淡いピンクのスーツに、ピンクのハットをかぶった男がオープンカーの運転席に飛び乗る。銃で狙われている彼は、車を飛ばして逃げたものの、行き止まり……。
このピンチ、どう乗り越える?
SMAPライブDVDレビュー年末までに完走企画スタート、こころに刻みます
異例のツアー中の発売となったDVD。会場に行けない人にもライブ感を味わってもらおうというSMAPならではのやさしさかも。

車で壁を突き破って現れたのはSMAPの中居正広。
2014年に行われたSMAPライブツアー「Mr.S “saikou de saikou no CONCERT TOUR”」のオープニングの登場シーンだ。映像と連動したイリュージョンのような登場に、会場は盛り上がっていた。

最高だよ!「Mr.S “saikou de saikou no CONCERT TOUR”」



SMAPのライブDVD「Mr.S “saikou de saikou no CONCERT TOUR”」は2014年9月4日〜2015年1月12日に渡って行われたツアーの、9月12日に京セラドーム大阪で行われたライブを収録したもの。
100万人動員の5大ドームツアーと、この規模でコンサートができるアーティストはほんの一握り。改めてSMAPの人気の高さを思い知らされる。そして、ツアー中にも関わらずライブDVDが発売されたのは珍しいこと。
ブルーレイ盤もあるのが嬉しい。

映像は開演前の客席からスタートする。アリーナ席の真上を移動するカメラに手を振るファンの姿。そこには、若い女性から親子連れ、ファン歴が長いであろうご婦人たち、奥さんと一緒に参戦するお父さんの姿もあった。ざっと見ただけでもファン層の幅広さがわかる。
時々映るのが、うつむいた姿の中居のうちわ。
公式グッズなのにあえて正面を向かないところが彼らしい。照明が落ちると、会場中には「S」の文字が浮かび上がる。今回のペンライトは「S」の形をしている。

トランペットの演奏でライブが始まる。まるでジャズのコンサートのような、オトナの雰囲気が漂う。
中居に続いて登場したのが稲垣。
白地のストライプのスーツで、外国人女性をベッドに押し倒したところまでは良かったが、今度は窓からヘリコプターで狙われる。この人たち、一体何をしたのだろうか……。
気がつけばステージにベッドが現れ、そこからシーツを振り払うようにして登場したゴローちゃん。4人の女性ダンサーに囲まれていてエロカッコいい!

続いて草なぎ。「任侠ヘルパー」のようなキリッとした役者の顔つきで、本物のバイクに乗って登場。香取はダストボックスから現れ、シャンパンボトルを持ち、千鳥足で敵をかわしながらメインステージへと歩いていった。
木村はシャワーを浴びるシーンから。上半身はだかで、腰にタオルを巻いた姿で敵と戦った。最後は女性の肩を抱き、片手で銃を連射して「やっつけちゃいました」といわんばかりの笑顔を見せて去っていった。倒れそうなほど眩しくてカッコいい……。
SMAPは全員スタイルが良くて、ダンスにもキレがあって、とてもアラフォー男性とは思えない。

スーツに着替えた5人が揃い、いよいよ本編のはじまり!と思いきや、そう簡単には見せてくれないSMAP。
会場からは「えーーー!」と驚きの声が漏れる仕掛けがあった。演出を担当している香取を筆頭に、20年以上に渡って磨きあげてきたステージは、簡単に想像がつくようなものではなかった。

最高で最高のSMAP、振り切ったソロステージが面白い



SMAPの他には、男女混合30名ほどのプロダンサーとバンドメンバーがいて、若手グループとはまたひと味違う雰囲気。セットリストも、はじめから飛ばしすぎず、適度なゆとりがある。若手ならば10曲くらいをぶっ続けで歌うところを、SMAPは5曲を終えたところで映像が流れた。

東京ドーム公演の初日に入ったときも、映像が流れると立って見ている人もいれば着席の人、椅子を折り畳んだままちょこんと腰掛ける人と様々。長時間立ちっぱなしにならず体が楽だった。
これもSMAPなりの配慮ではないだろうかと勝手に解釈して愛情を感じていた。

映像では、明石家さんまが登場して指令を下したり、毎回違うゲストと中継を繋いだりと、ステージ進行もユニーク。東京ドームでは、ドラマ「HERO」で木村と共演中の北川景子が登場した。DVDにはKis-My-Ft2が登場する。

SMAPが歌う曲を、ファンの声援の音量で決めるコーナーもあった。中居のソロパートからはじまる『君色思い』(1994年1月)に決まると中居は、「俺、歌わないといけないじゃない」と、ごにょごにょ。
中居が顔を斜めにして歌いだすと、木村が「OK、OK」と頷きながら聞いていたのが印象的。こういう細かい表情を逃さず捉えて、DVDに収録してくれる編集スタッフさんに感謝!

