クルマが左折する際の幅寄せは、車道を走る自転車にとって危険という意見があります。そもそも、左折時の幅寄せにはどのような意味があるのでしょうか。

教習所でも習う左折時の幅寄せ

 クルマを運転していて左折する場合、自動車教習所では、その手前から合図を出し、クルマを左に幅寄せするよう教わったことでしょう。

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車道の左側端には、自転車の通行場所や方向を案内する「自転車ナビマーク」が設置されていることも(2017年6月、乗りものニュース編集部撮影)。

 しかし、車道の左側を走行するのが原則である自転車にとっては、このクルマの幅寄せが危険だとする声も聞こえます。自転車の普及促進やマナー啓発についての活動などを行う日本自転車普及協会(東京都品川区)は、「確かに片側1車線の道や、路側帯の幅が狭いところなどで、クルマの幅寄せが危ないという声も聞かれます」と話します。

「やはり自転車の場合も、交差点に近づいたら周囲を確認することが重要です。前のクルマが左折の合図をしていたら、先に行かせたほうがよい場合もあります」(日本自転車普及協会)

 同協会では、クルマの幅寄せが危ないという声は把握しているものの、これまで警察などと協議などはしていないといいます。

幅寄せをしないドライバーが多いのも問題?

 そもそも左折車の幅寄せには、どのような目的があるのでしょうか。東京都世田谷区の自動車教習所「フジドライビングスクール」の田中さんに聞きました。

――左折時の合図と幅寄せは、どのようにするのが正しいのでしょうか。

 交差点が近づいたら、左側や後方に自転車などがいないことを確認してウィンカーを出し、さらに周囲を確認したうえで幅寄せをします。道路交通法では「できる限り道路の左側端に寄り」としか書かれていませんが、実際の指導において聞かれた場合は、道路の端から50cm程度と教えます。なお、左側に自転車専用帯があっても、そこに入り込んで寄せます。

――幅寄せにはどのような意図があるのでしょうか?

 左折時に自転車などが進入することによる巻き込み事故を防止するためです。20年ほど前であれば、原付やバイクの進入を想定し、幅寄せの幅を道路端から75cm程度と教えていましたが、いまは自転車を想定して50cm程度としています。

――もしも左側や後方に自転車が走っていた場合は、どう左折したらよいのでしょうか?

 こうした場合は、幅寄せすると「妨害」に当たるので、自転車を先に行かせる必要があります。どこまでが妨害に当たるかは微妙なところかもしれませんが、後方の自転車にブレーキを踏ませたり、よけさせたりしたら、該当すると考えてよいでしょう。

――自転車にとって幅寄せは危険との意見もありますが、どのようにお考えでしょうか?

 法律では、左折のときは幅寄せをすることになっていますが、実際にはほとんどのドライバーが周囲の確認だけで幅寄せをしないため、一部の人が幅寄せをすることに対して「危ない」と思われがちなのだと思います。

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 田中さんは「幅寄せするか、確認のみで済ませるか、どちらかが徹底されない限りトラブルはなくならないと思いますが、後者は法律が改正されない限り難しいことです」と話します。

【図】左折時は「幅寄せ」「キープレフト」

クルマ左折時の幅寄せが危険視されるワケ 安全のためのルール、なぜトラブルの火種に

道路交通法では、左折時にはできる限り道路の左側端に寄り、かつ左側端に沿って徐行しなければならないとされている(乗りものニュース編集部作成)。