今夜、19時54分からテレビ東京系列で放送される「緊急SOS!史上最大の池に異常発生!怪物10000匹!?池の水ぜんぶ抜く大作戦5」
日曜ゴールデンというこれ以上ない家族団欒の時間に、文字通り「池の水を抜く」だけで2時間お送りするなかなかにケンカ腰なシリーズ。だが、この番組は我々の中に長らく眠る「池の水を抜きたい!」という潜在欲求を見事に刺激してくれるのだ。

反響も大きく、今年1月15日放映の初回から毎回確実に視聴率を稼ぎ、なんと9月3日の第4回(ハイペース! 2回目 4月23日、3回目 6月25日)では、制作費が10倍は違うであろう「大河」を破り、王者「イッテQ」に次ぐ11.8%を叩き出した。

が、何が魅力なのか?
この番組の舞台となるのは、太古の恐竜の棲むスコットランドの湖でもなければ、湖底に古代ローマの遺跡が眠るカリオストロ公国の湖でもない。おらが町の、毎日通り過ぎているが誰も気にも止めない、日常に埋没したドブのような汚い池だ。通勤通学の傍ら目にしながらも、ジャングルや絶海の孤島などよりも意識の中でもっと遠くに置き去りにしてしまっている「生活圏の秘境」。この企画は、そんな灯台下暗しな「秘境」に価値を見出し、ヘドロの下に埋もれる「金脈」を掘り起こす。さすが「予算はないが知恵がある」テレ東。

「池の水ぜんぶ抜く大作戦5」は今夜も大河の視聴率を抜くのか。全4回の事件を掘り返してみた
記念すべき初「水抜き」に選ばれた滝王子神社の池(品川区・大井)。左の壁の下から湧き水が滲み出てきており、手前が暗渠。思ったより水が濁っているのはやはり鯉が多いためだと思われるが、いるはずの巨大スッポンは見つけられなかった。

あんなところにこんな生物が?


初回に「抜かれ」たのは品川区・大井の名も無き池で、正直ゴールデンで扱うような華やかさは皆無。しかしこの露天風呂程度の小さな池から、大量のアカミミガメだけでなく、地元民も知らなかったウミガメのようなスッポン(70cm)が飛び出す。特大の鯉(90cm)や絶滅危惧種のカワアナゴまで見つかりカオス状態。さらに水を抜いたからこそわかる暗渠の存在や、側壁から僅かに滲み出る湧き水の存在なども確認でき、生物的にも地理的にもそそられる。

予算がある番組は、海外などに遠征し絶景や名所を巡る。しかし画面内に溢れる「いつもの」絶景に、もはやリアリティを感じることは少ない。それに飽き足らない人々が、この番組からしたたる圧倒的なリアリティに飛びついたのではないだろうか? はるか遠方のよく知らぬ美的景観や眉唾なUMAという「虚構」より、住宅地の稲荷神社の汚水の底で泥まみれでうごめくスッポンという「現実」にときめきを感じたのだ。
もちろん街なかでない池も出てはくるのだが、この企画のキモは身近な池にあると思われる。

ドラマ終わりのニュース等でふいに流れるお堀や公園の池の水抜き調査の映像に「あんな所にこんな生物が?」と替えかけたチャンネルを止めてしまったことがないだろうか?
あの感覚。あれを2時間まるまる楽しめるなんて、まるで駄菓子を大人買いをするかのような禁断の気持ちよさだ。

水抜きベスト5


ここで過去4回の放送から印象に残った水抜きベスト5を挙げてみたい。

第5位 品川区の原の子水神池(第2回放送)
第1回の滝王子稲荷神社の回を見た隣町からのオファー。地味な池ながら、池を守る組合のお年寄りが「洗うと目が治った」ほど綺麗だったと語る昔の様子に生きた歴史を感じる。床だと思っていた部分が全て暗渠で実は倍の大きさだったりと構造的な面白さも。
先日個人的に訪れたところ、番組内では20匹保護と言っていたモツゴ(この地方ではクチボソ)がその何倍もいたのが嬉しい。
「池の水ぜんぶ抜く大作戦5」は今夜も大河の視聴率を抜くのか。全4回の事件を掘り返してみた
原の子水神池(品川区・西大井)。オンエアにも登場していた組合らしい方が懸命に落ち葉を掃除しており、そのかいあってか水質は大変綺麗。おじさんの立っているこの床全体が暗渠。中央の垂れ下がる植物の茂みからわずかだが湧き水が滴っており、収穫した野菜の洗い場だったという昔は水量も豊富だったのだろう。路地にしか面していないため地元でも名前はおろか存在を認識してる人は多くない。

