女優・真木よう子さんの「コミックマーケット93」参加騒動、なんだか関係者も外野も誰もが妙にぐったりしてしまう一件だった。真木さんを焚きつけたとされる“黒幕”が実在するのかもわからず、ただ「嫌な事件だったね」としか言えない……。


人気女優の参加はコミケに混乱もたらす?


真木よう子「コミケ騒動」は何だったのか お粗末な“黒幕”探しで議論消し飛ぶ

真木さんは8月25日、出版社を通さず自由にフォトマガジンを制作するとして、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」に目標金額を800万円に設定した支援募集ページを立ち上げた。東京ビッグサイトにて今冬開催される同人誌即売会「コミックマーケット93」に参加し、自身が完成品を手売りする予定だった。

しかし、“芸能人”が“自分の写真集”を“支援金を募って”コミケで販売するということで、ネット上では「コミケでやる必要がない」という批判が噴出した。しかもコミケといえば、開催期間中の来場者はのべ50万人にも達する大規模イベント。真木さんとそのファンたちがコミケのマナーをどれだけ把握できているのかも不明だったため、会場にいたずらに混乱をもたらすのではないかと不安がる声も多く上がった。

昨冬「コミケ」に初参加した叶姉妹が歓迎を持って受け入れられたのは、初期段階で「郷に入っては郷に従う」というリスペクトの姿勢を明確に示した部分が大きかった。その点、真木さんの参加表明は、「本当にコミケを理解した上で言っているのか?」と疑問に思わせる雰囲気があった。


コミケは公式サイトにて、その理念を「すべての表現者を許容」「一人でも多くの表現者を受け入れる事を目標とする」と掲げている。とはいえ、「継続を最大の役割として行動する」とも明記されているため、ネット上の議論は、人気女優のコミケ参加によって起こりうるトラブルを想定した上で、コミケの理念のうち前者と後者、どちらを優先させるべきかという様相を帯びてきた。


お粗末な“黒幕”探し勃発


結局真木さんは批判を受けて、8月28日にコミケ参加を中止すると宣言。ネット上では、また「純粋にコミケに興味を抱いていた人間を“老害”たちが排斥した形ではないか」とコミケの在り方について意見が上がったが、騒動はその後思いもよらない方向に発展していった。真木さんがTwitterのアカウント名を「????騙された????」という意味深長なものに変更して非公開設定にした後、アカウント自体を削除してしまったのだ。また同月30日には、フォトマガジンの制作自体が中止されることが決まった。

真木さんがプロジェクトについて何者かに相談しているようなDMのキャプチャ画像も出回り(もちろん真偽不明)、真木さんを焚きつけた“黒幕”がいるらしいと今度は新たな騒ぎが勃発。
フォトマガジンに関する作業を請け負っており、黒幕と噂された編集者の北尾修一さん、「CAMPFIRE」代表者の家入一真さん、カメラマンの鈴木心さんが次々とコメントを発表する事態へと発展していった。

しかし、もともとの噂が曖昧な内容だったためか、どのコメントも「『真木さんからこのように作業を依頼された』とあらためて経緯説明することしかできない」というような印象を与えるものばかり。本当に彼らが真木さんから作業をただ依頼されただけなら、来たオファーを受けただけなのに急に黒幕扱いされて本当に不憫だ……。


あの議論はどこへ行ってしまったの?


一連の騒動は、ネット上の議論が単なる噂話、陰口に変わる瞬間を見せてくれたように感じる。初期段階での「真木さんのコミケ参加を受け入れるべきか? 否か?」を論じ合っていた頃は、「アニメ・漫画に関係ない制作物はコミケにふさわしくない」のような事実誤認に基づく意見も少なくなかったものの(コミケではアニメ・漫画・コスプレ以外をテーマとした同人誌、もちろん写真集も頒布されている)、大枠としては“議論”の体をなしていた。

しかし、真木さんがTwitterアカウント名を変更して、真偽不明のDM画像が出回ってからは、100%憶測だけがネット上を飛び交った。
そして、大勢が噂に振り回されて、何もかも不明なまま騒動は風化しつつある。

あれだけ活気づいていたのに収束してしまった「すべての表現者を許容すること/継続すること、コミケの理念どちらを優先するべきか?」という議論は、芸能人のコミケ参加が当たり前になってきた中で、引き続き議論されるべきテーマだとは思うが……。いかんせん噂に振り回されて、みんなすっかりぐったりしてしまった。最後は憶測に右往左往させられていただけで、この話題に関わった全員に何も残らなかったという印象のある一件なのだった。
(HEW)