先日、とあるビル内に「緊急時飲料提供ベンダー」と書かれた自動販売機を見つけた。

この「緊急時飲料提供ベンダー」は、災害などでライフラインが途絶えた際に、無料で飲料を提供してくれるという自動販売機だ。
飲料水メーカーや自動販売機メーカーが無償で行っている災害対策の一環である。ここ数年で導入・設置の動きが広がり、ニュースで取り上げられたりして、ご存知の方も多いかと思う。

しかし、以前から気になっていた素朴な疑問が……。
災害時に有料から無料になるということだが、一体どのようにして切り替わるのだろう?
自動で一斉に切り替わるのか? それとも管理者などが手動で切り替えるのだろうか? 
そこで、自動販売機メーカーの株式会社 八洋にお話を伺った。

「当社の自動販売機では、ビルなどにいる管理者が手動で切り替えるという形になります。また、無料となる基準ですが、通常は、契約している市町村からの要請があれば、飲料をご提供するということになっております」

契約している市町村と話し合い、設置場所の管理者などが手動で無料に切り替える、ということらしい。
ちなみにキリンビバレッジ株式会社の災害用自動販売機もこれと同じような手動タイプのものである。

キリンビバレッジ(株)の担当者にもお話を伺った。
「有料から無料への切り替えですが、当社では主に設置場所での手動操作にて行います。また、飲料を無料で提供する際の状況ですが、目安としましては『設置先の所在地域が、震度5弱以上の地震に見舞われたとき』、『設置先の所在市区町村に災害対策本部が設置されたとき』といったものになっております。ただし、設置先との協定がございますので、実際には協定内容に基づいて行われることが多いかと思われます。ちなみに、現在までに発動されたことはありません」とのこと

実は、この災害用自動販売機、自動で切り替わるというタイプもある。
それがコカ・コーラの自動販売機だ。

「設置場所を提供している自治体などの設置主の方との話し合いによって、無料提供をするかを決定します。インターネット回線を使った遠隔操作によって、有料から無料への切り替えを行い、提供することが可能になります」と日本コカ・コーラ(株)の担当者。

また、コカ・コーラの災害用自動販売機には電光掲示板が設置されており、そこには災害情報などを表示させ、メッセージボードとして活用することも可能だとか。この電光掲示版やメッセージ内容の操作も、インターネット回線を使った遠隔操作で行われるので、タイムリーな情報を表示することができる。

しかし、この自動での切り替え、災害時の混乱に乗じて、一人で何本もガメたりする輩がいるのではないか? という心配をしてしまうのだが……。


「災害用の自動販売機は、災害時に避難場所となりうる公共性の高い場所を中心に設置されています。公共施設には多くの人の目があるかと思いますので、そのような事態が起きても、その場にいる人達が制止してくれると考えています。それを心配するよりも、緊急時にできるだけ迅速に飲み物を配給できることに、私たちコカ・コーラの自販機だからこそ提供できる付加価値を見出して、地域の自治体などとの協議によって設置を推進しています」と日本コカ・コーラ(株)の担当者は語る。

たしかに、誰もいない所だったらまだしも、多くの人がいる所で一人占めするのは難しいかもしれない。
ちなみに、コカ・コーラの災害用自動販売機は、2004年10月の新潟県中越地震や、2007年4月能登半島地震の際に飲料水を無償で提供する機能(フリーベンド機能)を稼動させたとのこと。

災害用自動販売機は公共施設に設置していることが多い。
今後は病院や学校、多くの人が集まるビル内などに設置されることも検討されているようだ。
ライフラインが絶たれた際に、どこへ行けば飲料が提供されるかを知るためにも、「緊急時飲料提供ベンダー」などと表示されている自動販売機を見つけたら、その場所を覚えておきたい。
(ドープたつま/studio woofoo)