水を飲むとお腹が鳴るのはなぜ? 消化管の研究者に聞いてみた

お腹がグーっと鳴るのは、お腹が空いたという合図、というのは誰もが知っていることだ。しかし、他にもお腹が鳴るときがある。
例えば、何かを飲んだときなどに鳴る「ゴニョゴニョゴニョ」という音。果たして、この音は胃にどのような変化が起こって鳴っている音なのか。消化管の研究を行う、埼玉大学大学院理工学研究科の坂井貴文教授に聞いてみた。

お腹は常にギュルギュル鳴っているらしい


「消化管は絶えず、収縮運動をしています。内容物を絞り出したり、混ぜたりするような動きです。この動きに伴い、お腹の中はいつも音がしています。お医者さんは胸やお腹に聴診器を当てますが、お腹辺りからはいつもギュルギュルという音が鳴っているのです。
外まで聞こえるのは、特に強く蠕動(ぜんどう)運動が起こったときです」

お腹の中は、常にギュルギュルなっていたようだ。そして、たまたま強く動いたときに、外まで音が漏れただけだった。

空腹時は激しい収縮が起きている


「お腹が空いたときには、強く収縮する蠕動(ぜんどう)運動が起こるので、大きな音が鳴ると考えられています。胃から小腸へ向かって内容物を送り出すとともに消化管内のバクテリアを一掃し、次の食事に備えてくれているのです。この空腹時収縮がないと、ひどいときには小腸に悪い細菌類が繁殖してしまうこともあります」

お腹が空いてグーっと鳴るときには、そんなすごいことが起こっていたとは驚きだ。

水を飲んだときに鳴るゴニョゴニョという音は?


では、水などの飲み物を飲んだときに鳴る「ゴニョゴニョゴニョ」という音はいったい何の音なのか。お腹が空いているときというより、ものがお腹に入っているときに鳴ることが多い気がする。

「水を飲んだときにお腹が鳴るメカニズムはよくわかりません。
ただ、食べ物や飲み物が入ってきたときの刺激で、消化管が動くことはあります。しかし、空腹時にみられる収縮とは強さが相当違います。空腹時に起こる収縮には、フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3の3段階があります。フェーズ3はものすごく強い収縮です。中をしぼり出すようにして、どんどん小腸のほうに伝播していきます。水を飲んだときに鳴る音は、この空腹時にみられるものとは違う収縮のメカニズムによるものと考えられます」

お腹グーのときとは比較にならないが、お腹ゴニョゴニョも収縮による音だったようだ。
坂井教授によれば、水を飲んだときに音が鳴るからといって、特に健康に支障があるわけではないという。

戦闘モードで鳴るのを回避できる?


水を飲むとお腹が鳴るのはなぜ? 消化管の研究者に聞いてみた

ところで胃腸から音が鳴りやすいときというのは、どんなときなのだろうか。空腹時にお腹がグーっと鳴って恥ずかしい想いをしている人もいるだろう。

「よくサラリーマンや若い女性の方などに、お腹が鳴るのがはずかしいので止める方法を教えてくださいと聞かれることがあります。空腹時に鳴るのを止めるには、基本的にものを食べるしかないと思います。
消化管の運動は、自律神経の働きによっても影響を受けています。
『副交感神経』が優位になっているときに消化管が活発に活動して鳴りやすいといえます。副交感神経が優位な状態というのは、例えば、冬の夜の食後に、温かく薄暗い部屋で、ソファに寝そべってうとうとしているときです。消化液の分泌も増え、吸収もよくなります。
一方、戦うときに優位になる『交感神経』が活性化すると、筋肉に血液が流れ、血圧を上げ、消化管に対して『大人しくしていろ』と命令します。よって、交感神経が優位になると、消化管の活動が抑えられるため、音が鳴りにくくなるといえるでしょう」

お腹が鳴るのを避けたい場合には、交感神経を優位にする緊張状態を作り出すといいのかもしれない。
(石原亜香利)

取材協力
埼玉大学大学院理工学研究科 坂井貴文教授
専門は分子内分泌学・消化管生理学。