連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第26週「グッバイ、ナミダクン」第155回 9月29日(金)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出: 黒崎 博
「ひよっこ」155話。号泣する準備はできていた。だが歌が寸止め、すごい演出
イラスト/小西りえこ

155話はこんな話


谷田部家が全員、東京へ。「家族みんなで歌自慢」に出演することに。


伏線回収1


乙女たちの近況・・・秋田の優子(八木優希)が妊娠とか、澄子(松本穂香)と豊子(藤野涼子)があかね荘に入居とか、いろいろ出てきたけど、155回のハイライトは、1万円!
ついに、茂の1万円が日の目を見た!(23話で、東京に出るみね子に託された)
ちよ子(宮原和)が、「家族みんなで歌自慢」に出場に応募したものの、旅費がない。
相談されたみね子(有村架純)は、靴下に入っていた1万円を取り出す。
みんな大好き「こんなこともあろうかと・・・」的展開。
みね子はえらいな、お金さえあれば、食べたいもの、買いたいものもあったのに、ずっと我慢して、1万円をとっていたなんて。しかもそれを家族のために使うなんて。
仕送りしないで済むようになったみね子だったが、ここで、また役に立った。良かった、良かった。


“週刊朝日編「値段史年表」によると、昭和40年当時、江戸前寿司が1人前180円。1万円あれば55人前食べられる。”と、エキレビ!で書いたが、昭和43年(1968年)になると、200円に値上がり、50人前になった。

そして、プロポーズ


家族に最後のご奉公した形のみね子に、ついに、ヒデ(磯村勇斗)がプロポーズ。
ほっぺにキスをし合い、みね子は幸せを噛みしめる。
みね子の新しい家族計画がはじまろうとしていた。

みね子とヒデがお似合いと思うのは、ふたりとも、座っているとき、やたらと背筋が伸びていること。

心がけている生真面目さがお似合い。

すごい演出、来た


驚いた。
いよいよ、歌自慢、本番。「世界一の家族です 自慢の家族です」と実(沢村一樹)が、司会の言葉に答える。
これまでの道のりを思って、じん・・・となる家族たち。
ちよ子の合図で、進(高橋來)が「涙くんさよなら」(65年)!とタイトルを叫ぶ。
その前、奥茨城村で、歌の練習をするとき、ぴよぴよ、とひよこの声で何を歌うかぼかしていた(サブタイトルでバレバレなのだが)歌が、いよいよはじまる。

これはもう泣けるところ。観ているほうは、涙がぐわっと沸いてきたが、な・な・なんと! 寸止めして、つづくに。
ふつうだったら、歌って、泣かせて、まとめるところだが、「涙くんさようなら」だけに、泣かせないよん、ってことなのか。
これまで、アンチクライマックス方式で、劇的な出来事で盛り上げないのが「ひょっこ」だったから、最後までそれを貫いたともいえるだろう。

こうなると、最終回はどうなるのか、本当に気になる。
もうひとつの伏線(お重)はどうなるのか?

ウインナー


「女は好きなものをとっておいちゃダメ 誰かにとられてしまうのよ」と富さん(白石加代子)が、世津子(菅野美穂)に忠告しながら、ナポリタンにのったウインナーを奪う。でも負けじと取り返す世津子。
一方、漫画家ふたり(岡山天音、浅香航大)は、ウインナーを分け合っている。心温まる場面だが、なんかちょっとふたりの関係はそれ以上に思えなくもないサービスシーンだった。

歌自慢


「家族みんなで歌自慢」は「家族そろって歌合戦」(66年〜80年)がモデルだと思われるが、
TBS 制作の番組なので、場所はちょうど赤坂。うまくできている。
(木俣冬)