第4位 横浜市戸塚区の谷矢部池(第2回)
小学校のすぐ横の池から特定外来生物のアリーゲーターガー(80cm)を捕獲。番組が「化物」扱いするガーのことを「この子」と呼び「この子としても辛い」という目線をしっかりと持つココリコ田中。原産地の北米では絶滅危惧種になっていて逆に保護されているというから考えさせられる。ポンプのバルブを締めてるだけの水抜き業者をちびっこみが取り囲み「がんばれー!」と応援する謎のヒロイズム有り。どこの現場でもそうだが、子供がとにかく強く興味を持っているのが成功のヒントなのかもしれない。


第3位 日比谷公園の雲形池(第3回)
なんと110年ぶりの水抜き。元々武家屋敷のため江戸時代の鍋島家(肥前守)の家紋入りの瓦(軒丸瓦)が発見された貴重な回。「直虎」で時代考証を務める歴史学者が登場する小さな「裏かぶり」も。ロンブー淳が、ヘドロをバキュームしながら発した「ヘドロに宇宙を感じるんだよ」は名言。

第2位 千葉市の泉自然公園の池(第3回)
番組のファンだという芦田愛菜が参戦。入水1分でヘドロに埋まり身動きできず救出されるという見せ場を作る芦田プロ。
かつて芦田が好きで飼っていたというアカミミガメが何匹も見つかるが、特定外来生物のため駆除される悲しさ。専門家が驚愕するデカさ(ラグボール大)の淡水の二枚貝・ヌマガイが17個も出土、逆に小さな芦田はタライで運ばれたりとアリエッティ感がすごい。

第1位 座間市の立野台公園の池(第3回)
水面を泳ぐカルガモ(親ガモ!)を突如水中に引きずり込んだ「怪物」を追う。泥底から出てきたのはガメラのモデルともいわれる80cmを超えるワニガメ。警官まで出動し「でけぇ!」と絶叫。「この子はこの子で可哀想」という慈愛を決して忘れない田中。
浮きながら水だけを吸い込む新兵器フローティングポンプも登場。
「池の水ぜんぶ抜く大作戦5」は今夜も大河の視聴率を抜くのか。全4回の事件を掘り返してみた
原の子水神池にて許可を得て落ち葉掃除を手伝わせていただいた。ボロボロのネットの具合から長年落ち葉掃除に使われているのがわかる。清掃終了後「ありがとう」と声をかけてくれたおじさんは、まるで僕へのお礼のようにひと摘みの餌を水面に撒き、金魚やモツゴを集めてくれた。

BGMはガンダムだらけ


この番組のメインのBGMは特攻野郎Aチームの曲だが、他に様々なロボットアニメやゲームの曲が使われており、その度ネットで界隈の人々がイントロクイズに没頭する。

ざっとあげるだけでも、ガンダム(各シリーズ網羅)、トップをねらえ、マクロス、フルメタルパニック、ガールズ&パンツァー、コードギアス、クロノトリガー、クロノクロス、アークザラッド等々。巨大生物にモンハンの曲、重機稼働でロボットアニメ曲などはわかるのだが、ブルーギル発見でエヴァのパターン「青」の曲とか、蛇出現でメタルギアソリッドの曲(主人公の名がスネーク)などはかなり遊んでおり、「アド街ック天国」なみだ。

外来種の問題


バラエティだから仕方がないのだが、おどろおどろしい音楽等で外来種を2択で『悪』としてる感が気になってしまう。もちろん気遣いは見られるのだが、特定外来生物と他の外来種の深刻度違いの説明も欲しいし、どこまでを遡って「外来」とするのか? という問題もある。非常に魅力的な番組なだけに、子供たちが安易に2択で問題を断罪してしまわないためにも、慈愛の目を持つココリコ田中にがんばっていただきたい。

さて今回の第5弾も、野生化した懐かしの珍獣が出てきたり、正式に特定外来生物に指定されたばかりの「旬な外来魚」ガーが再び登場したり、日本一のカミツキガメの巣窟(推定16,000匹!)に、クレージージャーニーの「爬虫類バカ」でブレイクした加藤教授が挑んだり(あとあばれる君)と、またしても見逃せない内容となっているようなので是非!
(柿田太郎)