10月22日にAmazonから新しいKindle Paperwhiteが日本で販売を開始しました。前作が昨年の10月24日だったので、ほぼ1年後に新機種が出たことになります。


2世代目のKindle Paperwhiteは、外見的にはあまり大きな変更が無く、さらに金額が2000円値上がりしています(ただし、Wi-Fi版は今購入すると1980円分のクーポンがもらえます)。前世代を持っている人が買った方がいいのかどうか、ファーストインプレッションをお届けします。前世代のレビュー記事も合わせて参考にしてください。

■まずはハードウェア面から。ライトと内蔵メモリが大きくパワーアップ

外側については一カ所を除いてほぼ変わっていません。大きく変わったのは背面部分です。
「Kindle」ロゴ部分が「amazon」に変わっています。この「amazon」がかなり太いフォントで、黒地に黒ではあるものの目立つようになっています。

寸法に変更はなく、マットな手触りもそのまま。重量は7gだけ軽くなったようなのですが、さすがにその差を体感することはできませんでした。

パワーアップしたのは、まずライト部分です。Paperwhiteのときにあった、下部のむらみたいなものは見られません。
さらに、青みが軽減されています。個人的には初代Paperwhiteの白さは気にならなかったのですが、青白いと感じていた人にはうれしい点でしょう。ちなみにライトは同じように0から24までの25段階で明るさを変えられますが、一気に最大輝度にする「MAX」ボタンが追加されています。

ライトに関しては、前世代と比較すると明るくなっています。最もこれは、前世代を1年間使ったことによる経年劣化なのかもしれません。

そして内蔵メモリが増えているのも大きなパワーアップと言えます。
Paperwhite2は以前の倍の4GBとなっています。使用領域は約3.2GB分(以前は約1.3GB分)ということを考えると、これはかなりのパワーアップと言えます。Kindleストアで購入するだけではなく、自炊した本を読みたい派にとってはうれしい点です。

そして、CPUがパワーアップしているのもポイントです。動作が全体的にキビキビとしています。比べてみると、前世代のPaperwhiteは少し動きがもっさりしていたんだなあと実感できます。


■ソフトウェアは大きくパワーアップ

外側があまり変わっていない分、中身が大きくパワーアップしています。

個人的に一番大きいのはフォントに「筑紫明朝」というフォントワークスの代表的な明朝体が入ったことです。やわらかさを感じさせ、曲線が美しく、伸びやかなフォントで本が読めるようになったのはとても喜ばしいのです。横書きでも美しいのですが、縦書きにとてもよく合うのですね。他の電子書籍端末に搭載されていて、いつかはKindleにもと願っていたフォントがとうとう搭載されました。この勢いで次のバージョンでは筑紫明朝オールドも搭載して欲しいと願ってやみません。


でも残念ながら、Kindleストアで購入した一部の書籍はフォントを変更しても筑紫明朝で表示されませんでした。この辺のフォント問題は以前にもありましたが、時間が経てば修正されているので、今回もきっと解決されることでしょう。

今回の目玉機能は、Page Flip機能です。今までのKindleでは「移動」メニューで最初のページやページ番号の指定、章ジャンプしかできなかったのですが、パラパラとサムネイルを見ながらページをめくることができるようになりました。

画面下部で、下から上へスワイプするとPage Flip画面が登場します。ここで出てくるスライダを動かすことでプレビューを見ながらページをめくることができるのです。
なお、横書きの本では左から右へ、縦書きの本では右から左へスライダを動かします。

さすがにiPadなどで同様の操作をするのに比べるとプレビュー画面の切り替わりは遅いのですが、それでも十分実用に耐えます。すぐにページめくりのためには移動メニューを使わなくなり、こちらの機能を使うようになってしまいました。

じゃあ移動メニューは使わないのかというと、こちらもパワーアップしています。「メモ」がタブ切り替えで選べるようになり、他のユーザーがメモをつけた箇所に直接ジャンプできるようになりました。

他に大きくパワーアップした機能は、辞書部分でしょうか。内蔵辞書で単語などを調べることができるのですが、Wikipediaにアクセスしやすくなっています。今までだと単語を選択→その他→Wikipediaで調べていたものが、辞書画面の別タブでそのままWikipediaにアクセスできるようになりました。より使いやすくなったので、Wikipediaを多用している人にとってはうれしいパワーアップです。この機能をよく使う人は、いつでもインターネットにつながる3Gモデルにする価値は十分にあることでしょう。

■残念ながら自炊データの対応は以前と変わらず

残念な点は、自炊したPDFファイルを読むときです。前世代と同じく全て横書きの書類扱いをされてしまいました。ページ送り操作なども従来とは逆になってしまいます。PDF作成時に縦書きとなるようにしていても横書き扱いになるため、右側をタップで次のページへ、左側をタップで前のページへ。もしくは右から左へスワイプで次のページへ、左から右へスワイプで前のページへいくようになっています。

この1年間で、この動作に慣れるかと思って使い続けてみたのですが、結局はあまり慣れることができずに、自炊データはNexus7やiPadで読むようになってしまいました。この辺は個人差があることではありますが、個人的には自炊のファイルを読まずに、Kindleストアで購入した書籍を読むことを中心に活用する方がいいと思います。

■前世代モデルでストレスを感じていた人は買い

というわけで、まとめましょう。

前世代のPaperwhiteを持っていて、容量が小さいとか、動きがもっさりしているとか、ページをパラパラめくりたいとか、多少のストレスを感じている人は買った方がいいです。あと、筑紫明朝ファンも買いですね。

前世代のPaperwhiteと同じく、Kindleストアに置いてある「文字」の本を読むのにはこれほど適した端末はありません。軽く、暗いところでも明るいところでも快適に読めて、片手でさくさく読み進めることができます。弱点だった資料閲覧の用途に関しても、Page Flipや使いやすくなったメモジャンプ機能などにより、ほとんど問題がなくなりました。他の端末のKindleアプリとの連携などを考えても、現時点で利便性の高い読書端末であることは間違いありません。

一方で、今はPaperwhiteよりも軽い端末も発売されています。ストアの品揃えに差はありますが、何がなんでも軽い方がいいという人は、Paperwhite以外の選択肢もあるということを覚えておきましょう。
(杉村 啓)