圧倒的な存在感と演技力で世界中の映画ファンの心を奪ってきた名優モーガン・フリーマン。役者であることを最優先させてきた彼の私生活は少々複雑で、交際していた女性に未婚のまま産ませた2人の息子、1984年~2010年に結婚していた2番目の妻マーナ・コリー・リーとの間にもうけた娘、そしてマーナと再婚した際に養子縁組した1番目の妻ジャネット・アデア・ブラッドショーの連れ子である娘と、4人の子を持つ。



 モーガンは昨年9月に受けた英紙「Telegraph」のインタビューで、「結婚せずに何人かの子どもが産まれたけど、産まれただけじゃ父親になれなかった。(父親になるには)かなりの時間がかかったね。あの頃は役者で居続けることに必死だったからね」「今、こうして老いぼれて。14人の孫がいて。積極的に孫を世話するタイプの祖父ではないけどね。おむつも替えないし。
でも、娘が産まれたときは、おむつを替えたんだよ。世話を焼いて育てると、子どもの人生に大きな影響を与えるよね」と発言。息子の一人、アルフォンソ・フリーマンは俳優になり、映画『最高の人生の見つけ方』(07年)で共演を果たしているが、モーガンにとっては2番目の妻と共に育てた娘たちの方が父親らしいことをしてきたと告白した。

 血のつながっていない最初の妻の連れ子を我が子同然のように育ててきたモーガンは、慈悲深き人間だと見られていた。しかし、マーナとの離婚騒動が勃発していた09年。養女が産んだ娘、つまりモーガンにとって血はつながっていない孫娘であるエディナ・ハインズと性的関係にあり、愛し合っているという報道が流れ、世間を大仰天させたことがあるのだ。


 このことを報じた米大手タブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」によると、「エディナが十代の頃、モーガンに連れられ、友人宅でお酒を飲みながら夕食を楽しんだ。帰宅後、酔った勢いからか、モーガンがエディナに覆いかぶさり、性的関係を結ぼうとした。このとき、モーガンは挿入寸前で思い留まったが、2人はこれをきっかけに禁断の恋愛関係に陥った」とのこと。エディナはモーガンの妻の座を狙っており、2人の関係をマーナに告白。モーガンはハリウッドのイベントにエディナを連れていくことが多く、マーナは激怒。モーガンには他にも愛人とウワサされる女性がおり、07年にモーガンが交通事故を起こした際にはその女性が同乗していたことから、マーナは離婚を決意したというのだ。
モーガンとエディナは血はつながっていないため、結婚は可能。しかし、45歳という年の差はもちろんのこと、モラル的に考えても、実現することは難しい。世間からは「気持ち悪い」と批判する声が上がり、バッシング騒ぎに発展した。

 それ以後、いたるところで報じられるこの情報にうんざりしたのか、12年にモーガンは「孫と恋愛関係にあるとか結婚するとかいうウワサはウソだ」と全面否定。エディナも、「このウワサに本当に傷つけられている」という声明を出し、モーガンは良きおじいちゃんで、それ以下でもそれ以上でもないと断言。この声明が功をなしたのか、世間はこの報道を忘れていった。


 しかし、この度世間はエディナの名を久々に思い出すことになる。なぜなら彼女がめった刺しにされ、殺害されたからである。

 米複数の大手メディアによると、16日午前3時頃、ニューヨーク市マンハッタンの路上で女性が血を流して倒れているという通報を受けて警察が駆けつけたところ、胸部に複数の刺し傷を負ったエディナが倒れていたとのこと。エディナは、すぐに最寄りのハーレム病院に搬送されたが、そこで死亡が確認されたという。警察は現場で30歳の男性の身柄を確保したと発表。この男性も病院に搬送されたとのことだが、詳細は明かされておらず、通り魔なのか、無理心中なのかと、さまざまな憶測が飛び交った。


 そんな中、地元紙「ニューヨーク・ポスト」は、警察に通報した目撃者からの情報として、「悲鳴を上げる女性に男が覆いかぶさり、“悪魔よ、出てこい! 悪魔よ、オレが追放してやる! イエス・キリストの名において、オレが追放する!”と叫びながら繰り返しナイフを刺していた」と伝えた。犯人である男はエディナと同棲していた交際相手で、コカインを摂取したことにより精神的に異常をきたした可能性があるという。

 男はエディナが動かなくなってからも「悪霊退散」と叫びながら彼女を刺し続け、刺し傷は16カ所にも及んだ。警察官がエディナから離れるように命じられても無視したため、全力で引き離さなければならなかったそうだ。男はコロンビア・プレスビタリアン病院に搬送され、精神鑑定を受けているという。

 モーガンは、最愛の孫娘の死にショックを受けながらも、「素晴らしい芸術の才能を持った孫娘だったのに、開花させる前に逝ってしまった」「エディナの友人や家族は、彼女という素晴らしい人間を知ることができ本当に幸運だった。
彼女という星は我々の心、想い、祈りの中で輝き続ける。安らかに眠ってくれ」という声明を発表。Facebookでも、ファンからの多くの哀悼の意に感謝の気持ちを述べた。

 エディナは女優として活動しており、積極的にオーディションを受けていたとのこと。ブロードウェイや映画に出演しており、2週間前に『Landing Up』というニューヨークのストリートに生きるホームレスの女が主人公の映画の撮影を終えたばかりだったという。

 エディナの衝撃的な死を伝える各メディア記事のコメント欄には、悲劇的な死を迎えたエディナに対する哀悼の意、悲しみにくれているであろうモーガンの心境に寄り添うコメントが大量に書き込まれている。しかし、中には、「エディナといえば、性的関係にあった孫娘……」というコメントもあり、ウワサを信じていた人たちの中には「神の怒りでは」という考えを書き込む者もいた。

 エディナとレッドカーペットに現れるモーガンは、いつもうれしそうな表情を浮かべていた。血はつながっていないが、エディナはモーガンにとって最愛の孫娘であり、自慢の孫娘だったのだろう。これから才能を開花させ大女優に成長すると信じていたであろうモーガンの悲しみを思うといたたまれなくなる。エディナが安らかに眠ることを祈るのみである。