HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明

■【HYDE LIVE 2018】レポート
2018.09.07(FRI) at Zepp Tokyo

2017年12月にVAMPSの活動休止を発表し、HYDE名義でのソロ活動を再開したHYDE。6月からスタートしたツアー『HYDE LIVE 2018』の追加公演として東京・名古屋・福岡の3か所14公演を開催。
アメリカのシネマティック・ロック・バンドSTARSETをサポートアクトに迎えてのZepp Tokyo公演、9月7日(金)の模様をお伝えする。

隕石が落下したかのような轟音が響き、色鮮やかに宇宙空間を映し出したLEDスクリーンを背に、STARSETのステージが開幕。ダスティン・ベイツ(Vo&Key)はパワフルで情感豊かな歌声を響かせ、ロン・ディシャント(Ba)、ブロック・リチャーズ(Gt)、アダム・ギルバート(Dr)は宇宙服に身を包み、時にヘッドバンギングを交えて激しくパフォーマンス。ヴァイオリン、チェロの女性サポートメンバーを加えた6人体制で、エレクトロ・ロックにクラシカルな要素を盛り込みながら、五感に訴えかけるドラマティックなステージを繰り広げた。

一際歓声が大きくなったのは、HYDEが合流した「MONSTER」(STARSETの2ndアルバム『VESSELS』の配信Japanese Versionのみにfeat.HYDEヴァージョンを追加収録)。2人の声はタイプが異なるものの相性が実に良く、終盤は台に足を乗せ互いに向き合って声を合わせ、これ以上ないほどに観客を沸かせた。
STARSETのアクトはHYDEファンにも温かく受け入れられており、会場は終始熱かった。宇宙服というヴィジュアル・コンセプトの特異性、激しさの中にもピュアさ、情緒を湛えた劇的な音楽、そして美しくスペイシーな映像演出によって、地球外の星へと誘われたような夢見心地を味わわせてくれるステージだった。

メインアクトであるHYDEのステージは、まるで海の底で雨音を聴くかのような、ひんやりとした静けさの中で幕開けた。登場時にはフードとマスクで全貌を明かさず、やがて顔を露わにした瞬間には、その美貌で目の覚めるようなインパクトを与えた。HYDE名義では12年半ぶりのシングルとなった「WHO'S GONNA SAVE US」や、第二弾シングル「AFTER LIGHT」、そして10月24日にリリースされる予定の第三弾シングル「FAKE DIVINE」といった新曲群を中心に据えながら、VAMPSの楽曲も随所に織り交ぜたセットリスト。HYDE名義での再始動だからといって12年前に時計の針を戻すのではなく、VAMPSで追求したヘヴィーロック路線は踏襲されている。
2018年の今を生きるHYDEが自身最新のモードで音楽に向き合い、これまでの各名義で発表してきた楽曲もパフォーマンスしていく、というスタイルである。

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明


実際、「これは新曲、これは旧曲……」という意識が浮かぶ以前に、すべての曲において感じ取れる“ヴォーカリストとしてのHYDEの進化”に心を掴まれてばかりだった。鍛え上げられた腕を露わにし、マイクを思い切り握りしめて全身全霊で歌う姿には、これほどの本数を誇る連続ライヴだとは信じがたいほどに、ペース配分のための出し惜しみ感というものが全く見受けられない。命懸けの歌唱、と評したくなるほどの真剣さだが、ただ絶唱一辺倒という意味ではもちろんなく、驚異的なほどデリケートでもあり起伏に富んでいる。1フレーズ、1言どころか1音1音、あるいはもっと細分化した単位での感情表現がなされていて、そのすべてが、シルクやベルベットを撫でた時の手触りのように滑らかなのだ。

曲ごとに世界を照らし変える繊細で美しいライティング、一見シンプルに見えて無限の奥行きと異国情緒を漂わせるステージセット、途中で施されるとある“仕掛け”、それらすべてが合わさった魅惑のロックショー。
芸術性を高めていきながらも、バンドメンバーらとの呼吸もぴったりと合っていてバンドらしい生感もあり、狭く閉じることなくむしろ開かれている。合いの手的に随所で入るファンの掛け声、コーラスもすっかり曲に馴染み、欠かせない構成要素となっていたのも印象的だった。

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明


「HYDE!」と叫ぶファンの声を「元気いいね~」と受け止め、「STARSETも元気いいみたいで、昨日富士山に登ったって。(自分が)登った時、2日ぐらい寝てたからね(笑)」などと穏やかな口調でMC。映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』に楽曲提供した「人類滅亡の歓び」を、歌詞を書き換えタイトルも「監獄ROCK」と変えてセルフカバー。こちらはシングル『FAKE DIVINE』のカップリングとして収録予定である。
「閉じ込めてる自分自身を監獄から出してやってくれ! ここはみんなでやんちゃになろうぜ!」と煽ると、大きなフラッグを手に軍帽をかぶり、華のあるパフォーマンスを展開。男女が曲中で何度も入れ替わるかのような、めくるめく魔性の歌声を響かせた。

