昨日(3月7日)より、その名も『松本零士浮世絵コレクション』の発売が開始されています。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

数々のヒット作を生み出した漫画界の巨匠であり、紫綬褒章、旭日小綬章、海外においてフランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受勲、海外に多くのファンを持つ国際的作家・松本零士先生の漫画原画を元に制作された全新作オリジナル6タイトルの浮世絵たちです。


松本零士の世界観が浮世絵に


では、一つ一つご紹介していきましょう。
●「銀河鉄道テイクオフ」(95,000円/限定1000枚)
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

銀河鉄道999(松本零士漫画原作)より、999をモチーフとした浮世絵。今まさに宇宙へ飛び出す瞬間をとらえ、煙突の煙の代わりに花びらが舞う希望の象徴として描いた。敢えて人物を添えず、重量感たっぷりの銀河鉄道は圧巻。

●「メーテル古都の休日」(95,000円/限定1000枚)
象徴的な京都の名所をコラージュ、清楚なメーテルとマッチして独特の世界観を醸し出している。また、細密に描かれた京都の風景が鮮やかで、美人画を際立たせる。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も
人間国宝 九代目・岩野市兵衛が漉いた最高級和紙「越前奉書」に1200年の伝統を持つ老舗「竹笹堂」が木に彫刻をされた絵柄を一色ごと手刷りで色付けしていく。

松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も


●「侍ハーロックと熊本城」(100,000円/限定1000枚)
武者ハーロックと熊本城のコラボレーション。鎧は武具をデザインするプロフェッショナルが描くことで、まったくのオリジナル作品に仕上がった。ハーロックの眼帯が侍のように見えることから、和のテイストが引き立つプレミアな作品に。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も


●「波上のアルカディア」(95,000円/限定1000枚)
言わずと知れた北斎のオマージュを、波の向こうに宇宙を描くことで新しい世界を開いた作品。アルカディア号はマッコウクジラ型ではなく、プレイコミックに連載された当時のオリジナル版を使用している。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も


●「遭遇するヤマト」(95,000円/限定1000枚)
広大な宇宙に、ヤマトそして松本先生オリジナルのメーターを描くことでヤマトの重厚さを表現した直球勝負の異色作。また、松本零士原作漫画「宇宙戦艦ヤマト」には、生きていた古代守がハーロックとして登場していることから、遥か彼方には「デスシャドウ号」が描かれている。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も


●「ヤマト幕末へ」(95,000円/限定1000枚)
通常、部署によってカラーリングされているヤマトの乗組員の制服を、新選組のだんだら模様にアレンジ。彼らを新選組の時代へとタイムスリップさせ、花火を添えることで華やかなデザインへと仕上げた。遠くに浮かんでいる、宇宙戦艦ヤマトにも注目。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も


北斎漫画を全部持っている松本零士「涙がでるほどうれしい」


昨日、「すみだ北斎美術館」にて同コレクションの発表会が開催されました。当日は、豪華過ぎるゲストの皆さんが登壇しています。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

・図案・文案の総監督を務められた「ひろた組」代表・ひろたたけしさん
・題字の書を務め、“美しすぎる書道家”として話題の涼風花さん
・竹中木版五代目摺師、「竹笹堂」代表・竹中健司さん
・今回の浮世絵コレクションの版元であり、プロデューサーを務めた「ブロード・エキスパート合同会社」岡田さん
・コレクションの完全監修を行った漫画界の巨匠・松本零士先生

