すみれ(山本美月)が入間夫妻と真海の食事会に突然参加したり、守尾信一朗(高杉真宙)が未蘭に恋心を抱きはじめたり。真海の復讐プランにない、想定外の動きが頻発しているように見えて怖い。復讐や殺人は善いことではないのに、滞りなく進むようにといつの間にか祈ってしまう。

愛梨「出口文矢が死にました。心不全で処理されたようです」
真海「それは良かった」

そんな心配など無用とばかりに、すべては真海の計画通りだったことが明かされた。
彼はピンチになど少しも陥ってはいない。
なのに、真海の肩を持てば持つほどハラハラする。脚本が、見ている我々を振り回して遊ぶような躍動感を帯びてきた。
真海はすみれ以外の何にも動じない。だけど、見ているこちらは心揺さぶられる。脚本のてのひらで踊らされているようで、悔しくも楽しい。

入間家では、過去に公平の前妻であり未蘭の母親である女性が亡くなっていた。
公平は、貞吉が前妻を殺したと思い込んでいる。しかし、本当は後妻の瑛理奈(山口紗弥加)が毒殺したのだ。
真海は、出口を装って瑛理奈に手紙を送った。内容は、瑛理奈の過去の殺人を知っていることと、貞吉の遺産を分けるように促すものだ。どちらも彼女にとって都合の悪いこと。その手紙と真海が以前渡した薬が、彼女が再び殺人を犯す後押しをした。


出口を殺した翌日の朝、瑛理奈は「喜びの歌」を歌いながら証拠を隠滅していく。
公平は、警視庁刑事部長のプライドから自宅を捜査させることはない。そして、万が一バレても家族から殺人犯を出すわけにはいかず、妻を守ってくれるはずだ。安心して邪魔者を殺せるのだから、そりゃ、「歓びの歌」だって歌ってしまうだろう。

真海が遠くで息を吹きかけると、それが風になり、いずれ嵐になってターゲットの周りを壊してしまう。真海は、家でただ椅子に座って待っているだけ。
なるほど、これぞ華麗なる復讐だ。

復讐劇の舞台に上がった高杉真宙


今回、信一朗が未蘭の家を訪ねてくる場面が示唆的だった。
未蘭が探していたダボハゼのオスを釣り、届けに来た信一朗。未蘭は、自分は結婚するからそれは受け取れないと言う。

未蘭「ありがとうございます。そのオスは、海に帰してあげてください」

入間家で生き死んでいくダボハゼのメスは未蘭のよう。オスについては「海に帰してあげて」と言う。それは、いつか故郷の海に帰りたいと思っている信一朗を表しているようにも聞こえた。淡々と進む真海の復讐劇の傍ら、この2人は別な世界観を持っている。

未蘭は、自分の生い立ちや家庭の事情を話し「でも、信一朗さんは、こんな息苦しい家に入らないほうが良いと思います」と言った。
しかし、そのあと未蘭の悲鳴を追って、信一朗は“こんな息苦しい家”に足を踏み入れてしまう。信一朗は、未蘭のために復讐劇の舞台に上がった。
信一朗の存在が、真海の復讐にどのように影響していくのか、心配でもあり楽しみでもある。

次回のターゲットは南条幸男(大倉忠義)。これまで何度も真海の意思に背いてきた愛梨(桜井ユキ)が、なぜ真海から追放されることがなかったのか。それも明らかになるはずだ。
第6話は、今夜10時から放送予定だ。

(むらたえりか)

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木曜劇場モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―(フジテレビ系列)
原作:アレクサンドル・デュマ(仏)『モンテ・クリスト伯』(1841年)
脚本:黒岩勉
音楽:眞鍋昭大
主題歌:DEAN FUJIOKA 『Echo』(A-Sketch)
プロデュース:太田大、荒井俊雄
演出:西谷弘
制作・著作:フジテレビ