6月24日に開催されたイベント「前田日明の水曜会」。壇上にいるKAMINOGE井上編集長の表情はかなり険しくなりつつあり、キナ臭さを感じさせます。(part2
一方の前田日明、プロレスへの愛情を隠さず語り始めました。
part1
part2

――ゴッチさんの話もありましたが、やっぱり前田さんへの影響は相当なものですか?
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

前田 なんだかんだでプロレスって一時的には、世界のプロスポーツの中で最もお金が集まる競技だったんですよ。お金が集まりやすいところには、優秀な人間が集まるんですね。プロレスは1980年代くらいまでは隆盛を誇っていて。それを象徴する話として、長嶋茂雄さんが巨人軍と300万円で契約した時にジャイアント馬場さんは「えっ、長嶋ってそんなはした金で契約したの?」と言ったんですよ。プロレスって、そのくらいお金が集まったんです。のちのち、自分はリングスで年12回の大会を開いていました。自分が経験した新日本プロレスっていうと、年180~230試合。当時の猪木さんや馬場さんを考えると「一体あの2人、いくらお金儲けたの?」って感じですね。そういうお金が集まってくるところには、優秀な才能やとんでもないバケモンみたいなのがいっぱい集まってくる。で、ゴッチさんが藤原組のコーチで船木をマンツーマンでコーチして。船木と再会した時にどんなトレーニングしてたか聞いたら「いやぁ、大変でしたよ。毎日、道場へ行く車の中で『今日は逃げよう、明日は逃げよう』と思いながら行ってました」。その練習内容は、向い合ってマンツーマンで全種目をゴッチさんと一緒にやる。その時のゴッチさんって、70代ですよ。そんな人がスクワット2000回から始まるメニューで、毎日みっちりやる。ゴッチさんのスクワットって、綺麗にお尻が床に付くか付かないかまで下ろし、尚且つ反動も使わずにちゃんと上げる。そんなゴッチさんみたいなレスラー、1950~1960年代にはいっぱいいたんですよ。俺が知ってるだけでジョージ・ゴーディエンコ、ダニー・ホッジ、ルー・テーズもそうですし。ちゃんと実力を持った、プロレス黄金期の怪物的な選手は凄かったですね。
――井上さんから見て、この本はいかがですか?
井上 いただいていて、まだ読んでなかったんですけども。「前田さんの全てを記しておきたい」ということなんですが、例えば「プロレスはフェイクで前田さんだけが正しい」みたいな論調だと、かなり片手落ちなんじゃないかなと思いました。もっと前田さんのプロレスに対する愛情ですとか、そういった部分も続編では触れていただけるといいかな……と、ちょっと思いました。
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

――塩澤さん、どうですかその辺?
塩澤 どうなんですかね。「『プロレスラーでいたい』と思ったことは一度もなかった」って、前田さん言ったよね? それは、“生きることの苦しみそのもの”みたいに受け取って。「好きにはなれないけどやらざるをえなかった」という位置付けで前田さんの中にあったんじゃないかって。逆に言うとそれがあったから、徐々にプロレスの中にルールを持ち込んでスポーツにしていこうとした。日常を愛する意味でプロレスを愛するってことはあるかと思うんだけど、やっぱり理念としてはそこでは生きていなかったんじゃないかなという気がするんだけど、どうなんだろう?
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

前田 自分は、自分が新弟子として育った新日本プロレスはすごい好きなんですよ。前座には、プロレスなのかケンカなのかわからないような試合はいっぱいあるんですね。自分が本当にプロレス団体やるんだったら、マッチメイク引っくり返っても文句は言わないプロレスをやりますけどね。猪木さんも小鉄さんも、マッチメイク引っくり返っても何にも言わなかったと思うんですよね。後にブッカーが坂口さんに替わったあとに新日本プロレスが色々変わっていって。自分自身は新日本プロレスにいましたけど、自分がプロレスラーだという意識はあまり無かったですね。ただ、新日本プロレスにいた人たちを家族のように思っていました。だから、あの頃の新日本プロレスに対してはすごい愛情があるんですね。
井上 前田さんは「スポーツとして」「格闘技として」とは別に、「とにかくみんな食おうよ」っていう。そこが、すごく頭にあったと思うんですね。理想を追い求めるだけではなく、みんなで飯を食えなければいけないんだという。その中で、理想と現実の狭間じゃないですけど、そういった部分が前田さんの中で大きくて。何て言ったらいいんですかね……
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

前田 いや、その通りですよ。飯が食えなきゃ、どうにもならんですね。UWF(旧UWF)が結局うまくいかなくなり解散となった時、今いるUWFの仲間に働きながらプロレスを続けていく気持ちは無いだろうなと思ったんで、自分がいる居心地のいい場所を何とか守るためにどうしたらいいか? 理想だけでは食えないんでね。
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

