10月11日、TBS系列で放送された『キングオブコント2015』。熱戦の結果、コロコロチキチキペッパーズが8代目キングに輝いた。
キングオブコント2015優勝コロコロチキチキペッパーズ「優勝、やっべぇぞ!」その声ズルい会見レポ

今回の目玉の一つは、審査方式の刷新。バナナマン、さまぁ〜ず、松本人志の5人が審査員となり、1人100点×5人の500点満点で審査を行った。果たして5人はどのような点数をつけたのか。採点データからキングオブコント2015を振り返りたい。
「キングオブコント2015」採点データ分析で見た意外な真実。さまぁ〜ず三村が鍵を握っていた
『キングオブコント2015』ファーストステージとファイナルステージの採点結果

「M-1のルール」だったら優勝はバンビーノだった


まずは今回のルールをおさらい。ファーストステージで10組がネタを1本ずつ披露し、得点が高かった上位5組がファイナルステージに進出。ファイナルステージではもう1本ネタを披露し、1本目と2本目の合計得点が最も高かったものがキングとなる。


ファイナルステージ後の「1本目と2本目の合計得点」というのがポイントだ。これがもし「2本目のみの得点」で優勝を決めていたら大きく結果が変わっていた。ファイナルステージ進出者の最終得点を見てみよう。
「キングオブコント2015」採点データ分析で見た意外な真実。さまぁ〜ず三村が鍵を握っていた
ファーストステージとファイナルステージを合わせた最終得点

1本目ではロッチが478点で、2本目ではバンビーノが471点でトップになっている。最終的に優勝したコロコロチキチキペッパーズは1本目2本目共に2位の点数なのだ。2本のネタのクオリティが高アベレージで揃ったのが、コロチキの勝因だったことがわかる

もしM-1のように「2本目のみの得点」で評価していたら優勝はバンビーノになっていた。
そして、1本目で1位を取りながら2本目で大きく失速したロッチは、M-1グランプリ2009で「鳥人」のあとに「チンポジ」を披露した笑い飯のポジションになっていただろう。

審査のカギを握っていたのは「さまぁ〜ず三村」


今回の審査員の採点の傾向を分析してみる。それぞれの採点の平均値と標準偏差を算出したのが表4だ。
「キングオブコント2015」採点データ分析で見た意外な真実。さまぁ〜ず三村が鍵を握っていた
各審査員が採点した点数の平均値と標準偏差

標準偏差は各値のバラつき具合を示すもの。標準偏差が大きいと、採点した点数の最高値と最低値の幅が広いことになる。

バラつきが一番大きいのはさまぁ〜ず三村で、1本目のさらば青春の光とザ・ギースにつけた80点が最低値、1本目のロッチにつけた98点が最高値だ。採点のバラつきが大きいということは、結果に差がつきやすくなるということ。
今回の採点で一番のカギを握っていたのは、実はさまぁ〜ず三村だったことがわかる。

次にバラつきが大きいのは松本人志だが、平均値は5人の中で最も低い。一番辛い点数をつけていたことになるが、バラつきも大きいので、基準となる点数を低めにとって上下の幅を出していたと考えられる。M-1グランプリなどで審査員経験があるからこその採点だろう。

このように、1人100点を持つ形式だと、個人の感覚によるバラつきで結果に大きな差が出ることがある。かといって1人10点にしてしまうと、今度は同点になりやすい。
フジ『ものまね王座決定戦』で栗田貫一が同点になるたびジャンケンで負ける、みたいな展開も出てくる。難しい。

ところで、バナナマンの2人はどうだったのか。表1・表2の各ステージ採点を見てみると、設楽・日村の点差はほとんど5点以内に収まっている(1本目さらば、ロッチのみ6点差)。バンビーノの2本目で日村が「4点」をつけそうになったトラブルもあったが、それはご愛嬌。

バナナマンの2人の点差を見ると、やはりコンビでは同系統のネタを好む傾向があるのではないだろうか。
M-1やTHE MANZAIの審査員では、笑いのタイプが異なる審査員を置く配慮がされていたのを思い出す。コンビで並んで審査をすることは、評価軸が偏る可能性をはらんでいそうだ。

「ライブ」と「テレビ」


番組冒頭、浜田に「早く出てこい!はよ降りろ!」とキレられながら審査員が登場したあと。最初の一言で松本は「審査員というのはリスクがとにかく高いんです。バナナマンとさまぁ〜ずが出るのは敬意を表したい」というコメントを残している。

賞レースは審査員に大きな責任がのしかかる。
その責任を分散していたのが、昨年までのキングオブコントの「準決勝で敗退した芸人100組が審査」という形式だった。

現役のプレーヤーたちが集まって審査を行うのは、ある種お祭り的でもある。2012年にバイきんぐが優勝したときは、芸人たちの爆笑で地響きが起きたという。まさに「ライブ」の中で評価が決まっていた。

これに対し、今回は5人の審査員という「個人」の評価軸になった。それぞれの審査員にはキャリアがあり、ネタに対するコメントにも熱いものがあった。ただ、採点システム的には先述のバラつきなどの要素も生まれる。準決勝で高評価だったコンビが落選するなどの波乱もあり、「ライブ」と「個人」のあいだで評価が揺れた。

そしてもう一つ評価軸がある。「お茶の間」だ。テレビ放送という都合上、どうしても視聴者を意識しないといけない。ライブで受けたのにテレビでは受けない、というネタも多い。今回、芸人たちの審査からレジェンドの審査になったのも、テレビサイズでネタを評価する目を入れたかったのではないか。

ライブの笑いとテレビの笑い。芸人とお笑いファンと一般視聴者。全てを丸く納める審査形式を考えるのは、やはり一筋縄ではいかない。
(井上マサキ)