「にゃんこスターのせいでしょうね」

10月2日に放送された『キングオブコント2017』(TBS系列)。ファーストステージで8番目に登場したアキナの点数について、さまぁ〜ず大竹は「にゃんこスターのせい」と口にした。
いったい何が起こったのか。採点データから今大会を振り返ってみたい。
「キングオブコント2017」採点データ分析。本当に「にゃんこスターのせい」だったのか徹底検証
今大会の台風の目となったにゃんこスター。翌朝には『めざましテレビ』に出演し、ワタナベエンターテイメント所属も決定。
イラスト/小西りえこ

にゃんこスターはとんでもない物を盗んでいきました


審査形式は前回前々回と同じ。5人の審査員(バナナマン、さまぁ〜ず、松本人志)が100点満点で採点し、ファーストステージ上位5組がファイナルステージへ進出。ファイナルステージも同様に1人100点満点で採点し、ファーストステージとファイナルステージの合計点が最も高い者をキングとする。

10代目キングとなったかまいたちは、ファーストステージを2位で通過している。ここで1位になったのは、結成5ヶ月での決勝進出、最年少ファイナリスト(アンゴラ村長:23歳4ヶ月)、事務所に所属しないフリー芸人と、全てが異例づくしのにゃんこスターだった。


大塚愛の「さくらんぼ」に乗せた「リズムなわとび」のネタは、アンゴラ村長が縄跳びを跳んだり跳ばなかったりする様をスーパー3助が横からキレキレにツッコみ、「にゃんこスターでした〜!」というカーテンコールでオチに。スタジオを爆笑と混乱の渦に巻き込んだ結果、三村と松本は今大会最高点の「97点」をつけた。
「キングオブコント2017」採点データ分析。本当に「にゃんこスターのせい」だったのか徹底検証
『キングオブコント2017』全組の審査結果。審査員がつけた最高点を赤、最低点を青とした。

三村:家に帰ってもう一回見たい(笑)
設楽:結成5ヶ月でここまで完成度高くて……2本目が見たい。
松本:笑いってどっかで憎たらしさって必要と思ってて、いい感じで憎たらしかった。……あの終わり方なんなん? 聞いてないし!

無名のルーキーが1位に躍り出たこともあり、スタジオの盛り上がりは最高潮に。空気は完全ににゃんこスターのまま、番組進行はCMをまたがずそのままアキナへ。
にゃんこスターの勇姿が脳裏にこびりついたまま、アキナのコントが始まってしまった。大竹の「にゃんこスターのせいでしょうね」は、この展開を受けてのものだ。

採点データを見ると、にゃんこスター後の3組の点数が軒並み伸びておらず、最低点をつけた審査員も多いことがわかる。これを全て「にゃんこスターのせい」にするのは乱暴だが、ハッピーで多幸感あふれるネタが空気を支配してしまったあと、シリアスなコントが爆発するのはなかなか難しいだろうというのも想像がつく。

今回は例年以上に審査員から「この出番じゃなかったら〜」「あれの後だと〜」など、出番についての発言が目立った。本来は出番に関係なく、コントの面白さを純粋に評価すべきだろう。
点数が伸びなかったことを「〜のせい」と責任転嫁するのも本筋ではない。ただやはり、笑いは「場の空気」の変化に敏感なもの。にゃんこスターがかっさらった空気の大きさは相当なものだったのだ。

三村と松本に届いた「一回冷静になって!」


ファーストステージが終わり、ファイナルステージが始まるまで、MCと審査員たちが1分ほどトークする時間があった。浜田雅功が審査員に「なんで100点出さないの!?」と煽るなどし、空気は一旦リセット。出番はアンガールズから始まった。


ファイナルステージは高レベルの争いになった。ファイナルステージ全組が900点を越えたのは、2年前に現在の審査形式になってから初めてのこと。設楽と日村がさらば青春の光に、大竹がかまいたちに最高点をつけている。三村と松本も、ファイナルステージではかまいたちを最も評価。試着したウェットスーツが脱げずに七転八倒して、かまいたちの2本目は478点という好記録となった。

(ちなみに「478点」は、現在の審査形式での最高点タイ記録。
2015年のロッチ1本目「試着室」が同じく478点だった。奇しくもどちらも「試着」のネタ。こんな偶然があるんですね)

となると、気になるのはにゃんこスターの2本目。ネタは縄跳びがフラフープになっただけで1本目とほぼ一緒の展開。にもかかわらず、1本目と同様のウケを取り、最後の「にゃんこスターでした〜!」で会場は割れんばかりの拍手。目をつむり頭を抱える審査員たち。


ここで審査員5人の動きが2つに分かれる。設楽(90→90)、日村(89→92)、大竹(93→94)の3人は、1本目と同じかそれ以上の点数をつけているのに対し、1本目で高得点をつけた三村(97→92)と松本(97→94)は点数を抑えた。にゃんこスターが同じネタをかぶせたことを5人がどう評価したか、この動きからうかがえて興味深い。それとも、かまいたち山内の「一回冷静になって!」という心の叫びが三村と松本に届いたのか(※参考:「キングオブコント2017」かまいたち「賞金は仮想通貨にぶちこむ」着衣の優勝記者会見

かまいたちが記録に残り、にゃんこスターが記憶に残る。2つのうねりが、これまでのキングオブコントの既成概念を打ち破る大会だった。キングオブコントは10年目で大きな転換点を迎えたのかもしれない。

(井上マサキ)