ファミッ子にとっての神・それが高橋名人!


ファミコンブーム華やかなりし頃。アイドルやお笑い芸人以上に、小学生男子(のみ)から尊敬を集める大人がいた。それが、高橋名人!
マックスむらい以上のアイドルだった高橋名人「コロコロアニキ」が今号も熱い
どんなに高橋名人を狂信していても「ウンコでセミ捕り」はマネしようと思いませんでした
イラスト/北村ヂン

高橋名人って、要はただのゲーム会社(ハドソン)社員だったんだけど、「ファミコンが上手い!」という一点突破でファミッ子たちの神様的ポジションにのぼりつめ、テレビに出るわ、映画に出るわ、役者までやっちゃうわ(鈴木保奈美やハナ肇を差し置いての主演!)……いっくらバブルまっただ中とはいえ、世の中狂ってましたな。


今の小学生にとっての「マッククスむらい」あたりのポジションなのかなーと思うけど(変な映画も作ってたし)、規模や世の中への影響力、カリスマ性の高さは高橋名人の方が遙かに上だったと思う。

当時のバカ男子たちは高橋名人にあこがれるあまり、16連射を目指して血を吹くまでシュウォッチを叩き続けたり、指がつるまでファミコン体操をやり続けたりと、狂信者のように高橋名人への忠誠を誓っていたのだ。

……そのわりに、高橋名人の教え「ゲームは1日1時間」は全然守っていなかったけど。

ウンコでセミを捕っていると信じていた


「コロコロコミック」を熱心に読んでいた大人たちに向けた雑誌「コロコロアニキ」の第5号は、そんな高橋名人の特集号だ。
マックスむらい以上のアイドルだった高橋名人「コロコロアニキ」が今号も熱い

高橋名人が主戦場としていた「コロコロ」での特集だけに、当時の秘蔵写真や記事が満載で、パラパラながめているだけで脳が当時にタイムスリップしてしまう。

定番の原人コスプレはもちろん、ターミネーターコス、(「西遊記」の)孫悟空コス、白雪姫コス……などなど、一介のゲーム会社社員に何やらせてたんだ!

まあ、現在の高橋名人(56歳)も負けじと原人コスプレ&伝説の「16連射でスイカ割り」をやらされているんだけど。ノリ、いいなぁ〜。


そして、「コロコロ」の高橋名人といえば、忘れられないのが漫画「ファミコンランナー・高橋名人物語」。今号の「コロコロアニキ」には第1話が再録されている。

思えばコレもすさまじい漫画だった。

実在の人物を漫画化する場合、実物はどうあれ、多少漫画らしく美形にするのがお約束だと思うが、「高橋名人物語」に登場する高橋名人は実物よりも5割増しでブサイク!

極端なへこみ面に、ペリカン級のしゃくれアゴと、かなりフリーキーなルックス。よくこのキャラデザインでオッケー出したな……という感じだけど、内容はもっとヒドイのだ。

一応、高橋名人に子ども時代の話などを取材したらしいものの、出来上がったのは、ウンコをセミに投げつけて捕獲する話や、砲丸で校舎を破壊する話、タイムスリップする話、生まれる時にヘソの緒を自ら引きちぎった話……などなど、もはや高橋名人は人間じゃないよ! というエピソードてんこ盛りだった。


子どもっていうのはバカなもんで、これほど荒唐無稽なストーリーなのに「『高橋名人物語』とタイトルがつけられているからには実話に決まっている!」と信じちゃうから怖い。

ボクも「ウンコで150匹セミを捕まえたというのは嘘だろうけど、まあウンコで30匹くらいは捕まえてたんじゃないか?」と、ウンコでセミをとっていたこと自体はまったく疑ってなかったもん。

そんな、当時の記事や写真、漫画でファミコンブームのワクワク感を思い出させておきながら、「吉田豪 VS 高橋名人」対談で高橋名人逮捕説や死亡説の裏話をぶっちゃけちゃうのは、大人向けの「コロコロアニキ」ならではか。

「ボンボン」がガンダムで好調なら、こっちも出しちゃえ!


特集以外の連載漫画も相変わらず好調で、「あまいぞ!男吾」「ハイパーダッシュ!四駆郎」「爆走兄弟レッツ&ゴー」など、大きくなったコロコロ少年には感涙モノ。

特に、のむらしんぼ先生の「コロコロ創刊伝説」は、当時の「コロコロ」裏話がバンバン登場するから見逃せないのだ。

今回は「コミックボンボン」「100てんコミック」などライバル誌が続々創刊してきて「コロコロ」がピンチに。


ガンプラブームで勢いづく「コミックボンボン」に対抗すべく、「超人キンタマン」に登場させた、思いっきりガンダムっぽいロボット「オガンダム」の運命は……。

「あっちがガンダムで好調なら、こっちも出しちゃえ!(無許可で)」という、今だったら考えられない大ざっぱな話だが、ちょっとデザインが似ているくらいですぐに炎上させまくる昨今のネット界隈の人たちも、このくらいおおらかになってもいいんじゃないの? ……と思ってしまう。

その他、清原和博逮捕の影響で休載になってしまった「かっとばせ!キヨハラくん」の河合じゅんじ先生の読み切り短編や、「月刊ホビージャパン」での連載などでお馴染みの戦場劇画の巨匠・小林源文先生がゲーム「ワールド・オブ・タンクス」とのコラボ漫画を描いていたりと、まさに大人のための「コロコロコミック」なのだ。

今のところ4か月ごとの発売となっている「コロコロアニキ」だが、いっぱい読者が増えれば3か月ごとになるかも……とのことなので、元・コロコロ少年たちはみんな買うべき!
(北村ヂン イラストも)