■マチが変われば呼び名も変わる。川崎市の人口変化からも読み解く



【最終決着か】武蔵小杉は「ムサコ」それとも「コスギ」? 新勢...の画像はこちら >>

神奈川県川崎市中原区の「武蔵小杉(ムサシコスギ)」にはタワーマンションが続々と建設され、大規模なショッピングモールもでき、昔のイメージを持っている人からするとハイソなイメージのあるマチに変わりました。



ところが、その武蔵小杉をどのように呼ぶのか、その略し方については、ソーシャルメディアでも議論があります。ひとつは「コスギ」、もう一つは「ムサコ」。さらに最近では若い人を中心に「ムサコス」と呼ぶ動きもあるようです。今回は、武蔵小杉をどのように呼べばよいのか考えてみましょう。



ちなみに、ムサコというと東京の武蔵小山や武蔵小金井も「ムサコ」と呼ぶという意見が必ずといっていいほど出てきます。今回は議論を整理するために、武蔵小杉に限定して議論を進めていきたいと思います。



■「コスギ」派の主張:住所は「小杉町」でありコスギが本筋



駅名は武蔵小杉となっていても、東急バスや川崎市バスの行先表示は「小杉駅」となっています。このことから、武蔵小杉駅はあくまでも小杉駅であって、呼び名は「コスギ」だというのが「コスギ」派の主張です。



また、この呼び方は地元に長く住んでいる方には根強い呼び方でもあります。小杉町はれっきとした住所名であるし、その駅名を「コスギ」と呼ぶのは当然だという考え方です。



■「ムサコ」派の反論:「武蔵小杉」の略称だからムサコでよい



ただし、武蔵小杉をどのように呼ぶのか、という問いに対して「コスギ」と答えるのはどうかという人も存在します。それが「ムサコ」派です。



「ムサコ」と呼ぶ人は武蔵小杉を全体的に略した結果「ムサコ」と呼んでいるといいます。



このムサコ派の反論は、確かに地元の人は小杉駅は「コスギ」と呼ぶのかもしれないが、乗り換えや通過する駅としてしか武蔵小杉と接点を持たない人にとっては「武蔵小杉」はあくまで駅名としての武蔵小杉でありそれ以上でも以下でもないというものです。



ここまで見てくると「コスギ」と呼ぶのか「ムサコ」と呼ぶのかは、それぞれの呼び名を使う人の武蔵小杉駅との接点の強弱が関係してくるように思えます。



■川崎市の人口は増えている



とはいえ、武蔵小杉のある川崎市は大きく変化しているマチです。人の出入りによってマチや駅の呼び方が変わってきても不思議ではありません。



川崎市の人口を過去から見てみましょう。

20年前、1996年の川崎市の人口は120万9,212人でした。同時期の世帯数は50万9,856世帯、1世帯当たりの人数は2.37人です。



一方、2015年の人口は147万5,300人にまで増加し、対1996年比では+22%増です。また、同時期の世帯数は69万1,236世帯、1世帯当たりの人数は2.13人となっています。世帯数は対1996年比で+36%の増加となることから、過去20年は単身者や(子供の数が少ないであろう)若い世代の夫婦が川崎市に流入してきた可能性が考えられます。



■武蔵小杉駅のある川崎市中原区の人口推移



では、武蔵小杉駅のある川崎市中原区はどうでしょうか。



1996年の中原区の人口は19万1,140人でした。一方、2015年では24万7,476人と対1996年比で+29%の増加となっています。



また、世帯数は1996年に8万9,134世帯で1世帯当たりの人数が2.15人だったのが、2015年には12万3,312世帯で1世帯当たりの人数が2.0人となっています。



2015年の世帯数が対1996年比で+38%の増加となっているのにも驚きますが、1世帯当たりの人数が2010年から2014年にかけて2人を下回るようになっていることから、単身者の流入が多いと読み解けます。



こうしてみると「中原区が地元ではなかった人」の流入が継続的にあることになります。そうした人の中には、武蔵小杉駅の駅名を略して「ムサコ」と呼ぶ人が増えてきても不思議ではありません。



■グランツリーのお菓子屋さんの商品名は



武蔵小杉を代表するショッピングモール「グランツリー武蔵小杉」。その1階に店を構えるお菓子屋さんでは「むさこdeシュー」という名前のシュークリームや「むさこロール」というロールケーキが販売されていました。シュークリームを購入して食べてみましたが非常においしいシュークリームです。



ただ、この「むさこ」という命名について、以前から住んでいる人にとって違和感があるのか、それとも新しく武蔵小杉駅周辺に引っ越してきた人にとって親しみがあるのかは分かりません。



■まとめにかえて



いかがでしたでしょうか。マチや駅の呼び名はもしかすれば、時代とともにそのマチをどのように捉えるのか、また関係する人たちの背景が大きくかかわってくるのかもしれません。



最近では、若い人たちは「ムサコ」と呼ぶと、武蔵小金井と武蔵小山、武蔵小杉のどれを指すのかわからないという理由で武蔵小杉を「ムサコス」と略す人もいます。



マチが変わればその呼び方も変わる。武蔵小杉の呼び方の論争はそうしたマチの変化を象徴する事象かもしれません。