10月26日に行なわれるドラフト会議に向け、横浜DeNAベイスターズがリストアップする“ある選手”が注目を集めている。アレックス・ラミレス監督の甥(おい)っ子で、ルートインBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスに所属する、ヨンデル・ラミレス投手(20歳)だ。


ヨンデルは、2012年にベネズエラから来日。日体荏原(えばら)高校(東京)に入学して野球部に入るも、思うような活躍はできなかった。プロからも声はかからず、卒業後に叔父のラミレスがシニアディレクターを務めていたダイヤモンドペガサスに入団することになる。

「コネ入団」と陰口を叩かれながら、1年目の15年は11試合に登板して0勝1敗、防御率10.57に終わる。16年は初勝利をマークしたが、独立リーグでの1勝6敗、防御率7.09という成績は、NPBに入団するには「夢のまた夢」と言わざるをえないものだった。

今年は22試合に登板して1勝3敗1セーブ、防御率5.54。
先発完投も記録したものの、ドラフト候補に挙がるような成績ではない。しかし、実力以上に“縁”が威力を発揮することもある。叔父「ラミちゃん」のDeNA監督留任が決まり、ヨンデルが育成枠で指名されることが濃厚になったのだ。

本人に電話をしてみると、すっかりDeNAの一員になったかのようにこう話した。

「背が高い(192cm)ので、角度のあるストレートが持ち味です。相手の打者がストレートとわかっていても打てない球を投げたいですね。
『ラミちゃんが監督だから入団できた』と言われないように頑張って、早く支配下選手になりたいです」

これからは「ラミちゃん」なんて呼べないよ、と言うと「ラミレス監督、ですね。でも『ラミちゃん』と呼んでも全然問題ないですよ」とヨンデルは明るく答えた。

ラミレス監督には「コネ入団」の前例がある。05年、野球経験がない義理の息子のアレックス・ラミレス・ジュニアを当時、所属していたヤクルトに投手として入団させたのだ。ジュニアは2軍でも勝てずに3年の現役生活を終えたが、ヨンデルはただのコネ入団ではなさそうだ。

今年、独立リーグ11年目のシーズンを首位打者で飾った、ヨンデルのチームメイトである井野口祐介は「あれくらいの選手はNPBの2軍にいくらでもいるでしょうが…」と前置きした上でこう語った。


「去年までは『まだまだ無理かな』って感じだったんですけど、今年は球速が5キロぐらいアップして、フォアボール連発もなくなりましたからね。20歳という年齢を考えても、(ドラフトに)指名されておかしくないレベルには達していると思います」

それでも、ヨンデルがドラフトで指名されれば、ここでも「ラミちゃんがいたから」と言われることは間違いない。努力や実力が評価されにくい環境ではあるだろうが、それを覆せるのはヨンデル本人だけだ。

高校入学後に覚えた日本語は流暢(りゅうちょう)で、順応性は十分。あとは、結果がすべての世界で才能を開花させ、周囲の雑音を封じることができるか。ヨンデルが目指す先は、支配下選手、そしてハマのエースだ。


(取材・文/阿佐 智)

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