「アプリで出会った」も隠さない 結婚式は「ありのままの人生を肯定する場」に
画像提供:リクルートマーケティングパートナーズ

「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」
今年4月に放送された結婚情報誌「ゼクシィ」のCMは、反響を呼んだ。
リクルートマーケティングパートナーズは18日、「ゼクシィ結婚トレンド調査2017」を発表し、首都圏「ゼクシィ」の平山彩子編集長とリクルートブライダル総研の鈴木直樹所長が記者会見を行った。
そこで最近の結婚式のトレンドについて両氏に話をうかがった。
「アプリで出会った」も隠さない 結婚式は「ありのままの人生を肯定する場」に
画像提供:リクルートマーケティングパートナーズ


多様化する社会で結婚式も大きく変化


同調査によると、挙式・披露宴・披露パーティー総額は354.8万円。親族ら招待客の減少が影響し、調査開始以来最高だった前年度と比べて4万9,000円減少。これについて、「結婚式は特別な消費で、あまり景気に左右されない。おもてなしをしたいという気持ちは変わっていない」(鈴木所長)。
ちなみに、最もお金をかけたのが「九州」で379万4,000円だった。

パーティーでは、「退屈させない」「感動させる」「自分らしさを表現する」などが減少し、「押しつけのない時間を招待客と共有したい気持ちに変化しつつある」と分析した。


ゼクシィの前述したCMは9割が好意的。そこで「どんな反響がありましたか」と質問すると「結婚するかしないかは自身の問題であると再提示しました。結婚の決断は、自由ですが、自分のタイミングでこの人を選んで幸福になれたということであらためてCMに共感した」という声があったという。
生き方、働き方も多様化していくなかで結婚式も大きく変化している。
「アプリで出会った」も隠さない 結婚式は「ありのままの人生を肯定する場」に
首都圏「ゼクシィ」の平山彩子編集長(左)とリクルートブライダル総研の鈴木直樹所長


結婚式はありのままのふたりを応援してもらう場に


調査結果の説明後、平山編集長が最近の取材や事例をもとに、全国的な結婚式の内容を説明した。
結婚式のトレンドは、昨年に引き続き「ありのまま婚」が主流。
平山編集長は、これを「続・ありのまま婚」と命名。
結婚式は、ありのままの今のふたりが背伸びすることなく結婚を誓い、大切な人たちに応援してもらう場に変化していることがポイント。

アンケートによると、結婚式は「ふたりの誓いを立てる場である」という問いでは、「思う」が2012年に84%であったのが2017年は86.1%。
結婚式は、「人生を振り返り、自分の生き方を再認識する場である」という問いには、2015年は、「思う」が63.9%であったのが、2017年には68.5%に上昇した。

結婚は以前は、一人前になるための通過儀礼、家族同士とのつながりを強める場という概念であったが、最近は個人的なものであるという思考が強まっていることがわかる。夫婦になることをお披露目するという意識ではなく、夫婦としてのふたりらしい姿を感じてもらう場に変化している。


誓いの言葉で「整理整頓をしっかりします」


「続・ありのまま婚」のキーワードは、「ことば」「見ため」「足跡」と3つある。

「ことば」は形式にとらわれずふたりのありのままでメッセージを発信する。
少し前は、キリスト教の教会でふたりは「愛を永遠に誓いますか」と神に誓う形式が多かったが、最近のトレンドは「人前式」。招待客に向け、愛を誓う。ふたりは誓いの言葉を述べるが、アドリブも多いという。「ことばも形式にとらわれずありのまま発信するケースが増えています。そのメッセージに対して出席者もアドリブで応援の言葉を寄せることが多いですよ」(平山編集長)
夫からそして妻から何を約束するか。テンプレートの言葉を使わず、思いつくままの言葉が増えてきている。

例えば新婦が新郎に誓う言葉として、「苦手な整理整頓もしっかりします。尊敬する夫を一生懸命サポートします」などがその一例だ。ことばには新郎新婦の人となりが表われる。


Gジャンを着る花嫁も


2番目は「見ため」。ふたりらしさはさらに表現の幅が広がっている。装飾に風船などを使い、参加者もラフな格好が増えた。運動靴で出席する招待客もいるという。
「Gジャンを着る花嫁もいますよ」(平山編集長)。写真についてもこだわりを持つ新郎新婦も増え、しっかりとシーンを考え、別撮りの実施率も向上しているという。
式全体も形式よりも自分らしさを表わしている。


「アプリで出会った」隠さず発表


最後に「足跡」だ。
結婚式は、「人生を振り返る場」であり、「ありのままの人生を肯定する再確認する場」でもある。写真にあるように「新郎の職場である駅での結婚式」あるいは、「生まれ育った島での披露宴」を行い、島のすばらしさを招待客みなで共有し、さらには卒業した大学での結婚式も増えている。
「アプリで出会った」も隠さない 結婚式は「ありのままの人生を肯定する場」に
画像提供:リクルートマーケティングパートナーズ

もう一つ驚きなのは、たとえば以前は、「合コンで出会った」としてもそこは内緒にして、「友人の紹介」に話を差し替えていたことも多かったが、最近では、せきららに「アプリでの出会い」も隠さなくなった。

余興の演出としてフラッシュモブもあるが、バンドが好きな新郎新婦はバンド仲間と組んで、自分でボーカルを行い、会場全体で演出し、愛を誓うケースもある。
そこで、20代~30代の結婚観について平山編集長に質問したが、「それも一概には言えません」というほど多様化している。
「アプリで出会った」も隠さない 結婚式は「ありのままの人生を肯定する場」に
画像提供:リクルートマーケティングパートナーズ

しかも、それぞれの価値観で生きており、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)により、コミュニティーの量が増え、時間の使い方に変化がある。「SNSはまさにありのままを表現する場ですね」(平山編集長)
コミュニティーには家族、友達もいるが友達もより細分化している。そのため、結婚式・披露宴も細分化しているのが実情。「一例ですが家族のみの披露宴後に招待客全員での挙式をして、その後に友人との披露宴を実施する二部制をされる新郎新婦もおります」(平山編集長)


婚姻届提出後に行う「届け出挙式」も


さらに最近では、ゼクシィ協力のもと、「届け出挙式」という聞き慣れない結婚式の形態も登場した。婚姻届提出後、役所内のホールや議場で10分程度の簡単なプチ挙式を行うもの。今年の11月22日(いい夫婦の日)に「届け出挙式」を横須賀市、八王子市、越谷市で実施する。
『届け出挙式』は一組でも多くの夫婦に誓いの場を持ってもらいたいという思いから始めた取り組みで、授かり婚など結婚式を行うことが容易でないカップルも、気軽に夫婦の誓いの場を持つことが可能。また、ブーケやベールなど必要なアイテムは自治体が用意するため、準備も不要となる。
自治体にとっては、住民サービスの拡充だけでなく、役所がふたりにとって大事な場所となり愛着が増すというメリットが見込める。また、流入や定住促進の活動の一つとして『届け出挙式』に取り組んでいるという。

これからの結婚式については、「今研究をしているところなので、はっきりとした数字は出せませんが」と前置きしたが「もっとありのままに、もっと可能性が広がります」(平山編集長)。ポスト「続・ありのまま婚」は世代や時間を超えてより自由度が広がっていくのだろう。
(長井雄一朗)