大型ヘリコプターのさらに上を行く超大型ヘリコプターとは、どのようなものなのでしょうか。史上最大にもなると、ヘリの本質すら失う巨大機でした。
ヘリコプターの世界最大クラスとは、どのようなものなのでしょうか。
たとえばアメリカ海兵隊などに導入されているCH-53E「スーパースタリオン」は、アメリカ製ヘリコプターとしては現役最大の大型機であり、もっとも大きな特徴は「ともかく巨大である」ということに尽きます。
アメリカ海兵隊のCH-53E「スーパースタリオン」。(画像:アメリカ海兵隊)。
CH-53Eは1964(昭和39)年に初飛行したCH-53「シースタリオン」を原型としますが、その設計は完全に一新された事実上別の機種であり、現在は後継機であるCH-53K「キングスタリオン」の開発が進む傑作大型輸送ヘリコプターです。
3基搭載されたCH-53Eのエンジンの総出力はなんと1万3000馬力で、その最大離陸重量は33トン。
海上自衛隊においても2017年3月まで同型のMH-53E「シードラゴン」を掃海・輸送ヘリコプターとして運用していました。機雷を発見・除去するための「掃海具」を海上で曳航するにはMH-53Eのハイパワーが欠かせませんでした。
さらに上をいくロシア製、200人近くを空輸可能?ではCH-53E「スーパースタリオン」こそが世界最大のヘリコプターなのかというと、実は違います。ロシアにはさらに巨大な機体が存在しており、その名をロシアンヘリコプターズ(旧ミル・モスクワ ヘリコプター工場)Mi-26「ヘイロー」と呼称します。
実用機としては世界最大のミルMi-26「ヘイロー」(前)。
Mi-26の双発エンジンの合計出力は、CH-53Eのおよそ2倍に迫る2万3000馬力にも達し、最大離陸重量は破格の56トン。ペイロードは20トンと、これはC-130「ハーキュリーズ」中型輸送機にもほぼ匹敵します。
Mi-26の定員は完全武装した兵士82名ではありますが、これはあくまでもカタログスペック上の数字で、実用上はさらに多くの人員を輸送しており、チェチェン紛争では200人近くを空輸したこともあったとされます。また2002(平成14)年には地対空ミサイルによって撃墜され、定員を遥かに超える127名のロシア軍兵士が死亡するという、ヘリコプター史上最大の惨事が発生しています。
Mi-26は実用上における世界最大のヘリコプターです。
1967(昭和42)年に初飛行した、ミル・モスクワ ヘリコプター工場製であるV-12「ホーマー」の最大離陸重量はなんと105トン! Mi-26の2倍にも達する超超巨人機であり、定員196名は中型旅客機にほぼ匹敵します。1969(昭和44)年に樹立された40トンを搭載しての飛行記録は、現在もなお50年にわたって更新されておらず、おそらく今後も当分のあいだは王位の座にあり続けるであろうと推測されます。
史上最大のヘリコプター、ミルV-12「ホーマー」。左右に展示されるMiG-29とSu-35戦闘機に比べても圧倒的なサイズ(関 賢太郎撮影)。
V-12は大陸間弾道ミサイルの空輸や、非軍事用途として広大なシベリアにおいて飛行場が整備されていないへき地への物資・人員の大量輸送といった任務を想定して開発されました。
結局V-12はプロトタイプが2機生産されたのみに終わり、現在はモスクワ郊外のモニノ中央空軍博物館において、見るものすべてを圧倒するその巨体を静かに休めています。
【写真】開発中のCH-53K「キングスタリオン」
2018年の運用開始を目指し開発中のCH-53K「キングスタリオン」(画像:シコルスキー・エアクラフト)。