「ヘリウムガスの危険性を、現場の誰も知らなかった……」

 女性アイドルグループ「3B junior」の12歳メンバーが1月28日、BS朝日のバラエティ番組『3B JUNIORの星くず商事』の収録中に倒れ、緊急搬送されていた問題で、現場の危機意識はゼロに等しかったことがわかった。

 4日、テレビ朝日は謝罪会見を開き「番組の企画で26人のメンバーが5人1組で声を変えるゲームを行った際、市販のヘリウムガス入りパーティーグッズを一気に吸い込んで倒れた」と説明。

診断は、脳の血管に空気が入って血流が妨げられる「脳空気塞栓症」だった。「3B junior」は、ももいろクローバーZの妹分ともいわれる、スターダスト所属で未成年中心のアイドルグループ。使われたパーティーグッズには、「大人用」と記載されていた。

 会見でテレ朝側は「番組スタッフが、それを見落としていた」としたが、関係者は「ヘリウムガスが危ないということ自体、誰も認識していなかった」と話す。

「企画会議でヘリウムガスを使うことになったとき、『注意しよう』なんて誰も頭になかったし、それどころか『ちょっと吸うと一言分しか声が変わらないから、思い切り吸ってもらって』と話しているスタッフもいたぐらいだった」(同)

 ヘリウムガスは、吸うと声が変化することで知られるが、以前からこれを使った事故が多数報告されており、パーティーグッズを販売している業者によると「ガスを吸うということ自体、大人なら注意が必要なのは分かるはずですし、日本製なら商品にしっかり危険性が明記してあったはず」という。

「ウチで扱っているものを再確認しましたが、いずれもヘリウムガスに酸素を2割ぐらい混ぜ、安全性に配慮した、対象年齢は10歳以上のもの。
それでも『呼吸が不規則になる危険性がある』など、注意書きをしています」(同)

 実際、海外では死亡事故が多発、昨年11月にはヘリウムガスによる変声を売りにしたオーストラリアの番組に批判殺到する騒動があったばかりだった。

 『3B JUNIORの星くず商事』はグループ初の冠番組として1月24日にスタートしたばかりの深夜番組だったが、制作会社のトリックスターはこの事故が起きた直後、ホームページの「製作実績」から同番組を削除。まるで無関係を装っているかのような姿勢だが、これには身内のテレ朝内から「事故への説明を載せるほうが先だろう」という批判の声も上がっている。

 前出の番組スタッフは「情報番組と比べるとバラエティの仕事場は学園祭みたいなノリで、緊張感がなくて緩い。これは他局も同じ」と話す。テレ朝では2012年にも、バラエティ番組の企画で芸人のスギちゃんが高さ10メートルからプールへの飛び込みで胸椎破裂骨折の重傷を負ったことがあったが、悪ふざけが度を越すバラエティ番組での教訓は生かされなかったようだ。

(文=ハイセーヤスダ)