この日は、ゲストの方々によるトークセッションが開催されました。

――今回、「松本零士浮世絵コレクション」を手掛けられてみて手応えはいかがでしたでしょうか?
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本 私は子どもの時から絵が好きでして、浮世絵の真似をしていっぱい筆で書いて、そういうのと一緒に漫画を描くのが好きだったんですよ。で、やはり絵というのは心で描くものなんですね。自分の思いが筆・ペンで伝わっていくわけです。CGとは少し違うわけですよね。ですから、私は北斎漫画も全部持っております。古本屋さんで安い時代にたくさん買いまして、色々なものを持っていて、アメリカン・コミックから始まって何もかもみんな蔵書の山で、地震が来たら埋もれてしまいます。そういうことをやりながら漫画を描いてます。ペンで描くのが好きなんですね。もちろんCGも使いますがそれは部分的なもので、あくまで絵というのは北斎漫画にしろ何にしろ心が描いてるわけですよね。ですから、その心が伝わってくるわけです。だから、北斎漫画を見てますと温かい感じがするわけです。ですから、北斎漫画というのは歴史上の偉大な先輩だと思っています。

――今のお話にもあった葛飾北斎の「すみだ北斎美術館」での発表となるわけですけども。
松本 自分の絵を木版でここまで再現していただけるというのは夢みたいなんですよ。小さいときからこういう絵に憧れてましたんで感慨無量でして、涙が出るほどうれしいです。本当にありがとうございます。これも、版を作られる方、絵を構成される方、細部の組み合わせを作られる方の心がこもってるわけですね。その心が描き上げて仕上げていくわけですから、人の心が描くものが絵であり版画であり、写真製版とは違う意味で一つの絵画の大事な方向だと思います。

――松本先生の言葉を受けられて、図案の総監督を務められたひろたさん、いかがでしょうか?
ひろた 感無量です。もう、何も言うことないですけども。先生の世界がみんな好きで、スタッフ一同が力を合わせて、半年以上の時間をかけて絵を作り、文章を作り、そして竹中さんにバトンタッチして浮世絵に仕上げてもらったという流れなんですけども、本当に幸せな一年でした。

松本零士が特に思い入れを持つ浮世絵は……


――今回、この6作品が生まれたわけですけども、その中でも『侍ハーロックと熊本城』は熊本城の復興チャリティも行ってるとお伺いしました。この取り組みのきっかけはどういうところだったんでしょうか?
岡田 先生のお生まれが福岡県久留米市というのと、小学3年生から北九州で過ごされたということと、先生の漫画の中に日本酒の「美少年」というものが出てくるんですけどもその蔵元さんが熊本にございまして、「株式会社美少年」という名前に今はなってるんですけども。今、皆さんが復興を支援されてる中で、我々もせっかく未来に向かって新しい日本を築いていく中で、合わせて応援していきたいなと思いまして寄付をさせていただいています。なので、他の作品に5千円の寄付金を付けさせていただいた価格設定(100,000円)になっております。

――『宇宙海賊キャプテンハーロック』のアルカディア号を描かれた『波上のアルカディア』。この作品では、葛飾北斎の富嶽三十六景『神奈川沖浪裏』がオマージュされているということなんですけども、この作品はどういった経緯で?
ひろた この作品は一番最初に考えて、浮世絵をかなり意識した感じで構図を作ったらこれが出てきて。ただうしろが宇宙っていうことで、デッサンの世界観が広がって過去のものをそのまま引用した感じなんですけども、すごいいいデザインになっている。その後、だんだん崩れていくというか自分なりの世界に。だから、たぶんこれが一番堅いというか浮世絵イズム的な作品じゃないかなと思います。割と男の人がこれを好きって言います。

――特に印象に残っている作品があったら、教えていただきたいなと思うんですけども。あと、ご紹介できる作品があれば。
松本 私は、(『波上のアルカディア』の)波をくぐっていくところですね。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本 あの、波の絵が好きでしてね。あそこをくぐり抜けていくアニメーションを作りたいと。向こう側に本来は富士山が見えてるんですけど、背景に描かれているこういうのが大事なんですよ。瓦の一枚一枚にいたるまで人が描くものは情感がこもるわけですね。それで、こういう絵と組み合わされると非常に温かい楽しい絵になるわけですね。それで、実はアメリカの美術家に「日本の漫画の歴史は?」と聞かれたんですけど、鳥獣戯画から始まるでしょ? それから、北斎。年代は私も正確にはわかりませんけど、こちらのほうが1000年くらい早いんですよね。日本の人は紙と筆で心を描くということに時間を費やして楽しむ。それが今、我々に受け継がれてるわけですよ。先人のなされたことを受け継いでいく。こうなりますと、DNAですね。それを残してくださったと、先人の大画家に心から感謝しております。

