連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第26週「グッバイ、ナミダクン」第152回 9月26日(火)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出: 黒崎 博
「ひよっこ」152話。漫画家コンビがついに描いたヒット作、未来から来たたぬき型ロボット
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」152話はこんな話


みね子(有村架純)たちが裏天広場でお茶パーティーをやっていると、早苗(シシド・カフカ)に待ち人がやって来た。

残ったり、旅立ったり


お茶パーティーの出席者は、向かって左から愛子(和久井映見)、みね子、世津子(菅野美穂)、早苗、富(白石加代子)、新田(岡山天音)、坪内(浅香航大)。
新田と坪内がハケてから(この話はあとで触れる)、世津子(菅野美穂)が、しみじみ、こういう場所が欲しかったと言う。

なんでも話せて一緒にごはんを食べる、こういう場所が欲しかった。雨男(沢村一樹)との時間がそうだった、と。
スターとして、華やかで大きな仕事をしていても、心は満たされず、結局は、気の置けない仲間とのささやかなおしゃべりや食事に価値を見出す世津子だったが、でもそろそろ女優に戻ろうとも考えていた。
いよいよ世津子が、アパートから出ていく時が来た、と覚悟を決めるみね子たちだったが、世津子は意外にも
「まだいてもいいかなここに」と言いだす。
スターとしての大きな仕事と、ささやかな日常。世津子は、どっちも手に入れるようだ。


そこへ、ふいに、早苗を「迎えに来た」という男・片岡龍二が現れる。
早苗の過去のおとぎ話のような恋バナに登場した人物だ。
知る人ぞ知るバンド ザ・コレクターズのギタリスト・古市コータローが演じることで、一瞬の登場の中で、ミュージシャン感を醸す。役の設定は、確か、ドラマー。

12年前に25歳くらいと早苗が言っていたけど、古市、50代である。30代の俳優で適当な人物がいなかったのか。
それとも早苗の勘違いだったのだろうか。なにしろ、エレベーターの中で数時間一緒に過ごしただけの相手である。
そのへんは、劇的なことが起こるときにお馴染みの「衝動」という劇伴がかかることで有耶無耶になり、早苗は男の胸に飛び込む。
あのときの約束を律儀に信じて待っていた早苗は、喜々として、男と一緒に“花のサンフランシスコ”へ旅立った。
唐突な展開ながら、シシド・カフカがそれまで見たことのないじつに嬉しそうな笑顔を見せていた。もう笑うしかない感じだろうか。


まったく余談ではあるが、次の朝ドラ「わろてんか」の制作統括・後藤高久は、かつて、「つばさ」(09年)のファンミーティングで、「だいたい朝ドラっていうのは ネタがなくなってくると いきなり、なんでこれとこれがくっつくんだってことが出てきて・・・」と語り、観客を笑わせていた(DVD6巻に収録されている)。
あくまで余談である。

漫画のテコ入れが成功


ティーパーティーに参加した漫画家たちは、漫画の主人公のみね子を宇宙人か未来からやって来たロボットの女の子にしたらいいんじゃないかと、編集者に言われたと報告。
「大切な仲間を悪く言われた気がして」気が引けるという新田と坪内に、みね子は、「私は谷田部みね子としてとっても幸せに生きてる」と余裕をかます。そりゃあもう、いま、みね子はささやかな幸せに満たされている。

みね子が、宇宙人より未来人のほうがいいと言って、漫画家たちが描いた、猫型ならぬ、たぬき型ロボット・ミネッコの漫画はヒットする。

ミネッコは145(ひよっこ)号で、たぬきでひよこなのだった。
未来から来た猫型だったら、未猫だったのに。

50年後の未来、2017年は、どうなっているのか、とひとしきり想像するみんな(みね子は70歳)。
猫型ロボットのアニメがいまだに放送されている現実の2017年は、元号は平成29年にもなっていて、車も飛ばず、月旅行もまだ遠い。金利はないに等しく、東電や東芝の株がだだ下がっているなんて、思いもしないであろう。
ただ、漫画家がお参りしていった、すずふり稲荷のモデルの鈴振稲荷は赤坂にひっそり残っている(夜、近づくと点灯し近代化されている)。

(木俣冬)