「霊長類最強の女」と呼ばれるレスリングの吉田沙保里さんが、喘息を発症したという報道がありました。
2015年9月の世界選手権の前からその症状が出ていたようで、どんどん病状が悪化して、ようやく12月に入って受診、判明したそうです。

スパーリング中にも咳込んでしまうということで、現在は吸入と服薬治療を受けているそうですが、そんな中、全日本選手権(2015年12月23日)で13度目の優勝を果たしたのはさすが。
実は、吉田さんのようにおとなになってから喘息になる人が、増えているそうなのです。

オリンピック出場選手の1割が「喘息」持ち

世界最高得点をとったフィギュアスケートの羽生結弦さんも、2歳の時に発症した小児喘息を持ちつつスケートを続け、現在も服薬を欠かせず、吸入器を手放せないのだとか。
羽生さんのように、子どもの時に喘息が発症した人では、スピードスケート選手の清水宏保さんや、マラソン選手の谷川真理さん、元競泳選手の山本すずさん、元プロ野球選手の石井一久さんなどが有名。
おとなになってから発症したというアスリートでは、現在プレミアリーグで活躍するサッカー日本代表の岡崎慎司さんや女子プロトライアスロン選手の庭田清美さんなどがいます。一般人の喘息の罹患率は3~5%ですが、五輪選手ではなんと約10%もいるのだとか。


喘息の症状ってどんなもの?

喘息には、「気管支喘息」と「咳喘息」があります。
「気管支喘息」は、発作が起こるとヒューヒュー・ゼーゼーと音が鳴り、咳、痰が出て呼吸困難になることも。発作が治まると、何もなかったかのように普通の生活にもどることができます。
「咳喘息」は咳が続き、痰が出て呼吸困難になることも。こちらも発作が治まると何事もなかったように生活できます。
これらは、気道が狭くなってしまったり、気道に慢性的な炎症が起こって、そこが過敏になって咳を繰り返し、呼吸困難に陥る病気です。

喘息の人は、普段から気道粘膜に炎症があり、咳が出ない時でも気道が細くなっています。また、常に炎症があることで気道が過敏になっているため、少しの刺激を受けただけで気道を取り巻く筋肉がキュッと締まり、気道がさらに狭くなります。咳や息切れ、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーと音が鳴ること)などの発作が起きるのはそのためです。

ウインタースポーツの選手が喘息になりやすい理由

アレルギー反応によって気道が炎症を起こすので、アレルギー体質の人は「気管支喘息」にかかりやすいそうです。また、感染やストレスが原因で発作が起きたり、中には鎮痛剤や風邪薬で喘息の発作が起きることもあります。
気温の変化や、激しい運動によって、気管が刺激を受けて咳を誘発することもあります。
ウインタースポーツの選手が喘息になりやすいのは、激しい運動に加え、冷たい空気を一気に吸い込むためという説もあります。

風邪で長期間咳が続いたら早めに治療を

アレルギー症状の原因になるような花粉、ハウスダストなどを除去することが大事です。また、風邪などをひいて、長期間咳が続くような場合も、気管支を傷めますので注意が必要です。
ストレスや気温差、大気汚染、タバコの煙、ニオイの強い香水などが原因になることもありますので、外出する時にはマスクをかけることも予防につながります。
喘息の咳と風邪の咳の見分けはつきにくく、風邪だと思っていたら喘息ということもあるので、咳が長引くようなら早めに受診するようにしましょう。特に、夜間や明け方頃に激しい咳が出るようなら、喘息の可能性が考えられます。


治療薬でドーピング検査に引っかかることも

薬には飲み薬と吸入薬があり、その両方あるいは片方を用います。
喘息治療で処方される気管支拡張薬の一部(β2刺激剤)は内服すると筋力増強効果が期待されるため、ドーピングの禁止薬物に選ばれています。アスリートはドーピング検査に引っかからないよう、例外規定の吸入薬を選んで処方してもらいますが、それでも時々、医師の知識不足などで出場停止になったというニュースが流れます。
アスリートは病気治療ひとつでも苦労がたえないようです。