宮城県・仙台市の中心部から車で30分、温泉地として知られる秋保(あきう)の町にある小さなスーパー「主婦の店・さいち」。町の人口は4700人程度で、けっして交通の便がいいとはいえず、店舗面積も80坪と広くない「さいち」の年商はなんと6億円!

この「さいち」について書かれた75歳の社長・佐藤啓二氏著書『売れ続ける理由』を読むと、「さいち」の実績、“常識外れ”な経営法や考え方に驚くばかり。
そんな数々の“びっくり”をとりあげてみました。

○おはぎとお惣菜で年商3億円の売上
「さいち」の開業は1979年。生鮮食品、お菓子、雑貨、お酒といった商品のほか、手づくりの「おはぎ」と「お惣菜」を販売。このおはぎとお惣菜の「惣菜部門」で、年商6億円の約半分、3億円を売り上げている。
「おはぎ」は1日平均5000個、土日祝日は1万個以上売れている。味の美味しさはもちろん、1個105円という値段の安さ、その大きさにも驚かれるという。
このおはぎと300種類以上のラインナップを誇るお惣菜を求め、全国からお客が訪れ、その状態は20年も続いている。

○当日食べないお客には商品を売らない
人気の「おはぎ」は、無添加なので日持ちしない。なので、遠方の方のまとめ買いなどで当日中に食べてもらえなそうなお客に対しては、「お買い上げをご遠慮いただきます」と断るケースもあるのだという。

○お惣菜のライバルは「家庭の味」
「各家庭の料理より美味しくなければ、絶対に買ってもらえない」と、ライバルは同業他社ではなく「家庭の味」と佐藤啓二社長。

○“企業秘密”も無料! で研修
「『さいち』で学びたい」と全国から研修・視察の申込みが殺到し、大手スーパー、コンビニチェーン店をはじめ600社以上の企業の人が訪れている。
驚いたのは、「さいち」ではその研修を“無料”で引き受けているところ。
しかもお惣菜のつくり方といった“企業秘密”も惜しげなく教えるというのだ。
「共存共栄をモットー」「全国から“生の現場の声”を聞かせてもらう機会をいただいて、こちらも勉強になり、励みももらっている」と本書で社長が語っているが、これはだれにでもできることではないだろう。

○チラシはうたない
「さいち」では、他店との価格競争に巻き込まれてしまうことと、きめ細やかなサービスがおろそかになってしまう弊害から、チラシをうつことをやめてしまった。

○従業員のやる気を引き出すために……
お惣菜コーナーにはビデオが備え付けられている。調理場からスタッフがモニターでお客の様子を見ることができるのだという。お客が実際に手にする場面や、うれしそうな顔を見たりすると、本当にモチベーションが上がりそうだ。

また、お惣菜をお客にほめられたときには、社長の奥様で惣菜部門を手がけている澄子専務が「『この子がつくったんですよ』と言って、そのお惣菜をつくったスタッフをお客様のもとに連れていく」なんてこともあるらしい。

○原材料が上がっても値上げしない
他店舗では、売れ残りを想定した「ロス率」を原価に含んでいるケースがほとんどだが、「さいち」の惣菜は、ロス率をゼロとして計算されている。創意工夫で材料の無駄を徹底的になくし、売れ残りや廃棄をおさえることによって、安く売ることを実現。
また、社長が毎日欠かさずつけている「アナログ閻魔帳」と呼ばれる対照表がある。その日の天気や最高・最低気温、客数、売上、特記事項を記入した膨大なデータベースから、客数や売上を予想して、“ロス率ゼロ”に結びつけているのだそうだ。

この書籍『売れ続ける理由』も“売れ続けて”いる。
ダイヤモンド社に確認したところ、9月に発売された本書はすでに5刷目だという。
75歳「さいち」社長の処女作でもある『売れ続ける理由』、是非手にとってみてください。
(dskiwt)