dTVでオリジナルショートアニメ「d松さん」が公開されるそうで。もちろん独占配信。

中身はトト子×6つ子と、イヤミ×6つ子の2人の会話劇で、全12話。
正直最近ネットテレビ増えすぎなのでもうこれ以上登録したくないんだけど…見たい……。
「おそ松さん」2期14話。意識高すぎる真面目系クズは本当に手に負えない、チョロ松一番面倒くさい
「4コ松2さん」六つ子でファッションを揃えて、というイラストはとても多く、それぞれ性格にあわせて6通り出せるので見ていて楽しい。一松似合ってるなー

真面目系クズのチョロ松


6つ子でもっとも真面目っぽく見えのがチョロ松
しかし一通り見てきた人ならわかるはず。チョロ松が一番面倒くさい
非常識キャラ十四松ですらわきまえる一線を、チョロ松は自意識過剰さゆえに踏み越えてしまう。

14話の「チョロ松事変」では、チョロ松が髪を茶色に染めた。

「兄弟の中で一番真面目で一番優等生でみんなの見本となるべきチョロ松兄さんが、年が明けた瞬間に急にどうしちゃったんだろうと。もしかして不良になっちゃったの?と不安になるかもしれない」
「でもさ、不安にはなんないでほしいんだよ。茶髪にはなっちゃったけど、中身はぼくのままだから、不良じゃないから」
似合っているかどうかはともかく(服装とあわせて整えたらそんな悪くないぞ)、彼の自意識がただただ鬱陶しい。
わざわざ茶髪にしたのを発表することで、自分は真人間として見られているよねアピールをして、同意的返答を求めているのが厄介だ。

他の5人はアクは強いものの、自分たちは一般の人とくらべて何ランクも下にいるとわきまえているので、外向けには控えめだ。
ところがチョロ松は「真面目」というキャラを家庭内で演じるがゆえに、対外的にも背伸びをした「優等生チョロ松」の虚像を持ち出してしまう。

前の回で、チョロ松は年賀状を作っていた。
しれっと、就職をした、と嘘を書いて投函。これにはふざけて年賀状を書いていた兄弟も愕然。

真人間アピールでマウントをとって自分のプライドを保つ、「真面目系クズ」
なまじ悪人じゃないだけに、扱いが難しい。

チョロ松の自意識


自意識過剰キャラとして比較したいのは、カラ松。こじらせ中学生みたいなキャラだ。

カラ松の服装は、チョロ松の比にならないくらいにダサい。
じゃあなんで問題にならないかと言うと、周囲からいくらバカにされようと、彼は自分が楽しんでいるからだ。

チョロ松は基本的に、人にどう見られるかで行動する。
今回の頭髪も、年賀状も、普段読んでいる就活本も、全て人の視線を気にしている。
何より今回呼んだのは、一松、十四松、トド松と自分の弟だけ
文句を言わせず、マウントを取る気マンマンだ。


一期10話では「チョロ松ライジング」にて、就活してますアピールをしまくるチョロ松の様子が描かれた。
「意識高い系」をこじらせた彼。ラストはスタバで、ダンボールのパソコンとケータイを使うビジネスマンごっこをはじめる、ホラーのようなオチになった。

自意識は膨れ上がった時に、人より目立ちたいという自己顕示欲へと変化する。
さらに相手からの反応を求める過剰な承認欲求の塊になってしまう。
強気な言動に反して、実質はどんどん受け身になっていく。

かまってちゃんだ。

兄2人はその点頑丈だった。
おそ松は自分勝手ではあるが、弟5人のことが大好きで、時折お兄ちゃんらしく一肌脱ぐ。
カラ松はかっこつけな部分が多すぎるが、「ブラザー」と言いつつ兄弟のために駆け回れる。

「誰かのため」ができると、自意識の負の連鎖から意識をそらすことができる。
一期で出てきた「自意識」の描写は、おそ松は指先サイズの小さな凸凹の球、カラ松は手のひらサイズの水晶玉だった。

一方、チョロ松の自意識は手を離れ、どんどん膨らみ巨大になってしまった。

「常識人」「真面目」で身を固めていないといけないくらい、チョロ松の心は脆い。
そして、彼の茶髪デビューと自意識ライジングという黒歴史を、成人式の夜に流したスタッフ、相当狡猾だと思う。

現実と妄想と死の狭間、実松さん


「実松さん」を正月早々やるのが、なんとも『おそ松さん』らしい。

1期13話の「実松さん」は、人と話すのが苦手で会社では後ろ指さされる中年・実松の一日を描写。
職場で馬鹿にされたり、痴漢冤罪に巻き込まれたりと、散々な日々を送る彼。たくさんの食材を買い込んで家へと帰り、6人の兄弟とすごすのが彼の唯一の幸せ。
しかしそれは実松の一人芝居。全て妄想だった

2期14話では実松が、おそ松たち6人の兄弟の一人として描かれる。
兄弟でワイワイのびのびすごす幸せに浸る実松。辛い現実の日々を忘れ、すっかり松野家に馴染んできた。
だが、長くは続かない。その光景は交通事故に合った時に見た走馬灯だったことが判明する。

1期では実松の声が十四松と同じ小野大輔だったため、十四松だけが生き残った世界ではないか、という説がファンの間でたった。
実松の世界が現実で、普段見ている「おそ松さん」のスラップスティックワールドは死後の世界ではないか、という話題もあがった。

「自己責任アニメ」なので、正解はおそらくないだろう。
ただこの作品は、誰もが経験する人生のしんどいところや思い出したくない部分をえぐり出して、笑い飛ばしてしまおうという、赤塚不二夫の「これでいいのだ」精神が強い。
何もかもうまくいかず妄想に逃げるしかない人間の姿は、確かに見ていてキツイ。
そんな悲しみを「実松さん」で噛み締めたあとに、あとは笑い飛ばして、今年も「これでいいのだ」と開き直る糧にしようぜ、という誘いなんだろう。

(たまごまご)