ヴィジュアル系といえば、X(現X JAPAN)の元ベーシスト・TAIJI(享年45)がサイパンに向かう飛行機の機内で暴れ、身柄拘束中に自殺したというショッキングなニュースも記憶に新しいところ。Xはギタリストのhide(享年33)が1998年に急死、ボーカルのToshiも自己啓発セミナーに傾倒するなど波瀾万丈すぎる経歴のバンドとして知られる。
X以外のヴィジュアル系バンドでも、グロテスクな衣装やメイクを売りにしていたDeshabillz(デザビエ)は、ライブ会場から機材車でhideの葬儀に向かう途中に交通事故に遭い、ベーシスト・美歪と同乗していたMadeth gray'll(マディス・グレイル)のギタリスト・歪が死去。
さらに、GACKTも所属していたMALICE MIZER(マリスミゼル)のドラマー・Kamiは、99年6月にクモ膜下出血で急逝している。
極めつけとしては、4人組バンドのTHE PIASS(現・妃阿甦)は、ファーストアルバムをリリースした95年、PV撮影中に川に飛び込んだボーカルのCHIHIROとドラマーのHIROSHIが事故死し、その3年後にベースのYOSHIOが自殺するという悲劇に見舞われている。
ヴィジュアル系ブームの頃のバンドは破天荒なイメージがあり、こういった悲劇が起こることも珍しくなかった部分があるが、近年もヴィジュアル系バンドのメンバー急死や事故死が相次いでいる。
04年に解散したEllDorado(エルドラード)のベース・瞬介は昨年3月に自殺、蜉蝣(かげろう)の元ボーカル・大佑も昨年7月に自殺、インディーズでありながらオリコントップ10入りを何度も果たしたMoran(モラン)のベース・Zillも昨年7月に急死、06年にメジャーデビューした5人組バンド・しゃるろっとのボーカル・和乃は今年4月に急逝......と、異常に思えるほど悲劇が立て続けに起こっている。
気になるのは死因。
「死因を公表しない場合、自殺や薬物によるオーバードーズなどによって死亡したケースがあることは周知の事実でしょう。ヴィジュアル系には退廃的なイメージがつきものですが、そういった世界にはまり込んでいくことで精神がネガティブな状態になり、自傷行為やドラッグの乱用に走ってしまうことは珍しくありません。近年の『ネオ・ヴィジュアル系』と呼ばれる世代は、明るいイメージのバンドが主流になってきていますが、それでも心に"闇"を抱えているメンバーは多いと思いますよ。また、ヴィジュアル系は人気が落ちると悲惨な状態になりますから、将来に不安を抱いているメンバーも多いため、そういった状況が自殺の引き金になることは十分に考えられます」(音楽関係者)
ヴィジュアル系特有の死や破滅のイメージと音楽業界の悪習が合わさって、悲劇の連鎖が起きているのだろうか。
(文=佐藤勇馬)
(※画像はKagrra,『百鬼絢爛【初回限定盤】』より)