ブラックジョークということもできますが、当然ながら安部首相は存命の人物であり、殺人予告のようなものと捉えることもできます。
このように、生きている人のWikipediaを編集して没年月日を書くことは、法的に問題があるとはいえないのでしょうか。
■「一般読者の普通の注意と読み方」がポイント
直接的に殺人を予告しているわけではないので、問題ないという考え方もあると思います。
しかし、ある記事や記載を読む場合、その字面だけを追うのではなく、その言葉の意味や含意を考えるということは日常的に行っていると思います。比喩表現などはまさにそのようなものの典型といえます。
法的な思考をするときも、全く同じように考えます。ただ、これを「一般読者の普通の注意と読み方をする」と表現します。
「一般読者」というのは、通常の理解力を持った平均的な的な人という程度の意味です。そして、「普通の注意と読み方」というのは、そのような一般読者の立場にたったときに、特殊な読み込みをせずに読み取りなさい、ということです。
■脅迫罪に当たると見ることは可能
このような前提に立った場合、存命の人物の没年を書けば、その人物の命を断とうとしていると読み取ることは可能だと思います。
加えて、首相に対して終戦記念日を没日としているのですから、何らかの政治的主張があるということも読み取ることができます。この観点を加えると、殺人予告と見ることは可能だと考えます。
殺人を予告することは、人命に対する危害を加えることであるため、脅迫罪に当たります。
このように、場合により大事になることである以上、安易に没年を書くようなことはするべきではなく、そもそも自分がされたら不快に思うことは止めるべきでしょう。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)