――松本零士先生の浮世絵も、これから何百年も受け継がれていくんじゃないでしょうか?
松本 ありがたいですけどね、はい(笑)。

――このコレクション、世界中のファンの方々が待っていると思うんですけど、松本先生、ファンの方へメッセージをお願いいたします。
松本 私も歴史上、少し北斎と関わりがありましてね。直接じゃないんですよ。私の先祖がシーボルトに頼まれて日本の植物画を北斎に描いてもらおうと江戸に来て御用になりまして浅草のその辺にぶち込まれたんですけど。愛媛県宇和島市から「それは罪人じゃないから、悪者じゃないから釈放してくれ」ということで船で引き上げていったんです。そしたら「あなたはこの人と結婚するんだ」といって紹介された女性がいるわけです。それが、遺伝子の記憶か何か知らないけど、メーテルそっくりなんですよ。その人を、私が無意識に描いてるわけですよ。人の記憶というのが、全部遺伝子によって作動されてる。だから、私も無意識のうちに先祖代々の遺伝子で描いてるわけですね。そういう不思議な接点がありましてね。皆さんも自分ひとりだと思わずに、自分の体内には遺伝子として何百億人もの生命体として始まって以来の記憶が必ず自分の中にいるわけですね。それが、人間なんですね。動物、すべてが。ですから「自分は一人ではない」と、孤独感に悩まずに、皆さん、意地になって頑張ってください。私も意地の塊でしてね、「今日は我慢する。明日、見とれ」「今日は自分は泣いたけど、明日は俺が泣かしてやる」と、そういう不撓不屈の精神というのが好きで、断固として譲らん九州男児として一生懸命描いてるわけです。またこれからもいっぱい描きたいと思ってますのでね。この絵を見てしみじみと先祖代々のことを思い出してですね。「もうこれ以上、年を取りたくない」というのが正直な本音なんですけどね(笑)。

目をキラキラさせる松本零士


続いて、涼風花さんによる書道パフォーマンスが行われます。涼さんには、銀河鉄道999で宇宙へ飛び出す瞬間を捉えた作品『銀河鉄道テイクオフ』の題字となっている文字「夢、希望 そして愛をのせて 今ひとたび 宇宙を往く」を書いていただきます!

ひろたたけしさんが、この題字に込められた思いを語ります。
「一番初めに考えて、先生に何度もチェックしてもらって作ったんですけど、見て勇気を持ってほしい。少しでも元気になってもらいたいな。特に最初の999は桜が舞っていて、“出発する人”たちに向けて作りたいと思ってますね」(ひろたさん)

というわけで涼さん、お願いします!
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も


お見事!!
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

 いつもは一文字を“ドン!”と書くことが多いんですが、今回は多文字書ということでどのように書くかあらかじめすごく考えたんですけど、こちらの「夢、希望 そして愛をのせて」というところを大きくして、思いが強いということを表現したくて。で、その後に文字が続くことで、届くようなイメージで書かせていただきました。今、こちらを書いている間、納品までのたくさん練習したことだったり勉強したことを思い出して、感慨深くなりました(笑)。頑張りました。

松本 一筆一筆、心を込めて心で書かれるわけですよね。ですから、その“心”が乗った表現ですよね。これは、タイプライターで打ったものと違いますよね。心がこもってるから、これを見ると非常に迫ってきます。素晴らしいものです。

松本先生、その後に行われた版画パフォーマンスも興味津々に拝見していました。
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も


その後も浮世絵をキラキラした眼差しで鑑賞するご様子が、すごく印象的でした!
松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

松本零士の世界が浮世絵に 北斎と不思議な接点も

(寺西ジャジューカ)