「英語には『肩こり』という言葉がないから、英語圏の人は肩がこらない」

そんなうわさを聞いたことがある。言葉が身体感覚を誘導するという話だ。
おもしろいけど、本当にそんなことってあるのだろうか? アメリカで4年間働いていた日本人女性マッサージ師の田中さんに話を聞くことができた。
アメリカ人は「肩がこらない」って本当か

「ディスエリア、タイト!」


──英語には肩こりという言葉がないから肩がこらない、って話があるんですが本当ですか?

田中  そんなことはないですよ。すごくこっています。肩を指さして「タイト! ディスエリア、タイト!」 っていいますね。

たしかに英語で「肩こり」っていう言葉はないですけど、ちゃんと認識はしてますよ!

──アメリカ人は骨格がいいし肩の筋肉が発達しているから、肩こりになりにくい、なんて話も聞いたことありますけど

田中  そんなことないです。私の印象だと日本人よりもこっていますね。筋肉は大きいんですけども、その大きい筋肉が全部ガチガチになっているって感じです。
正直、疲れるし指が痛くなるんですが 「プリーズ、モア、プレッシャー!」 ってどんどんリクエストしてくるんです。

日本式のマッサージは大好評


──アメリカのマッサージってどんなかんじですか? 日本でやっているやつとは違う?

田中  オイルをつけて軽くさするような、アロママッサージが主流ですね。日本でアロママッサージっていうと女性向けのものですが、男性もふつうに行きます。
カイロプラクティックは医療として行われているので、日本のカイロよりもずっと信頼されています。事故もあるみたいですけど……。
鍼ははやってませんね。

日本式の「指圧マッサージ」はアメリカでは珍しくてすごく喜ばれます。身体を圧すって文化がないみたいです。最初は一圧しごとに「オウ」っていうんですが、慣れてくると「プリーズモアプレッシャー」ですね。向こうの人はハッキリしているんで力が弱いと途中でもチェンジさせられたりします。

──アメリカで仕事するのって大変そうですね

田中  日本で働くよりもいいですよ。日本ではマッサージ師に対してなにもいわないけど、異常に厳しい感じですよね。
施術を受けに来ているのに、明らかにバカにしているような人もいますし。
料金もアメリカだと1時間74ドルとれました。さらにチップの文化があるんでもっともらえますね。最大で30ドルもらったこともあります。日本で働くよりずっといいですよ。サービス残業もありませんし。



意外と欧米で日本人が現地人向けにマッサージをしているケースは多いようだ。カナダやスペインなどでも日本の指圧師が活躍していたりする。現地でもSHIATSUと呼ばれているくらいだ。それにしても日本にマッサージ店は多すぎる。海外にもちゃんと肩こりがあるのなら、そっちで仕事した方がいいかもしれない。
(斎藤充博 イラストも)