5年前の時津風部屋における弟子暴行死亡事件を皮切りに、各部屋の親方の暴行事件や力士の大麻事件、さらには八百長疑惑による力士の大量解雇など、一時は存亡の危機に直面した大相撲。角界の旧態依然とした体質の大胆な改革を唱え、近い将来の理事長候補として期待されている貴乃花親方の弟子に対する暴行疑惑を、「週刊新潮」(新潮社)の5月3・10日号が報じている。

 同誌に告白したのは、2年前に入門し、今年3月8日に廃業した18歳の元弟子。この元弟子によると、今年1月の初場所で、入門から初めて勝ち越したため同親方に報告に行くと、「なんで先輩よりも先に報告に来るんだ!」と怒鳴りつけられ、腹や顔面をボコボコに殴られたという。この元弟子に対する同親方の暴行は入門から1年が過ぎたころから突如始まったが、同親方の弟子たちへの暴行は以前からほぼ満遍なく行われ、1人につき多い時は週に1~2回、少なくとも月1回は繰り返されていたという。

 部屋のおかみさんである景子夫人も見て見ぬふりだったというが、この元弟子が部屋を飛び出すと、実家の父親に電話をしてきた景子夫人は、父親から同親方の暴行を聞かされ「知らなかった……ショックです……」と話したという。

 さらに、同部屋からは円満解決を図るべく、これまでの生活について「いじめや問題となる行為をなんら受けることはなく……」などと書かれた「誓約書」なる文書が送られ、文書に親子で署名・捺印しての返信を求められたという。怒りが収まらない父親は2度にわたって日本相撲協会に抗議するもナシのつぶてだったというから、角界の変わらぬ体質がまたまた浮き彫りになってしまった。

「貴乃花親方はいわゆる“かわいがり”的な暴行は当たり前の環境で育ってきたため、加減できなかったのでは。2004年2月に貴乃花部屋を構えた際、貴乃花親方は『5年以内に関取を育てる』と宣言したが、いまだに育てた関取はゼロ。というか、名選手が名コーチになれない典型で、教え方があまりうまくなく、まったく入門者がいない時代が続いていた。現在、幕下で十両入りを目指す弟子3人は貴乃花親方自らスカウトしたとはいえ、1人はモンゴル人、2人は高校時代に実績のある力士で、貴乃花親方の指導よりも、本人たちの素質によるところが大きい」(角界関係者)

 4月22日に放送されたドキュメンタリー番組『情熱大陸』(TBS系)では、3月の春場所で担当部長に抜擢された貴乃花親方に密着。集客に奔走する姿、ケガをした弟子をいたわる姿、さらには、地方で入門希望者たちと対面する姿などが放送されたが、少なからず暴行疑惑の余波はありそうだという。

「貴乃花親方は部屋と別の場所に自宅があり、毎朝電車で部屋に通うという角界では珍しい“通い親方”。

朝稽古が終わると日課の散歩に出かけるので、ろくに弟子たちとちゃんこを食べないし、景子夫人もめったに部屋に姿を見せない。にもかかわらず、テレビカメラが入ると、“理想の部屋”のような雰囲気を演出して最大限に部屋をPRしている。そんな中、今回明らかになった貴乃花親方の“裏の顔”は、弟子集めに多大なる悪影響を与えるだろう。数年間続いた入門者なしに逆戻りする可能性もありそう」(スポーツ紙記者)

 貴乃花親方は25日、暴行疑惑について日本相撲協会から聴取されたが、同協会の危機管理委員会副委員長を務める八角親方(元横綱・北勝海)は「貴乃花親方に事情を聴いたが、暴行の事実は否定していた。今の状況で協会が介入することはない」とコメント。

 どうやら、同協会が未来の理事長候補とも言われる貴乃花親方の“裏の顔”をまともに追及する気はなさそうだ。