「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系、毎週日曜22:30〜)の魅力のひとつは、オープニングの疾走感だ。たとえば先週放送された第6話では感覚ピエロの主題歌に合わせて、まりぶ(柳楽優弥)の発言とそれに影響を受けすぎてガールズバーでも、就活の面接でもその受け売りの言葉を発するゆとり(島崎遥香)を交互に流していく。
繰り返される言葉の”意識の高さ”がまたたまらない。
「女ってヤッたら変わるじゃん?」(童貞が言いました)「ゆとりですがなにか」6話
イラスト/小西りえこ

”意識高い系”まりぶの変化


当然のことだが、ドラマも6回まで進むと登場人物にいろいろな変化が起こる。その変化が、『ゆとり〜』の場合なんとも気持ちいいのだ。

たとえば、まりぶ。第1回でほぼ「おっぱいいかがすか」しか言わない謎の呼び込みとして登場したが、早々にレンタルおじさん(吉田鋼太郎)の息子であることがわかり、中国人の嫁が登場、ゆとり第一世代でありながらずっと大学を目指し続けている受験生であることが発覚、ベティちゃんのトレーナー姿には誰も突っ込まず、ガールズバーの店長に就任してからは坂間(岡田将生)の妹ゆとりに手を出す浮気者ぶりの一方で、ゆとりに意識の高い発言をかまし「意外と真面目(ハート)」と言われたりもする。

ただ、ここで言いたいのはまりぶ自身の変化ではない。というか、上記の内容は坂間たち&視聴者側に少しずつ判明していったというだけで、まりぶが変化したわけではないのだ。
むしろ、まりぶ自身はたぶん登場してから何も変わっていない。

『ゆとり〜』が丁寧だなと思うのは、時間の経過にしたがってまりぶの周りの態度が変わっていくこと。1話で坂間に「鳥の民」のサービス券を叩きつけられたまりぶは、それから「鳥の民」に毎日通うようになる。最初こそ嫌がっていたバイトリーダー村井(少路勇介)と中森(矢本悠馬)は、回を追うごとに彼を心待ちにするようになる。二人が「100枚使い切ったら来なくなったりして」と笑いあっているタイミングで坂間の妹との関係が発覚し、まりぶは通えなくなる。

しかしこの第6話で妹の件で弱みを握られているまりぶは坂間に言われ、得意の「おっぱいいかがすか」攻撃で山岸の担当する取引相手・野崎(でんでん)の懐柔に成功、「これ、お礼」と坂間に再び100枚の割引券を渡される。
その時のバイト二人の喜びよう! 100回通う間にバイトたちもまりぶへの親しみを育てていたのだ。

それにしても、第1話から第5話までで100枚のサービス券を使い切ったまりぶ。折り返しの第6話でチケットを受け取り、最終回までに再び使い切るのだろうか。

山路、選択的童貞


変化といえば、1〜3話あたりではまさにゆとり世代の象徴のような振る舞いをし、あんなに憎たらしかった坂間の後輩、山岸(太賀)。第5回で後輩たちの扱いに悩むシーンを挟んで、仕事に前向きな男に大きく成長しているかのように見える。このまま大人になるのか、それともまたどこかで「これだからゆとりは」と言わざるをえない状況になるのか(第6回でも手塚とおる演じる上司・早川が言いかけていたが)。


第6話では他にも、山路(松坂桃李)にモテ期が到来。前回転校してきた子供のお母さん(石橋けい)、元実習生の佐倉(吉岡里帆)、そして茜ちゃん(安藤サクラ)と、山路となんとなくいい雰囲気の女たちが増えた。しかし山路は「女ってヤッたら変わるじゃん?」と童貞のくせに、いやだからこその観察による発言をかます。だからこそ踏み込めないのだと。
ちなみにこの発言の直前、山路がこのことを言うのをためらった時の山路とまりぶの「バカだと思われるけど」「思ってるから言ってみ?」というやり取りが、ひっそりと彼らの距離の近さを感じさせる。

中でも茜ちゃんとは「友達同士」として一緒に一泊温泉旅行にまで! しかし、そこで茜ちゃんは坂間への思いを語る。
「変わらなくていい、ダメなまーちんと一緒にいたい」。その話を山路から聞いた坂間はなおさらよりを戻せないと語る。「だって俺、変わりたいもん」。さて、主人公たる坂間はこの先、どう変化するのだろう?
(釣木文恵)