まさかここまでぶっちゃけてくれるとは──。元日の夜、ジャニー喜多川氏が『蜷川幸雄のクロスオーバートーク』(NHKラジオ第1)に出演することは、芸能マスコミの間で話題になっていた。

しかし、ジャニーさんといえば、最近少しずつメディアに露出するようにもなったとはいえ、基本的には影の存在。自分のことはもちろんジャニーズの内幕についての話もほとんど明かしたことがない。きっと、今回も差し障りのない話に終始するだけだろう......。

 そんなふうに思っていたら、ジャニーさん、なんと蜷川のインタビューに答える形で、生い立ちからジャニーズの歴史、タレントへの思い、さらにはこれまでささやかれてきた数々のジャニーさん伝説の真相についてもぶっちゃけトークを展開したのだ。

 まず、蜷川はいきなり、聞きたくても聞けなかった話として、「ジャニーさんはさぁ、タレントのことYouって呼ぶでしょ? あれには自覚的な選択があるの?」と質問。これに対して、ジャニーさんはアメリカではYouが主語だから、痛いとき瞬間的に「Ouch!」と言ってしまうのと同じだと言いながらも、「Youしか覚えられない」、つまりタレントの名前を覚えられないから使っていると意外な真相を明かして笑った。


 このインタビューの前に2人は舞台を観劇していたのだが、その舞台に出てる子の何割覚えてる?と聞かれても、「あ、覚えてないです。自慢じゃないけど覚えてない」ときっぱり。

 そして、話はジャニーさんのタレントの選び方に移っていく。蜷川はいとき、ジャニー氏に「誰かいい人紹介してよ」と頼み、男闘呼組岡本健一SMAP木村拓哉中居正広などを紹介してもらったことがあるため、彼の審美眼には絶対の信頼を置いていたようだ。しかし、V6森田剛を紹介されたことにふれて、「僕ね、感心してるのはね、ジャニーさんとこは懐深いね。ああいう森田みたいな、変わった子をちゃんと......」とつっこむ。


 すると、ジャニーさんは喰い気味に「ああ、顔だけでは選ばないということですね」と返したのだ。それを受けて蜷川が「あの変な、ヒゲとかはやして(笑)」と続けると、「ついに言っちゃったー(笑)」とジャニーさん大ウケ。蜷川が森田に「汚い顔してお前、野ネズミか!? よくジャニーズ事務所にいられるよね」とまで言ったと聞いても怒るわけでもなく、「人間はやっぱりそれぞれみんないいとこあるの」「マッチなんか写真見てたって何この子って。だけど、なんていうのかな、ハートがやっぱり伝わってくるんですよね。みんなそれぞれ若い人って本当に気持ちがありますよね」と返す。

 さらに、蜷川に「いい子だと思って残しといたら、ちっとも成長しない子だっているでしょ?」と問われると、ジャニーさんは「いない」と即答。


「30年も50年もやってるけども、僕は失敗はないと思いますよ」
「やっぱ人間を扱ってるから」「どの子だってみんな人間の美しさってあるんですよ」

 だが、そんなジャニーさんが最近の若いアイドルに不満を漏らした一瞬があった。それは、蜷川に「最近の若い男の子の顔つきが、みんな似てるってことはないですか?」と言われたときのこと。ジャニーさんは「あ!なんでわかるんです?」とちょっと弾んだ声で返しながら、その答えは「髪の毛」にあると指摘したのだ。みんな同じような髪型にしていて「何の特徴もないの」と。

 しかも、驚いたことに個性を出すために「坊主にしちゃえよ」と言い出すジャニーさん。「マッチは何でマッチって言ったか知ってます? マッチ棒みたいでしょ?」とマッチを引き合いに出しながら坊主を大絶賛。
最終的にはジャニーズの「髪の毛は坊主にしたい。坊主はすごくカッコイイよ、みんな」とまで言い切ったのだった。

 また、ジャニーズが背が低いイメージがあるかもしれないが、実はこれにもジャニーさんなりの理由があった。

「昔アイドルというのは、背が小さいほどよかったわけですよ。高いのはアイドルにならなかった」

 170㎝を超えたら長身で、ジャニーさん自身も「小さいの自慢したくらい」だそう。

「だからうちは、長田栄二なんて急に背が高くなっちゃったからカットしちゃったぐらいですよ」とサラリ。


 もっとも、それは昔の話で、「今の高校生、中学生怖いですよ。スタイルがもうめちゃくちゃいい」といいながらも、時代時代にあったものがあるからと、そういった変化も受け入れているらしい。

 それにしても、これまで影の存在としてほとんど肉声を聞かせることのなかったジャニーさんがなぜ、ここまでぶっちゃけていろんなことを語ったのか。

 最初に頭をよぎったのはやはり「老い」という問題だ。ジャニーさんは御年83歳。引退も近いと見られている。
そして、現在、事務所内部ではジャニー氏の姪である藤島ジュリー景子氏と、SMAPを育て上げた飯島三智が苛烈な派閥闘争を繰り広げている。

 引退間近のジャニーさんはそんなジャニーズ事務所と距離を置き、世間に自分の足跡を遺そうとメディア露出を解禁、個人としてメッセージを発信しようと考えているのではないだろうか。

 だが、この日のラジオを聞く限り、ジャニーさんにそういう素振りはまったくない。

 今後についてき聞かれたときも、「タレントは一生というのがあるから、このままポーンと捨てる気は全然ないですよね。彼らが生きる限りは絶対やっていかなきゃいけないという信念はありますよね」と強い意志をのぞかせた。

 さらに、ジャニーさんは若い子を大事にしなきゃいけない、として、こんなことも熱く語っていた。

「タレントとして育ってるけど、人間としてまだ育ってないわけですよ。僕はやりますよ絶対に。死ぬ前にちゃんとやります。若い子を築きあげなきゃ。金儲け主義でやってるっていうのではないことがハッキリわかると思いますよ」
「これから築き上げることによって、子どもたちも育っていくってことなんですよ」

 ジャニーズ事務所を支えているのは、ほかでもない、ジャニー氏の審美眼だ。最近起こった大事件として、自宅につけたエレベーターがいきなり止まっちゃって、4日間(!)閉じ込められた話も披露していたジャニーさんだが、体に気をつけてできるだけ長く現役でがんばっていただきたい。
(島原らん)