日本を代表する冬の名曲の筆頭、globeの『DEPARTURES』。
この曲はCMありきで誕生したことをご存知だろうか? 95年冬、JR東日本のCM曲として、小室がプロデュース依頼を受けて制作した楽曲なのである。


CMの様々な制約、小室の潜在能力を引き出した!?


詳しくは、JR東日本の「冬のスキーキャンペーン」のCM曲になる。
何かと制限が多いCMの枠で、クライアントの商品イメージにマッチする楽曲にする。しかも、基本15秒の短い時間で視聴者の記憶に残るメロディにしなければならない。そのハードルは、クリエイターにとって想像以上に高いものだ。

しかし、小室にとってはむしろこの制限や要望が創作意欲をくすぐり、思った以上のパワーを引き出すことがあるという。この『DEPARTURES』がまさにそのケースだった。

『DEPARTURES』完成の影にマーク・パンサーの人脈あり


CMのストーリーは、竹野内豊と江角マキコがカップル役になり、新幹線に乗ってスキーに出掛ける内容に決まった。
江角はこの年に『幻の光』で映画初主演を果たしていたが、世間的にはCMモデルが基本的な活躍の場。
竹野内もドラマではチョイ役止まりで、CMがメイン。世間的な認知はまだまだといったところだった。

楽曲を作るに当たって、ブレイク前だった2人のキャラクターを深く知りたかった小室をサポートしたのが、同じくglobeのメンバーであるマーク・パンサー。なんと、この2人と知り合いどころか友達だったのだ。
2歳からモデル活動を始めているため、実は芸能界が長いマーク。さすがの顔の広さである。


そして、マークを通じて2人のパーソナリティを徹底的にリサーチした中、ともにモデルから俳優への転換期であることが強く印象に残った小室。
結果、映画のサウンドトラックのようなドラマを感じる楽曲を目指したという。

スタッフ全員が涙したCMと楽曲のシンクロ率の高さ


『DEPARTURES』の完成度の高さは、誰もが知るところだろう。
スタジオで曲とCMを一緒に流した時、メンバー含め、居合わせた全員が感動の涙を流したというエピソードもそれを物語っている。

「CMから曲からKEIKOの歌声から、あらゆるものの波長がピーンと合う瞬間だった」とマークも語っているが、それくらいにCMと楽曲もマッチしていた。

CMには、「出発編」「帰郷編」「上越編」の3種類があったが、流れていたのはイントロと「どこまでも限りなく 降り積もる雪と あなたへの想い…」のサビの部分のみ。
これだけで語り継がれるだけのインパクトを残したのが凄い。
時代を超えて愛される名曲たる由縁である。

ちなみに、このCMバージョンはシングルに比べてキーが高くなっている。KEIKOの伸びやかな歌声が一層際立つのが特徴だ。

globeはシークレットな存在だった!?


デビュー当初のglobeは、ZARDのようにメディア露出を極力抑えた展開から始まったため、実は3rdシングルまでジャケットにはメンバーの写真が使われていない。
実際、デビュー曲の『Feel Like dance』はフジテレビ系ドラマ『ひとりにしないで』主題歌として起用された時点では、謎のアーティストといった売り方だった。

その後正体が分かったところで、マーク・パンサーは一般層にとっては「ピザーラ」のCMの人、音楽好きにとっては『MTV』のVJの人であり、KEIKOに対しては「trfの二番煎じ」なんて声も多かったほど。
セールスに対して、世間の認知は今一歩といった印象だった。

その声が一転したのも、4枚目のシングル『DEPARTURES』からだろう。
リリース直前、『ミュージックステーション』でこの曲を披露したが、ライブを除けば実質的にこれがglobeの世間的なお披露目となる。ジャケットにも遂にメンバーが登場し、CMとの相乗効果で認知度も人気も一気に加速して行く。
ダブルミリオンを記録し、globe最大のヒット曲となっているのはご存知のとおりだ。

様々なアーティストにカバーされている名曲ではあるが、いつかまた元気になったKEIKOの歌声で聴きたいものである。


※文中の画像はamazonよりDEPARTURES