速さと合わせ、乗り心地も進化を続ける新幹線。はたして最新の北陸新幹線では、どのくらい良くなっているのでしょうか。

まだデビュー前の北陸新幹線W7系で、タバコと500円玉を使い試してみました。

タバコ換算で倍以上良くなった新幹線の乗り心地

 200km/h以上の高速で走る新幹線ですが、カーブがゆるいといった環境の良さ、車両性能などから、在来線より揺れないと感じる人は多いかもしれません。

 その新幹線、はたしてどれぐらい乗り心地が良いのでしょうか。2015年2月5日(木)、報道試乗が行われたまだデビュー前の北陸新幹線用最新車両、W7系で試してみました。車両はグランクラスやグリーン車ではなく、普通車です。

 まず実験したのは、窓枠の物が置ける部分にタバコを立てることです。

JR東日本の代表取締役会長も務めた故山之内秀一郎さんはその著書『東北・上越新幹線』(JTBキャンブックス)において、次のように述べています。

「東北新幹線の開業前の試運転中に、『煙草が立つ』という噂が広がったので、私も乗ったときに窓の横に煙草を立ててみた。事実二十~三十秒間ぐらい煙草は倒れずに立っていた」

 東北新幹線が開業したのは1982(昭和57)年です。それから33年後、最新の北陸新幹線で立たないはずはないだろうと試したのですが、少々驚いたことが起きました。当然のように立ったのですが、1分を過ぎても何事もなかったように、平然とタバコは立ち続けていたのです。もちろん特段の加減速がない安定走行中の話ですが、外部区間、トンネル区間関係なく立ち続けていました。

 残念ながら時間が限られていたため1分強で実験を終了しましたが、新幹線の乗り心地はタバコで換算すると、この33年で倍以上は良くなっている計算です。

18年前は難しかったコイン、北陸新幹線では?

 最新の北陸新幹線W7系はどれぐらい乗り心地が良いのか、もうひとつ試してみました。コイン(500円玉)を立てることです。これは難易度が高いようで、故山之内秀一郎さんも『東北・上越新幹線』(JTBキャンブックス)のなかで次のように述べています。

「長野新幹線の開業の時のE2系電車の乗り心地は(東北新幹線より)さらに素晴らしく、今度は『コインが立つ』と言われた。その時も私は実際にやってみたのだが、コインは回ってしまうので静かに立てておくことは難しかった」

 長野新幹線は1997(平成9)年、北陸新幹線の高崎~長野間が先行開業する形で誕生した路線です。

それから18年後、はたしてコインは立つのでしょうか。

 北陸新幹線W7系の車内で、コインは立ちました。タバコのように簡単には立たず、へりに接する形ではありますが、少なくともおよそ30秒は立ちました。新幹線の乗り心地はコインで換算すると、まともに立たなかったものが30秒程度は立つほどに進化した計算です。

コインがもっと長く立ち続ける可能性も

 実験を行ったのはJR西日本W7系の5号車(W725-202、モーター搭載、普通車)で、車内での実験位置は台車と車両中央部の中間付近です。車内でもっとも揺れが少ない場所は車両中央部分のため、ベストな位置とはいえない場所でした。

 またW7系の普通車には「セミアクティブサスペンション」という制振装置が搭載されていますが、グランクラスには「フルアクティブサスペンション」というさらに性能の高い制振装置があります。

 グランクラスで車両中央部に乗りコインを立ててみたら、もっと長く立ち続けるかもしれません。