経済発展が進む中国の大都市では、数多くの出稼ぎ農民(農民工)たちが、地元の人がやりたがらない、つらくて賃金の安い仕事に就いている。そんな彼らのほとんどは、農村に子どもを残して働きに出てきているのだ。

そういった子どもたちのことを「留守児童」といい、その多くは貧しい農村で祖父母や親戚に育てられている。

 中国の全国夫人連合会が2013年に発表したところによると、中国の農村にいる留守児童の数は約6,100万人にも上り、その数は全国の総児童数の5分の1を超えるという。彼らの両親が田舎に帰ってくるのは、中国の新年である春節(旧正月)くらい。中には、数年に一度しか帰ってこない家庭もあるという。地方都市からの流入人口が多い、中国南方の都市・深セン市に勤務する日本人駐在員は言う。

「留守児童は、何も農村の子どもたちだけとは限りません。
大都市の会社で働いている地方都市出身の夫婦が、就学前の子どもを故郷の両親に預けるケースもよくあります。さすがに、子どもに会いに行くのが年に1回だけということはないようですが、“家を離れる際に、子どもに泣かれて困った”と、悲しそうに話す同僚が何人かいました」

 両親の庇護下にない子どもたちは外界のあらゆる危険に対して無防備であり、中には世間に対して深い敵意を持つ子どもも出てくる。「新京報」によると、12年には留守児童の犯罪率が未成年犯罪の70%を占め、その数は毎年増加しているという。

 それでも祖父母や親戚など、面倒を見てくれる人がいる子どもたちはまだましだ。今年6月には、貴州省畢節市の田舎で、4人の兄弟姉妹が農薬を飲んで自殺するというショッキングな事件が起こった。一番上の男の子は13歳、一番下の女の子は4歳で、面倒を見てくれる大人がおらず、食べる物にも事欠いた生活だったようだ。


 さらに「新京報」が伝えるところによると、この3年間で広東省だけでも2,500人以上の女児が性的犯罪の被害に遭っており、その半分近くが14歳以下だったという資料もある。また、寧夏回族自治区にある全部で100戸ちょっとの農村では、この1年間で12人の幼女が幼稚園の教師による性犯罪の被害に遭っていたことが判明したが、うち11人が留守児童だった。

 子どもは国の宝である。にもかかわらず、本サイトの「中国農村で豚として育てられた男児」でもお伝えしたが、中国には悲惨な状況に置かれながらも十分な保護を受けることのできない子どもは非常に多い。この国の未来は、いったいどうなるのだろうか?
(取材・文=佐久間賢三)