プリキュア10周年+なかよし60周年を記念して、プリキュアのコミックス「プリキュアコレクション」が発売になりました。
 
全部で12冊、4ヶ月にわたって3冊ずつ出る予定です。
すべて作者は上北ふたご。
今まで出てきた本の経緯と、このマンガのどこが面白いのかをまとめてみます。

●単行本化されなかった「プリキュア」コミックスシリーズ
伝説のマンガ版「プリキュア」ついに復刻、からの入手困難
現在入手困難な、一番最初のプリキュアの単行本。

「プリキュア」の名前を聞いたことのある人は多いと思います。
けれど「プリキュア」のマンガはほぼ見たことない人ばかりだと思います。
それもそのはず。10年連載されていても、ほとんど単行本化されていないからです。

 
現時点できっちりまとまった単行本として発売されているのは以下。
ふたりはプリキュア(全描きおろし・戦闘メイン)
ふたりはプリキュアMAX HEART(映画版)
ふたりはプリキュアMAX HEART 雪空のともだち(映画版)
ふたりはプリキュアスプラッシュスター1(連載分1巻、続刊は出版なし)
ふたりはプリキュアスプラッシュスターチクタク危機一髪!(映画版描きおろし)
ドキドキ!プリキュア

現時点で手に入るのは「ドキドキ!プリキュア」だけ(再版がかかった様子)。
その他の「プリキュア5」「フレッシュプリキュア」なども全て、「なかよし」で連載されています。
しかし、単行本にはなっていません。

別の形態として「おはなしブック!」というシリーズで、年二回半分ずつまとめた本がでていました。
「フレッシュプリキュア! おはなしブック まるごとキュアパッション!」ではフレッシュの1話から6話、「ハートキャッチプリキュア!&フレッシュプリキュア! おはなしブック!」でフレッシュの7話から12話+書き下ろしと、ハートキャッチの1話。

この繰り返しでした。まとめて読むことが非常に難しい。
伝説のマンガ版「プリキュア」ついに復刻、からの入手困難
これにマンガが載っているかどうかなんて、言われないとわからないぞ。

特に「プリキュア5」はあちこちの女児向けムックに散らばって載せられており、現在は全部読むことは困難。
「ふたりはプリキュア」も、実はなかよし連載分は一部しか単行本化されていません。
「スプラッシュスター」は1とナンバリングされていて2が出ない、という事態。

加えてあちこちで描いているカラー描きおろしなどはもう、ばらばらすぎて収集がつかない。

こうして「プリキュア」のマンガはどんどん伝説と化していきました。
手に入らない、という意味で。

シリーズ12冊。一冊税込み千円強。全巻購入特典で上北ふたごカラーイラストコレクションとドキドキ!プリキュアきせかえカバーつき。
うん、大人のファン向けに作られている。
そして売り切れている。電話で聞いた所、版元と問屋には今在庫がなく、一部アニメショップで入手するしかない状態とのことです。
10年待った、大人のファンの渇望の単行本化なのです。

●今回の掲載分
今回出たのは「ふたりはプリキュア1」「ふたりはプリキュア2」「ふたりはプリキュアMax Heart」の三冊。
伝説のマンガ版「プリキュア」ついに復刻、からの入手困難

今まででていた「ふたりはプリキュア」のコミックスは、今回の「ふたりはプリキュア2」にあたります。2は単行本分にあわせて、描きおろしが一話載っています。

「ふたりはプリキュア1」は、連載分の日常回のみ。半分以上が単行本未収録です。
「ふたりはプリキュアMax Heart」は連載されていた日常回のみ。すべて単行本未収録分です。

なので、今まででていた「Max Heart」劇場版コミック二冊は今回は収録されていません
慌てて売ってしまわぬよう、お気をつけて。


●上北ふたごマンガの面白さ
上北ふたごの「プリキュア」マンガは、とにかく、密度が高い。
ギュウギュウにコマとセリフを詰め込んでいる。

・心理
・複数人のキャラクターの動き
・子供が笑えるコマ・興味を持つコマ
・ぶち抜きアップ
・子供向けの大きめのフキダシとセリフ
・子供向けの解説セリフ

こんだけ全部盛り込みゃ、そりゃぎゅうぎゅうにもなります。
本来のページ数は4Pだったそうで、そこから十数ページまでなんとか増やしたくらい。
それでも足りない。削って削ってそれでも削れない。
だから紙面がみっちりになります。ぶち抜き描写は、大きく見せるために斜めに突っ込んだりします。(そしてあいた空間にはさらにコマが!)

この手法、古いアメコミによく似ています。
一つのコマの中で、複数人のキャラが同時に話している。動いているのに会話が成立する。
解説も含め、多人数をいっぺんに見せる手法です。

たとえば雨宿りに慌てて逃げていくシーン。
木俣「うわーすっげー集中豪雨!!」
ほのか「ドシャ降りの雨粒の大きさは直径三ミリよ、最大でも五ミリ以上には成長できないの」
なぎさ「ウンチク言ってる場合じゃないよォ」
藤P「どこかで雨宿りしなきゃ」
ここまで全部1コマ。
間を取らず、ひっきりなしにセリフの応酬が行われます。
戦闘シーンでは、戦っているカット一つの間に、たくさんのセリフが差し込まれます。
瞬間を切り取っているのではなく、時間の流れを1コマに凝縮しています。

基本「遠くから見たみんな」の視点で、第三者視点なのも特徴。
一つのコマにだいたいのキャラが入っている。少なくとも一ページに登場キャラがほぼ入っている。

それでもまだ上北ふたごは盛り込みます。
斜めのコマ割りとモノローグ、時にはコマの上にコマを重ねることで、第三者視点の流れの上に一人称視点をかぶせます。
特に「ふたりはプリキュア」だと、なぎさのモノローグをどう差し込むか、とても計算されています。

こうして「上北ふたご風」としか言えない、独特な画面作りが完成。
感情も全部文字で書き出される。ものすごいスピードの舞台演劇的演出になっています。

マンガに興味のある人なら、一見の価値はあります。
ただ、なかなか手に入らないのがネック。次は1月6日に「ふたりはプリキュアSplash☆Star1」「ふたりはプリキュアSplash☆Star2」「Yes!プリキュア5」の3冊です。
特に「プリキュア5」は一切戦闘をせず、「プリキュア部」を作るというアニメからかけ離れた内容になっています。

(たまごまご)