就職活動で、「趣味は読書」ではダメなのだ。
なぜダメなのだろうか?
就活で「趣味は読書」ではダメな理由
『趣味は読書』ちくま文庫/斎藤美奈子

「「趣味は読書」じゃダメですか。」という匿名記事が話題を呼んだ。


“就活をする上で、趣味欄に読書と書くなと何度も就職課の人間に言われた”のだが、本当に読書が趣味なんだからいいじゃないか。というのが主眼だ。

“自分がどのくらいの本を読んだのか正確にはわからないが、同年代ではトップクラスじゃないかと思う。
金銭の多寡だけが偉さを決める数値ではないと思うが、趣味にこれだけのお金をつぎ込む人もそう多くはないだろう。
だから胸を張って「読書が趣味です」と書くわけだ。”

ところが、面接に行くとまず鼻で笑われる

本を読むしかすることがないのかとバカにされる。たくさん読むことがエラいわけじゃないんだよと諭される。”
そして、
“ここで冷静に、「いえ、そうではないんです、私は本当に本を読むことが好きで、、、」と、上述のようなことを説明したとしても、
「趣味は読書」にマイナスのバイアスがかかっているせいか、きちんと聞いてくれる人事の人間はあまり多くない。”

「なぜダメなのか?

面接の時に「趣味は?」と聞く意図をつかめていないからだ。
「趣味」は、道楽に近い意味に使われることもある。
だが、こういうケースでは「技能の必要なもので本職以外のこと」の意味で使われる。

HOBBYのニュアンスだ。
楽器演奏とか園芸とか映画撮影はHOBBYだが、読書や映画鑑賞はHOBBYではない。
面接時の「趣味は?」の場合、こちらの意図だ。
つまり、「本職以外で他になにか技能を持っていますか?」と問われているのだ。
そこで、あなたの道楽を答えてはいけない
ましてや、それに多大な額を費やしているとなれば、なおさらダメだ。

こいつ専門的な技能を問うたのに、自分の道楽を喜々として答え、あまつさえ浪費してることを自白したぞ。
これで印象のよくなる会社面接は、いまの日本ではなかなか難しいだろう(あれば、ぜひ、ぼくも就職したい)。

つまり就活では、「その趣味で、どういう技能を身につけましたか?」という質問に答えられる「趣味」を答えるべきだ。
もちろん読書でも専門技能を身につけることが可能だろう。
ならば専門技能を先に答えたほうがスムーズだ。その手段として読書が有効だったことはあとからアピールすればいい。


「趣味は登山です」の場合は、具体的に気象知識やクライミング技術などを習得している可能性があるので、続けてそういう質問ができる。回答者がその技能を持っているか計れるので問答として成り立つ。

ところが「趣味は読書です」と答えでは問答として成り立ちにくい。
「それでどういう技術を身につけたの?」と問うて、量しかアピールして来ない場合は、それ以上の碌な返答は期待できない。
“ここで冷静に、「いえ、そうではないんです、私は本当に本を読むことが好きで、、、」”と答えられても困る。本当に好きかどうかを問うてるのではない。

「表現力や日本語の豊かさを学びました」と答えられても、計りようがない。
せめて「読書日記をつけていて、持ってきています」と言って、それを見せる。ぐらいの具体的な表現力を示してくれなければ、どうしようもない。
「趣味は人間観察です」という答えがうんざりされるのと同じだ。

かつてお見合いの時に、わたしは平凡な人間なのです、というメッセージとして「趣味は読書です」「趣味は映画鑑賞です」というフレーズが使われた。
読書家なら、それぐらいのことを知っていてもおかしくないし、知っているなら、就活の場面で、そういったメッセージを含むクリシェは使わないだろう。
(斎藤美奈子『趣味は読書。』を読もう!)

ぼくは、会社で面接官をやっていた。
「趣味は読書です」と答える人に「好きな本のタイトルを5つあげて」と聞くと、ほとんどがまともに答えられなかった。
「ええーと、『探偵ガリレオ』『容疑者Xの献身』
「あと3冊は?」
『白夜行』『秘密』と」
「ラスト1冊」
「うーん、もうありません」
って、たんなる東野圭吾ファンじゃーん、しかも中途半端じゃーん。
まあ、これならまだ良いほうなのだ。
「ジャンプと、雑誌と、新聞をときどき読みます」
って、たんなる喫茶店に入りびっだってる暇なオヤジじゃーん。
まあ、小さい会社だとそんなこともあるのだ。

「趣味は読書」は、マイナスではない。
だが、
ほんとうに「趣味が読書」であるならば、就活の時に趣味を問われたら「読書」と答えるのはトンチンカンだと気づくぐらいの読解力は持っていてほしい
(米光一成)