塩澤 その話の補足をすると、新間さんが中心になって作ったユニバーサルプロレスは佐山さんが参加することで話題になったんだけど、ある時、前田さんは佐山さんを制裁するっていうか、試合で“やる”わけですよ。その背景にはね、佐山さんが理想に走って、佐山さん自身は他に色んなことをやってて心配はないけど、他の人達はUWFのあがりで生活してる。その人達が、月に一回しか試合がないのはやっていけないだろうという話で「やっちゃってください」って言われてやったっていう。もちろんプロレスもそうなんだけど、彼にとって一番大事なのは家族のように一緒に生きることのできる仲間っていうのかな。それを長い間かけて一生懸命育てようとしたんじゃないか。それが、2度目のUWFになっていったっていうね。新日に合流した後、苦労しながら一生懸命下味を作って大ブームを作り出すんだけど。でも周りの人たちが、前田さんの考えていたことに付いてきてくれなかったっていうか。どうも話を調べると、前田さんがオランダの人たちと本格的な、もっと過激なところに入り込もうとしているのをわかってて、「付き合えない!」というか。それの中心になったのは、Tさんだと思うんですが……。
井上 Tさんって、誰(怒)!?
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

塩澤 (無視して)だんだん、心が離れていったっていうことだと思うんですよ。僕が思っているのは、プロレスが好きとか嫌いっていうより、プロレスラーとして一生懸命やってる人たちと一緒に生きていたい。そういうプロレスを愛したかったんじゃないかなって。だから愛憎半ばみたいなところがあるんじゃないかな、っていう風には思ってるんですよね。
――前田さん、いかがでしょうか。
前田 みんなで飯を食えるように。藤原さんと木戸さんに話を聞いたところ「新日本に行くのは絶対嫌だ」ということだったんで馬場さんのところに行ったら「ウチには維新軍も来て、パンパン状態。若い前田君と高田君だけだったら、面倒見てあげてもいいよ」って言われたんですけど。それを藤原さんと木戸さんに言ったら、2人はショックだったみたいで。すごいプライドがありますし、グッドワーカーと言われてる自負がありますし。だから、藤原さんに「食ってくために新日本プロレスに行きましょうよ」って言って。で、行ったらば業務提携という形になりましたね。

そんなこんなで、妙に心に掻き傷を残した状態でトークライブはお開きの時間に……。逆に、ハートに残る貴重な機会だったのではないでしょうか。


その後、続けざまに開催されたのは「前田日明私物限定品オークション」! 今回出品されたのは、以下の4品です。
・カレリン戦前、練習に励むシアトルで着ていたナイキのベンチコート
・前十字靭帯を損傷した際、病院で着けていた膝ギブス
・ヨーロッパから凱旋した時、美空ひばりのバックバンドを務めていた人が作ってくれたジュラルミンケース。
・サバゲー用のケースが2種
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

この日は、何と言ってもジュラルミンケースが一番の人気を誇っていました。競りが始まるや、会場中から声が上がる上がる! 結果、このケースは8万円で落札されています。
井上 これ、ヤフオクだと10万は行きますよ!?
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

しかし個人的には、断然ギブスが注目の品だったなぁ。こちらは、絶妙のタイミング(?)でご自身も脚を負傷中のファンが落札しています。
前田 これ、1点ものですよ。当時の脚のサイズに合わせて(笑)。
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

その後は書籍購入者へのサイン会、そして前田がファンに混じってお酒を飲み交わす二次会が開かれました。

見てください。前田日明が客席に足を運び、全員と乾杯を交わすなんて大サービスまで敢行しているじゃないですか!
前田日明「新日本プロレスの人たちを家族のように思っていた」

そういえばつい数日前にはリングスのニコ生チャンネルが開設されているし、前田日明とファンの交流はいよいよ活性化されていく模様。
「釣り大会、サバゲー大会、餅つき大会……、何でもやりたいと思いますね。あと刀剣鑑定のセミナーを持ってもいいなと思いますね」(前田)
なるほど。前田日明の趣味の世界をファンと共有するイベントが、続々と予定されているようです。

個人的には、前田日明が深き知識量を誇る「AV」のセミナーをリクエストしてみたい。はたまた、注目のAV嬢を招いて前田日明がホスト役を務めるトークライブシリーズはいかがろうか? 前田がホスト役となり、山咲千里や杉本彩らを招いた「コーセーアンニュアージュトーク」を、私は思い出しています。
(寺西ジャジューカ)