混迷を極めている今回の衆院選だが、それでも自民党は安定多数の244議席を上回る見込みだという。10月12日、日本経済新聞が報じた。

朝日新聞が10月10~11日に行った調査でも、無党派層のうちの32%が同党に投票すると回答している。


森友学園加計学園問題で揺れ、一時は内閣支持率が「危険水域」と言われる3割を下回っていたものの、大幅な議席減とはならないようだ。とりわけ、若者の間では、自民党の支持率が高いという。


20代女性「森友・加計問題は、メディアがはやし立てすぎているだけ」



毎日新聞の調査によると、同党の支持率は30~60代では2割台に留まっているが、20代以下では4割弱にも上る。内閣支持率も、70歳以上や40代では4割台、他の世代では3割台だが、20代以下では5割弱に上る。


なぜ自民党を支持するのか。

今回、自民党に投票するという都内人材会社に勤務する女性(26歳)は、「他に選択肢がない」と語る。



「いつも自民党に投票しているわけではありませんが、今回は消去法で自民党に投票すると思います。安倍政権が『働き方』改革を進めて、生産性を向上させてくれることに期待しているからです。改憲にも賛成です」


他の政党について聞くと、



「希望の党は政策が不透明で投票できません。原発ゼロを打ち出しましたが、原発がそこまで重要な問題だとは思っていないんです。立憲民主党は、民進党時代から政権の批判ばかりで肝心の政策の中身が見えてきません」


と批判的だ。

一時、加計学園や森友学園の問題で安倍政権が批判にさらされたこともあったが、



「森友・加計は、それほど重要な問題でもないのに、メディアがはやし立てすぎだと思うんです。それよりもやはり政策の中身を見るべきです」


と擁護した。


その一方で、自民党に反対する若者ももちろんいる。都内でユニオンの活動に携わる男性(28歳)は、「立憲民主党か共産党の野党共闘の候補に投票するつもり」だという。男性自身は「自民党はダメ」と考えており、同世代も「積極的に支持しているというわけではないのでは」と語る。



「20~30代は、バブルも経験していないし、物心ついてからずっと不景気だったという人が多い。

好景気や労働条件が良かったことがないから、社会をより良く変えていけるというリアリティがないのかもしれません。支持しているというよりも、長く政権にいるため、なんとなく投票する人もいるのではないでしょうか」


「民主党のブーメランまとめ」といったネット記事で自民支持に?


若者の自民党支持の背景には、経済的な要因だけではなく、「ネットで野党やリベラルを批判するようなまとめ記事を読んでいる」ということもあるかもしれない。ITジャーナリストの井上トシユキさんは、次のように指摘した。



「以前、学生と話した時、『民主党はブーメランがひどい』と話していました。つまり民主党は自民党を批判しておきがら、それと同じようなことを自分たちでもやっているというのです。ネット上にある、"民主党のブーメランまとめ"といった記事が情報源になっているのではないでしょうか」


ネットでは、例えば、自民党議員が年金を納めていなかったことを批判した民主党議員が、同じように年金を納めていなかったことなどが「ブーメラン」と呼ばれている。

新聞や雑誌、テレビではほとんど見かけない類の批判だが、ネットではこうしたまとめ記事が散見される。野党を批判し、安倍政権を礼賛する保守系ブログも多い。



「北朝鮮問題についても、2003年に朝日新聞が『ミサイルは一発だけなら誤射』という趣旨の記述をしたことがネットでは語り継がれています。いずれにせよ、情報源はネットです。若い人は新聞を読まなくなったとよく言われますが、ヤフーニュースなどネットでニュースを読んでいます。そのまま関連記事を辿ったり、検索したりしているうちにネット上の野党やリベラルを揶揄した情報に出会う。

それで自民党を支持するのではないでしょうか」