パリの電車内に俳句 乗客に安らぎを与える公共交通機関の文学賞


東京メトロの車内中づりやポスター掲示に発表してある「メトロ文学館」をご存じだろうか? 100~150字程度の詩を一般公募し優秀作を電車内の中づりおよびポスターに掲示する、東京メトログループの社会貢献活動を担う企業財団「メトロ文化財団」が、2005年から毎年行っている催しだ。

じつはパリでも、メトロ文学館と同じような一般公募の詩のコンクール「Grand Prix Poesie(グランプリ・ポエジー)」がパリ交通公団(RATP)により開かれている。同コンクールの場合、応募できる詩の長さは4行までの短詩と12行までの長詩の2通り(つまり車内などの掲示に収まる長さ)。特に形式は決められておらず、自由詩でも散文詩でも、どのようなものでも良い。そのためフランス語で詠まれた俳句が優秀作品に選ばれることもある。

これら東京とパリの公共交通機関による文学賞は、どのようなきっかけで創設されたのか。


日仏交通文学賞の違い


まずはメトロ文学館について。メトロ文化財団担当者によれば、きっかけは「電車内で文化的な雰囲気と潤いを感じてもらうため、今のような詩の募集を始めた」とのこと。参加者は毎年300~500人で、作品の応募総数は約400~600。参加者の年齢層は10代から80代までと幅広いが、特に20代と50代からの応募が多い。応募者の男女比は、男性より女性の応募比率が高くなっている。
ちなみにメトロ文学館の今年のテーマは「東京で感じるあなたの心」である。

一方で、RATPのグランプリ・ポエジーは逆だ。RATP広報担当者によれば「以前から古典の詩を電車など車内に貼り出していたが、乗客が自ら詠んだ詩を自発的にRATPに送ってくるようになり、それらを貼り出す機会として、今あるアマチュア向けの詩のコンクールをつくった」という経緯を持つ。その後、「この試みの成功を受けて、毎年行われるようになった」そうだ。参加者は年々増えており、2012年は4000人だった総数が、2014年には6000人、2016年では8000人となり、2017年に9500人を超えた。

年齢別にカテゴリー分けをしていないメトロ文学館と異なり、グランプリ・ポエジーは「12歳未満」「18歳未満」「18歳以上」と3つに賞を分けている。「12歳未満」と「18歳未満」の2つのカテゴリーで全参加者の2割、残り8割が「18歳以上」だ。男性より女性の応募がわずかに多い。またテーマは特に定められていない。

短詩のカテゴリーで人気の俳句


どのような作品が選ばれているのか。ここで2017年に入賞した1句を紹介しよう。グランプリ・ポエジーの18歳未満「若者部門」でグランプリを取ったタマラ・マンスロンさん(16)の俳句だ。

Les collines rouillent
Sous l’effet d’une pluie fantome
L’automne sent le cuivre
(かそけき雨を浴び 丘錆びる 秋はあかがねの装い)

Tamara Manceron (Grand Prix Jeunes RATP 2017)


マンスロンさんのように俳句のスタイルで応募してくる参加者は多いそうで、RATP担当者は「俳句は短詩のカテゴリーでとても人気がある」と語る。「専門家たちによる応募作の最終審査において、だれそれの句が『本当の俳句かどうか』が、たびたび議論されることがある。ただし、もっとも優先されるのは、(俳句としての体裁よりも)句から発露される独創性と感情だ」と作品を選ぶ際に審査員の間でも、俳句論議が盛り上がっていることを教えてくれた。

海外でも親しまれている俳句が、今日もパリの公共交通機関の中で人々の心にふとした安らぎを与えている。
(加藤亨延)

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