「ギャラは安いし、数字も取れる。動物に勝てるタレントはいない」(広告代理店関係者)といわれるほど昨今、タレントペットの勢いが増している。

動物やペットを扱う番組は、『ペット大集合! ポチたま』(テレビ東京系)を筆頭に、週3本もある。中でも、やはりというべきか、犬の需要が一番高く、CMや映画・ドラマ、バラエティに引っ張りだこである。アイドル犬を活躍させる『ワンタメ バラエティチャンネル』なるニンテンドーDS用のゲームも発売が予定されており、“アイドル犬ビジネス”は、目下花盛りといったところだ。

 人気アイドル犬は、生半可な人間のアイドルよりも多くの注目を集めるといっても過言ではない。その頂点ともいえるのが、アイフルのCMでスターダムにのし上がったチワワのくぅ~ちゃんや、ソフトバンクのCMでお父さん役を務めるカイ君だろう。

 くぅ~ちゃんが所属する日本ペットモデル協会のプロデューサー・小谷ゆみ子氏によれば、「飼い主さんのほうからペットモデルにしたいと、くぅ~ちゃんをウチに登録したんです。

最初の1年間は、あらゆるオーディションに落ち続けました。アイフルのCMでやっと最終選考に残って、監督や共演者の皆さんのご支持もあって合格しました」という。

 同協会は従来のペットプロダクションと違い、自社で動物を飼うのではなく、飼い主に自分のペットを登録してもらい、CM撮影やペットフードのパッケージモデルなど、さまざまなオファーの中から、適切な「モデル」を選んでブッキングする方式を採っている。ギャランティは飼い主との折半になる。

 消費者金融でも中堅だったアイフルは、あのCMで認知度、好感度とも大幅にアップ。費用対効果を考えれば、ヘタなタレントを使うより断然効率が良いのは間違いない。

 そんなくぅ~ちゃんは、一時は雑誌報道などで「死亡説」なんて話も流れたが、元気に生きており、昨年は子犬を出産。今も出演依頼が絶えないという。

 現在、こういった状況を背景にして、登録方式の動物プロダクションが乱立している。その多くはモデル・芸能プロダクションのいち部門や子会社で、ホリプロは「ワンワンスカウトキャラバン」と銘打って、人間のアイドルと同様に、アイドル犬の発掘に乗り出しているほどだ。「私の愛犬を第2のくぅ~ちゃんに」と考える飼い主が続出しているのだ。

 ペットビジネスの負の側面といえば、テレビや雑誌などの撮影現場で、犬を過度に叱ったり殴ったりして、無理やり“演技”させているプロダクションの話をよく耳にするが、しかし、現在はそういった犬への虐待よりも、日本ペットモデル協会のようなしっかりとしたプロダクションとは別に、飼い主から金を搾り取る“悪徳アイドル犬ビジネス”が横行しているという。

「私の愛犬を登録した、ある動物プロダクションは、まず登録料として2万円ほどかかり、さらに、クライアントに見せるプロモーション用カタログの掲載料という名目で20万近い金額を請求されました。
飼い主が登録した犬の写真が数多く載っているカタログです。支払いを終えてしまうと、なんの音沙汰もなく、結局、ペットモデルの仕事なんて回ってきませんでした」と、あるペットオーナーは語る。

「わが子同然の愛犬の晴れ姿を見たい、世間に見てもらいたい」という飼い主の気持ちにつけ込んだ、アイドル犬ビジネスの落とし穴である。
(若松和樹/後編へ続く)

サイゾー 2008年 07月号


「アイドルビジネスの舞台裏」


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