ということで、快く取材に応じてくださった奥村真理子先生は、とっても明るくて気さくな作品そのままの方でした!(【前編】より) 80年代アイドル好きのあいだでは伝説となっている「ナナちゃん」シリーズですが、どういうところからアイデアを思いつかれたのでしょう?

「私自身がもともと音楽好きでピアノや歌をやっていたこともあったのですが、当時はアイドルブームだったでしょ。実在の歌手がたくさん登場する、主人公の女の子が歌の世界に入っていくというストーリーはどうかな? と編集部に話してみたら、『それはおもしろい』ってことになったんですね。
登場する人たちはみんな、当時、私が大好きだった人たち。ジャッキー・チェンとかダンプ松本さんは個人的にファンだったので登場させちゃいました」

ナナちゃん他、マンガのキャラクターと違って、実在する芸能人の方々はちゃんとリアルタッチで描きわけられているのが衝撃的でした。

「そうそう、それはわざとそうしたのね。ただ、大変だったのは、連載当時からコミックスになるまでに1~2年とか時間が経ってしまうでしょう。その時には、すっかり髪型が変わってしまってる芸能人も多くて。特にチェッカーズのフミヤ君なんかはデビュー当時とすっかり髪型が変わってしまっていたので、全部描き直したり、ということもありました」

なるほど、そんなご苦労があったんですね。
当時の読者の反応はどんな感じだったのでしょうか?

「反響は良いのも悪いのも両方ありましたが、それも含めて楽しんで描いていましたね。たとえば、『似てない』とか『これ、誰かわからない』とか(笑)。良いほうのは、『歌の道にすすみたい』というお手紙をくれた女の子もいました」

なるほど、もしかしたら、本当にナナちゃんに憧れて芸能界に入った女の子もいたかもしれないですね。やはり、売れっ子だけに、ものすごくお忙しかったのでしょうか?

「あの頃は学年誌のほか、『ぴょんぴょん』などでも連載していたので、毎月、4~5本の締め切りがあり、それこそ芸能人並みに睡眠時間が少なかったです。特に私はアシスタントさんなどをお願いせず、一人で描いていたので。若かったから、がんばれたのだと思いますが。
ナナちゃんはおっちょこちょいなところが私自身によく似ていて、今も思い入れのあるキャラクターです」とのこと。

先生の近況としては、2004年に代表作である『光のパンジー』が復刊ドットコムより再版された他、『光のパンジー』および『ナナちゃん』シリーズが電子書籍化される予定もあるそう(時期などはまだ未定)。また、先生のお店、『オアシス』は全国各地からファンが訪れるなど、知る人ぞ知る憩いの場所になっているもよう。

そんなわけで、アイドルが最もアイドルらしかった時代の記念碑ともいえる『ナナちゃん』シリーズ。古本屋さんなどで運よく発見できたら、夢多かったあの頃へタイムトリップしてみては? BGMはもちろん、名曲揃いの80年代歌謡曲で……。
(野崎 泉)