この日は、9月6日(木)未明に起きた北海道地震後初の公演であり、MCの語り口にも切実さが滲んでいた。想いが溢れたのか、「みんな大好き」と唐突に切り出すと、「ここ最近、日本で(災害が)続いてるので、本当にウチのかわいこちゃんたちが大丈夫かな?って心配。他人事じゃないからね? 自分の身は自分で守らないといけないと思うので、ちゃんとやっといてね、(防災用の)リュック作って」とストレートな言葉を投げ掛ける。「お前ら死んだら俺泣いちゃうから」「俺は何もできないけど、みんながニコニコしてくれるだけでうれしい。
世の中が“普通の世の中”に戻ってくれることを祈って。北海道の皆さんに捧げたいと思います。今日は本当にありがとうございました」との言葉から、本ツアーで歌い続けてきた「ORDINARY WORLD」(DURAN DURANのカヴァー)を届けた。オリジナルとは随所でコード進行を変え、ゴシックな要素も盛り込むなどしたアレンジは秀逸。想像だが、デヴィッド・ボウイの「SPACE ODDITY」のエッセンスが含まれているようにも思えた。悲しみと痛みに満ちた世界を憂えながらも、諦めたり投げやりになったりすることなく、「この世界を生き抜くのだ、この場所を大切にするのだ」という決意と覚悟。
その不屈の想いが、歌声と、ステージの床や観客を指さすアクションからひしひしと伝わってきた。

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
撮影/今元秀明

HYDE 「俺には何もできないけど…」 Zepp Tokyoに響き渡った“祈り”の歌声/レポート
STARSET
撮影/今元秀明


「俺には何もできないけど…」とHYDEは口にしたが、そんなことは全くない。HYDEが強い想いを歌声に込め、音楽に没頭する姿は“祈り”そのもの。大きな力が宿っているし、目には見えなくてもエネルギーを発し、一人一人の心に届いたその力は方々へと伝播していくはずだ。音楽家としてだけでなく、同じ時代を生きる生身の人間としてのHYDEの体温をいつも以上に感じられた、特別な公演だった。ツアーはこの後名古屋、福岡へと続いていく。
(取材・文/大前多恵)

≪ライブ情報≫
【HYDE LIVE 2018 追加公演】
2018年10月2日(火)愛知・ZEPP NAGOYA
2018年10月3日(水)愛知・ZEPP NAGOYA
2018年10月9日(火)福岡・DRUM LOGOS
2018年10月10日(水)福岡・DRUM LOGOS
2018年10月13日(土)福岡・BARK UP
2018年10月14日(日)福岡・BARK UP

≪イベント概要≫
【HALLOWEEN PARTY 2018 supported by XFLAG】
2018年10月26日(金)27日(土)28日(日)千葉・幕張メッセ国際展示場 9・10・11ホール
15:30開場 / 17:00開演

◆出演アーティスト(※五十音順表記)
<26日>
HYDE / BREAKERZ / MY FIRST STORY / ももいろクローバーZ / HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA、他
※HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA※
HYDE / BREAKERZ / MY FIRST STORY / Shinya(DIR EN GREY, SERAPH)/ 逹瑯(MUCC) / 柩(GREMLINS, NIGHTMARE) / YUKI(Rayflower, DUSTAR-3) / ROLLY / 分島花音、他

<27日>
氣志團 / DAIGO / 超特急 / HYDE / HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA、他
※HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA※
氣志團 / 超特急 / HYDE / Shinya(DIR EN GREY, SERAPH)/ 逹瑯(MUCC) / 柩(GREMLINS, NIGHTMARE) / YUKI(Rayflower, DUSTAR-3) / ROLLY / 分島花音、他

<28日>
ゲスの極み乙女。 / HYDE / BREAKERZ / HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA、他
スペシャルゲスト:YOSHIKI
※HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA※
HYDE / BREAKERZ / 青木隆治 / Shinya(DIR EN GREY, SERAPH)/ 逹瑯(MUCC) / 柩(GREMLINS, NIGHTMARE) / YUKI(Rayflower, DUSTAR-3) / ROLLY / 分島花音、他

◆チケット:
指定席S / スタンディングブロック指定S ¥12,000
指定席A / スタンディングブロック指定A ¥9,300
※3歳未満入場不可、3歳以上要チケット

◆チケット一般発売:2018年10月13日(土)10:00
◆問い合わせ:ディスクガレージ(TEL.050-5533-0888 平日12:00~19:00)
◆『HALLOWEEN PARTY 2018』特設サイト:http://hwp2018.hyde.com/

≪リリース情報≫
New Single
『FAKE DIVINE』
2018.10.24リリース

【初回限定盤A】CD+撮り下ろしコンセプトブック
UICV-9294 / ¥2,800(税抜)
コンセプトブック:EPサイズ(7インチ四方)、12ページ
【初回限定盤B】CD+DVD
UICV-9295 / ¥2,000(税抜)
DVD:「FAKE DIVINE」MV、『HYDE LIVE 2018』ハイライト映像
【通常盤】CD
UICV-5077 / ¥1,200(税抜)

[収録曲]
1. FAKE DIVINE
2. 監獄ROCK

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