駅舎に巨大な土偶が「合体」しているという奇抜な鉄道駅が青森県にあります。しかもこの土偶、目が光ります。

なぜこのような駅が造られたのでしょうか。

総額2億1000万円! まちのシンボルと駅が「合体」

 駅舎の正面に、巨大な土偶が張り付いたかのような駅があります。青森県つがる市にあるJR五能線の木造(きづくり)駅です。

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JR五能線の木造駅(画像:つがる市)。

 この土偶のオブジェは、地元の「亀ヶ岡遺跡」から出土した縄文時代の「遮光器土偶」をかたどったもので、「しゃこちゃん」という愛称があります。しかも目の部分がときどき光り、その様子は俗に「いらっしゃいビーム」とも呼ばれているようです。

 なぜこのような駅舎ができたのか、同市役所総務課に聞きました。

――木造駅はなぜこのようなデザインになったのでしょうか?

 1987(昭和62)年の国鉄分割民営化で、木造駅が無人化されることになり、それを契機として駅を中心とした活性化計画が立てられました。1988(昭和63)年に国の政策として行われた「ふるさと創生事業」の交付金1億円を活用して、旧木造町(現・つがる市)が駅を改築しました。

 デザインは、外部有識者で構成される検討委員会の意見を聞きながら、「亀ヶ岡遺跡」のPRを兼ね、そこで出土し町のシンボルともなっている遮光器土偶と駅舎が合体したもの、というコンセプトが決まりました。完成は1992(平成4)年です。結局、費用は1億円では収まらず、およそ2億1200万円となりました。

夜は不気味? 子どもがおびえた「しゃこちゃん」の目

――「しゃこちゃん」の目はいつ、なぜ光るのでしょうか?

 光るのは列車が駅に近づいたときで、その到着を知らせるためです。駅に通じる直線道路から目が見えるので、わたしもかつては目が光っているのを見たら、急いで駅に向かったものでした。ただ、過去には「夜に光ると不気味だ」という苦情もありました。

――「いらっしゃいビーム」という呼称はもとからあるのでしょうか?

 いえ、つがる市としてそのような呼称は使っていません。どこかの記事から広まったものと思います。

――訪れる人はどのような反応でしょうか?

 列車だけでなく、クルマでも観光客が訪れて、よく写真を撮られています。

駅舎が土偶で目からビーム!? 子どもがおびえた「ふるさと創生」、衝撃の木造駅

駅舎の入口付近には、「しゃこちゃん」の巨大な脚が(画像:つがる市)。

※ ※ ※

 木造駅は現在、改札業務を実施する簡易委託駅で、毎日朝8時から18時ころまで駅員が勤務しています。「しゃこちゃん」の目を灯すのは完全に手動で、列車の接近に合わせ駅員がこれに当たっており、18時以降の夜間に目が光ることはないといいます。また駅員の勤務時間中であれば、申し出に応じて列車の到着時以外でも随時、目を光らせているそうです。

 ちなみに木造駅の駅舎は鉄筋コンクリート、「しゃこちゃん」もコンクリート製とのことです。

【地図】木造駅の位置

駅舎が土偶で目からビーム!? 子どもがおびえた「ふるさと創生」、衝撃の木造駅

弘前駅からおよそ30km、津軽半島の付け根部分に位置する(国土地理院の地図を加工)。