宮藤官九郎脚本、小泉今日子、満島ひかり、菅野美穂、伊勢谷友介らが顔を揃える話題のドラマ『監獄のお姫さま』が今夜10時よりスタートする。『逃げ恥』(レビュー)『カルテット』(レビュー)を送り出した火曜10時枠らしい、ツイストの効いた「おばさん犯罪エンターテイメント」だ。


罪を犯した5人の女と、罪を憎む1人の女刑務官が、悪事を働いたイケメン社長に復讐を企む――というのが大まかなストーリー。「大まかな」と書いたのは、話がどう転がっていくかまったくわからないからだ。まずは、あらためて登場人物を紹介してみよう。
おばさん犯罪エンターテイメント「監獄のお姫さま」今夜スタート。冒頭からトリッキー、期待しかない
TBS公式サイトより

物語のカギを握る「爆笑ヨーグルト姫事件」


小泉今日子演じる主人公・馬場カヨは、銀行で働く平凡な主婦だったが、不貞を働いた夫を刺した殺人未遂罪で服役する。懲役5年。小泉曰く「しっかりしているようで、いつも失敗したり、みんなにいじられるような、おっちょこちょいの役」。平凡で凡庸な人物なので、あだ名もない。
口癖は「冷静に」。

菅野美穂演じる勝田千夏は、カリスマ経済アナリストだったが、巨額の脱税で服役。ちなみに著書のタイトルは『貯める女はブスばかり』だった(ひどい)。女囚たちのリーダー的な存在で、あだ名は「財テク」。菅野曰く「自分の欲に素直で思慮深さがあまりない感じ」の人物。

坂井真紀演じる大門洋子は、若手俳優への度重なるストーカー行為と、追っかけ費用を捻出するために横領と詐欺に手を染めて服役。
あだ名は「女優」だが、「メンタルと生きざまが女優」なだけで、本当の女優ではない。女囚たちの中では一番騒々しい。

森下愛子演じる足立明美は極道の妻。違法薬物の不法所持で服役しているが、実は夫の身代わりで刑務所に入ったという経緯がある。あだ名は「姐御」。文字通り、姐御肌の女性。


伊勢谷友介演じる板橋悟郎は、EDOミルクの若きイケメン社長。婚約者だった江戸川しのぶ(夏帆)に殺人の罪をかぶせて、まんまと社長の座を手に入れる。そのため、女たちの復讐のターゲットにされることに。

夏帆演じる江戸川しのぶは、江戸川乳業(現在EDOミルク)元社長の娘で、5年前に殺人罪で収監された。殺人事件は「爆笑ヨーグルト姫事件」と名付けられ、ワイドショーなどで連日放送された。あだ名は「姫」。
タイトルの「監獄のお姫さま」とは彼女のこと。

満島ひかり演じる若井ふたばは、板橋悟郎の敏腕秘書を装っているが、実は女囚たちの仲間。罪を憎む女刑務官だったが、やがて女囚たちに心を開き、復讐に手を貸すことになる。無表情で口が悪く、警棒とスタンガンで武装もしている。

クドカンが希望した女優を全員揃えたTBSの熱意


もともとは宮藤が酒の席で、磯山晶プロデューサー(本作では編成)と金子文紀プロデューサー(本作では演出も兼務)に大好きな女優の名前を立て続けに挙げ、「この人たちがもし揃ったら俺、ずっと書いてられますよ!」と宣言したことから始まった企画。宮藤が名前を挙げた女優を本当に全員揃えてしまったTBS側の熱意がすごい。

では、出演女優陣との宮藤官九郎とのかかわりをおさらいしてみよう。


小泉今日子と宮藤官九郎といえば、ご存知『あまちゃん』(13年)が印象深い。宮藤脚本の『マンハッタンラブストーリー』(03年)ではヒロインのタクシー運転手役、『うぬぼれ刑事』(10年)にもゲスト出演している。なお、クドカンドラマではないが、銀行員で“馬場”という姓は『すいか』(03年)の役柄と同じである。

菅野美穂はクドカンドラマ初出演、小泉今日子とも初共演となる。

坂井真紀は、宮藤脚本の『ごめんね青春!!』(14年)にて高齢処女の養護教諭で、えなりかずきと不倫に陥り、サンドウィッチマン富澤と付き合うというすごい役を演じていた。『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(03年)、宮藤監督の映画『中学生円山』(13年)にも出演している。


森下愛子といえばクドカンドラマの常連中の常連。『木更津キャッツアイ』(02年)のローズ役をはじめとして、『池袋ウエストゲートパーク』(00年)、『マンハッタンラブストーリー』(03年)など、数多くの作品に出演している。

『架空OL日記』の好演が記憶に新しい夏帆は、クドカンドラマには初出演だが、宮藤作、河原雅彦演出、生瀬勝久、池田成志、古田新太出演の舞台『万獣こわい』(14年)に出演していた。

満島ひかりは『ごめんね青春!』のヒロイン。『ごめんね青春!』の打ち上げで宮藤から「満島さん、次は女囚のお話です」とオファー(?)を受けたのだとか。

キーワードは“シスターフッド”?


宮藤はこのドラマの核心を「大好きな女優さんの大好きなお芝居が観たい」と断言している。「おばちゃんのお喋りを書いている時がいちばん楽しい」ので、「彼女たちのおしゃべりをエンドレスで聞ける場所はどこか」と考えて、女子刑務所を舞台にしたのだとか。あだ名、おしゃべり、犯罪と並ぶと、まるでタランティーノ映画みたいだ。

満島曰く「癒し系ドラマになる予感」、伊勢谷曰く「おばさんセクハラドラマ」、宮藤曰く「愛すべきカッコイイおばちゃんのおしゃべりと衝動によって転がり続ける無責任クライムエンターテイメント」。一体どんなドラマになるのかまったく予想がつかないが、最近のドラマでよく描かれる“シスターフッド(女性同士の連帯)”というキーワードは頭に入れておいてもいいかもしれない。

なお、第1話には爆笑問題の2人が特別出演しているが、ものすごくトリッキーな始まり方をするので要注意。ミュージカル『刀剣乱舞』三日月宗近役の黒羽麻璃央も出演するらしいぞ(第1話には出ない)。

シリアスな中にギャグが挟まり、マヌケさの中に悲しみがある。引退が決まった安室奈美恵の主題歌「Showtime」の性急なビートがよく似合う、一筋縄ではいかない曲者ドラマ『監獄のお姫さま』。1秒たりとも目を離さないように。
(大山くまお)