コントもあれば、ファンと一緒につくるステージも



会場をまわるトロッコでは、2人と3人に分かれて乗っても良さそうなのに、小さめのトロッコに5人一緒に乗り込む。どんだけ仲がいいんだ!
草なぎのソロパートの時にはみんながマイクを向けるいたずらで、笑って歌えなくなる草なぎ。ファンに手を振りながら楽しそうに会場を回るSMAP。至るところでカワイイ5人の姿が見られる。

ソロステージも「SMAP×SMAP」のコントで演じたキャラをはじめ、懐かしいキャラ登場した。木村はホストのヒカル、稲垣はCCBゴロー、香取の慎吾ママは『おはロック』で盛り上がった。草なぎはドラマ「独身貴族」の役をそのまま演じ、結婚できない理由をメンバーから募る自虐ネタを。中居は「するめさん」という男性アイドルオタクのおじさんに扮して、KinKi Kidsのうちわなどを披露した。カッコいいライブあり、笑えるコントあり、SMAPのコンサートはバラエティに富んでいて濃い。

セットリストも、宮藤官九郎作詞の『BANG!BANG!バカンス!』(2005年7月)の次に、当時の最新シングル『Amazing Discovery』を持ってきて、10年の年月をひょいと飛び越えてしまうところもおもしろい。

雑誌のインタビューで木村は、
「今回は、歌割りが大胆だなと思いましたね。目まぐるしく入れ替わり立ち替わりっていうのではなく、個人部屋に入って行くような歌割りで」
(オリスタ/2014年9月15日号)
その言葉どおり、5人のソロパートで成り立つ『好きよ』は、みどころの一つ。普段から歌が下手なキャラを貫いている中居。彼の歌声が聞けるのもライブならでは。それに、自分で言うほど下手じゃないところがずるい。

『SHAKE』では、抽選で選ばれたファンがステージにあがりSMAPと一緒に歌った。相手が誰だろうと、両手を広げて待っていてくれるような懐の深いSMAPらしい企画。大人から子どもまで、一緒に歌える曲があるのもSMAPの魅力だ。小さな子どもが、ペンライトを持って応援している姿には涙が出てくる。

SMAPの武器は「歌」だと稲垣。
「やっぱりいい歌を歌っていないとここまで来ることはできなかった」
(オリスタ/2014年12月22日号)
10年、20年経っても古びない楽曲と、SMAPのエネルギッシュなパフォーマンスがライブにはぎっしり詰め込まれている。

アルバム「Mr.S」リリース…2014年SMAPの挑戦



ツアーのベースになった21作目のアルバム「Mr.S」は、2014年9月3日リリース。オリコン初登場1位を獲得した。

振り返ってみれば、年頭から挑戦の連続だった2014年。
香取やジャニーズの後輩が出演した「YOUコントしちゃなよ」(フジテレビ系)は、初めての試みで、翌年は放送がなかったのでかなり貴重な番組となった。放送前に生中継していたジャニーズカウントダウンコンサートに香取が少しだけ登場したのも嬉しかった。
「テレ朝SMAPバラエティ部スマシプ!」では、初心に戻るために中居が一日ジャニーズJr.として、小さなJr.たちからサポートを受けながらKis-My-Ft2のバックダンサーを務めた。ドラマも充実していて、木村は「HIRO」、草なぎは「独身貴族」、香取は「SMOKING GUN〜決定的証拠〜」に出演した。

2014年印象的だったことについて中居は、
「SMAPとしての新しいチャレンジは、昨年なら“5人旅”、今年は“27時間”だったかなと思います」
(オリスタ2014年12月22日号)
2014年7月26〜27日に放送された「武器はテレビ。 SMAP×FNS 27時間テレビ」を挙げている。27時間の生放送というだけでも大変な仕事なのに、体をはったコーナーも多かった。それにも関わらず、ラストにノンストップライブをもってきたのは挑戦そのものだった。

印象に残ったことについて、
木村「ノンストップライヴが終わった瞬間、メンバーと素直に肩が組めたことかな」
稲垣「森(且行)くんの手紙もびっくりしましたし」
(オリスタ/2014年9月15日号)
ライブ終了後は、フジテレビ社屋まで歩いて移動した5人。その道中では、元メンバーである森且行からの手紙が読まれた。
これまでも度々森の話題が出たことはあったけど、ここまで大々的な露出は初めてだった。もしいつか「ビストロSMAP」が最終回を迎える日が来てしまうならば、最後のゲストに森くんを招いてはどうだろう。

このライブを通して草なぎは、
「長い時間を共有してこないと生まれない空気感。時間が作ってくれる距離感で、想像を超えたチームワークだったり、絆だったりを作ってきたことが、あらためて感じられて嬉しかったです」(オリスタ/2014年12月22日号)

不仲説が囁かれるのは今に始まったことじゃないけれど、番組企画の5人旅をはじめ、テレビやラジオ、ライブ、映像を通して伝わってくるSMAP5人の関係は“想像を超えた関係”という言葉が一番しっくりくる。

SMAPの武器は?という質問に中居は、こう答えた。
「SMAPが5人でいること。それが最大の武器じゃないですかね。1人ずつよりも5人でいること、それが最大の戦力であり、最大の自信になる」

(柚月裕実)

【SMAPライブDVDレビュー企画】
2016年8月14日未明に、突然伝えられたSMAPの解散。様々な記事が飛び交うなか、ジャニーズファンのライターとして、何かできることはないかと思い、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
これまでSMAPが見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。手元にない作品もあり、完走できるかどうかはわかりませんが、年末までお付き合いいただけると嬉しいです。