食事 休息 食事 休息 食事 休息 
上野動物園にいるジャイアントパンダ、リーリー(オス)とシンシン(メス)の1日のスケジュールです。時間帯によって、「室内をウロウロ」や「屋外運動場で食べたり歩いたり」が挟まることもあるとか。
『ドラえもん』ののび太や『ちびまる子ちゃん』のまる子でも、ここまでぐうたらじゃないよな。ううーむ、ちょっとうらやましい。

2008年にリンリンが亡くなってから、上野動物園ではしばらくパンダ不在の時期が続きました。
「繁殖の即戦力となるパンダを」という園の希望により今年2月に来園したのが、リーリーとシンシン。東日本大震災の影響で公開が遅れ、臨時休園をしていた動物園の再オープンと同じく4月1日に一般公開されたのです。当日は、徹夜組も出るほどの大盛況! パンダのアイドル性を再認識したものです。

『まるまるパンダ』には、著者であり、リーリーとシンシンの飼育員である倉持浩が撮影した2頭の写真が約100点も収録されています。白と黒のもようにぴょこんと立ったまるい耳、抱きつきたくなるようなコロコロとした体型。トトロのような後ろ姿もかわいい! 足を前に投げ出して、お腹を見せながらタケをムシャムシャと食べている姿を見ていると、「ほんとうは着ぐるみで、中におっさんが入ってるんでしょう!?」とつい突っ込みたくなってしまう。親しみやすくて愛らしい、パンダならではの魅力が堪能できます。

「パンダの白黒模様の理由?」や「パンダのウンチは臭くない?」などの疑問に著者がわかりやすく答えてたり、飼育係の1日のお仕事も写真付きで紹介したりと、いろいろな角度からパンダを知ることができるのです。それから、来園時のエピソードも。
リーリーとシンシンを乗せたジェット機「FLY! パンダ」では、「恩賜上野動物園に3年ぶりの来日となる2頭のパンダも、みなさまとご一緒にフライトしております」というアナウンスが流れたそうです。
そのなかで目をひいたのが、
〈飼育係とはいってもパンダと仲良くなるのはとても無理な話です〉
〈ジャイアントパンダの本当の気持ちを理解することは不可能です〉
という冷静で客観的な言葉。いくらかわいくてもパンダは食肉目クマ科の動物なので、飼育員でも同じ部屋に入ることはないそうです。そういえば、著者といまは亡きリンリンとのツーショット写真もアミ越しでした。
犬や猫と違って、具合が悪くても自ら訴えることができないという、飼育の難しさもパンダにはあるのです。著者いわく〈宝探しをするような気分〉で、フンの量や臭い、食べ残しの量などを注意深く観察し、健康状態に気を配ることが大切なのだそう。
〈本当の気持ちを理解することは不可能〉も、自分の思い込みだけではなく、周囲の意見を取り入れて判断する、という意味なのだとか。「かわいい」という気持ちだけで付き合うと、見逃してしまうサインもあるのかもしれませんね。
その存在はもちろん、繁殖にも大きな注目が集まるパンダ。リンリンが死亡した際には暗殺説まで報じられたこともあるそうで、飼育員にふりかかる責任やプレッシャーは相当なものだと思われます。「パンダと遊べていいなあ」なんて、うらやましがってすみません!

「パンダの飼育員は、希望してなれるものではない」「リーリーとシンシンが残したタケはゾウが食べる」「飼育員がウエストにつけている時計の赤いボタンを非常時に押すと、事務所に連絡がいくようになっている」など、本書からは上野動物園豆知識も得られます。飼育員の仕事風景を観察したり、「食事が終わったからそろそろ寝るころかな」という風に、いままでとは違った目線で観賞するのも楽しそう。


上野動物園の開演時間は、午前9時30分から午後5時(毎週月曜日が休園日)。現在は、繁殖と健康管理のための※「ハズバンダリー・トレーニング」を行っているので、午後3時から3時30分までは、1頭しか見られないそうです。年末年始の休園日など、詳細は上野動物園ホームページでご確認を。(畑菜穂子)

※飼育員が出す一定の刺激や合図に従った行動や姿勢をとるようにする訓練のこと