このドラマは、浅野忠信ドラマなのか?
映画俳優のイメージの強い浅野忠信が初主演。その役の弓神適当は、適当で違法捜査も厭わない変わり者の中年刑事。
事件のあらまし
女子大生の押田マイ(小倉優香)が歩道橋で亡くなっているところが発見される。事故死と見られていたが、殺人事件と判断した弓神は、不法侵入などの違法捜査を行う。さらに、ハッカーのヒズミ(山本美月)らの協力を経て、マイとその友人・倉間(大後寿々花)が痴漢をでっちあげる“痴漢でっちあげ女”であることを知る。
弓神のバディを務める羽生虎夫(神木隆之介)は、そのでっちあげ痴漢が行われていた駅の駅員であり、捜査に協力してくれる元同級生の坂木(杉咲花)に少しずつ惹かれていく。
正反対でバディっぽい
弓神は、ダボダボのスーツを着て、ガニ股でダラダラ歩き、いつもふざけているちょっと小汚い中年。ナポリタンを食べると口の周りが真っ赤になってしまうような男だ。全身短所だらけのこの男だが、そのおかげか数少ない長所の洞察力と優しさが不思議と浮かび上がり、妙にカッコイイ。「おぉ、浅野忠信だなあ」という感じの役だ。
一方の羽生は、少し腹黒いが真面目で童貞疑惑のある若手刑事。モーションキャプチャーで理想のフォームを追求したかのようにキレイに走る。
正反対、まるで主人公の弓神を引き立てるために作られたキャラクターのよう。しかし、神木隆之介は単なる引き立て役で終わらない。原作の羽生はもっと影の薄い存在なのだが、神木隆之介は、「こっちが主人公なんじゃないか?」と思わせるほどの活躍を見せる。
浅野忠信はカッコイイけど、ヘラヘラしてるだけ
基本的に「刑事ゆがみ」で役者・浅野忠信は、ヘラヘラしているだけで何もしない。いろいろなものに茶々を入れて、ずっとのらりくらり。取り調べなどの美味しい場面でだけちょっとシリアスな顔をするだけだ。
もちろんそれでカッコイイんだからそうあるべきだし、それでカッコイイ浅野忠信がすごい。文句なんて何一つない。ただ、もう一度言わせてもらうが、マジで何もしていない。
神木隆之介に課せられた仕事がキツイ
だが、神木隆之介はそういうわけにはいかない。役者としてのバディである浅野忠信が何もしないだけに、その穴を埋めなければならない。ドラマを成立させ、味付けをしなければならない。
弓神の変人行動にテンポ良くツッコミを入れて正し、違法捜査の片棒を担がされて焦る。全力で走り回って犯人に飛びかかるアクションを見せれば、恋愛要素も引き受ける。さらには恋心を抱いていた犯人に手錠をかけるという複雑な感情の芝居も見せる。怒って泣いて笑ってと、たったの一時間で、様々な感情表現を詰め込まれまくった台本を演じているのだ。
これだけ大変なことを要求されていながら、それを完璧にこなすんだから、「神木隆之介すごい」ってなる。感動する場面はほとんど神木隆之介が関わっているシーンだろう。
そんな一生懸命な神木隆之介の横に、ヘラヘラしているおっさん浅野忠信がいる、そんなのもう面白いに決まっている。そしてその浅野忠信がヘラヘラすればするほど、真面目な神木隆之介が引き立つ。お互いを引き立てる好循環の完成だ。
杉咲花のあの感じはなんだ?
浅野忠信面白くてカッコイイなぁ、神木隆之介すげぇなぁ、と思って見ていたらそれだけじゃないから濃い。事件の内容、展開も凝っているし、ゲストの杉咲花のあの感じはなんなんだろう。
実年齢以上に幼く見えるからか、どうしても頼り無い存在で居て欲しいと見ているこっちは願ってしまう。だから、髪をビチっとまとめ毅然とした態度を取る駅員とのギャップにハッとさせられてしまう。
今夜放送の第二話は、水野美紀と斎藤工がゲスト出演するらしい。探偵対犯人の演技対決は決まって面白いが、「刑事ゆがみ」では、三つ巴四つ巴の演技対決がこれから毎週行われそうだ。
(沢野奈津夫 イラスト/Morimori no moRi)
『刑事ゆがみ』キャスト、スタッフ、主題歌
【キャスト】
浅野忠信 神木隆之介 山本美月
仁科貴 橋本淳 稲森いずみ
【スタッフ】
原作:井浦 秀夫『刑事ゆがみ』(小学館『ビッグコミックオリジナル』)
脚本:倉光泰子 大北はるか 藤井清美 池上純哉 徳永友一
音楽:菅野祐悟
主題歌:WANIMA『ヒューマン』(unBORDE/Warner Music Japan)
プロデュース:藤野良太 高田雄貴
演出:西谷弘 加藤裕将 宮木正悟
制作:フジテレビ
『刑事ゆがみ』動画は下記サイトで配信中
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