ボジョレー・ヌーボーってなに?

 今年のボジョレー・ヌーボー解禁日は11月20日(木)だった。解禁日は、毎年11月第3木曜日と決められている。

当初は11月15日だったのだが、日付固定だと休日になってしまう(業者が休みで困る)年があるため、1984年から現在のように改められたという経緯がある。
 毎年盛大に売り出されるため美味しいのかと思いきや、飲んでみてがっかりしたという経験をお持ちの方は多いのではないだろうか。しかし、そのがっかりは早トチリした飲み手側が悪い。そもそもボジョレー・ヌーボーとは味わうワインではないのだ。
 ボジョレー・ヌーボーとは、フランスのブルゴーニュ地方ボジョレー地区で作られるワイン(ボジョレー)の新酒(ヌーボー)である。シャンパンやスコッチと同じように、特定の地域で作られたお酒というものだ。
なので、一口にボジョレーと言ってもメーカーの数だけ種類がある。サントリーが正規代理店のジョルジュ・デュブッフは「ボジョレーの帝王」と呼ばれていて有名だ。その新酒であるボジョレー・ヌーボーは、その年に収穫されたぶどうの出来を確認するための試飲酒で、炭酸ガスを注入する急速発酵技術を用いて数週間で醸造される。そのため、深味のない軽い感じの味になるようだ。ワインメーカーやぶどう農家がその年の収穫を祝ったり、販売業者がその年の購入量を決める目安にしたりというのが、ボジョレー・ヌーボーの本来の飲まれ方なのだ。
 どうやら、一般人がこれほどボジョレー・ヌーボーを飲む国は日本だけらしい。
2007年のデータによると、なんとボジョレー・ヌーボーの46%は日本が輸入しているのだ。約半分である。日本人の年間ワイン消費量は2リットルだが、ヨーロッパの国では少なくて20リットル以上、消費の多いイタリアは48リットルだ。日本の10~20倍のワインを飲んでいる国々が多数あるにも関わらず、ボジョレー・ヌーボーの輸入量においては日本が圧倒的に他国を上回っている。日本人は何かとイベント好きなため恒例化したのだと思わるが、海外から見たら「なぜそんなものを好き好んで飲んでるんだ?」と笑われる事態かもしれない。

盛大なキャッチコピー

 しかし、なぜ「ボジョレー・ヌーボー=美味しい」という印象があるのだろう。

おそらくそれは、盛大なキャッチコピーのせいだろう。今年のものを含め、過去23年分をご紹介しよう。

1983年「これまでで一番強くかつ攻撃的な味」
1985年「近年にない上物」
1992年「過去2年のものよりフルーティーで、軽い」
1995年「ここ数年で一番出来が良い」
1996年「10年に1度の逸品」
1997年「まろやかで濃厚。近年まれにみるワインの出来で過去10年間でトップクラス」
1998年「例年のようにおいしく、フレッシュな口当たり」
1999年「1000年代最後の新酒ワインは近年にない出来」
2000年「今世紀最後の新酒ワインは色鮮やか、甘みがある味」
2001年「ここ10年で最もいい出来栄え」
2002年「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄えで1995年以来の出来」
2003年「110年ぶりの当たり年」
2004年「香りが強く中々の出来栄え」
2005年「タフな03年とはまた違い、本来の軽さを備え、これぞ『ザ・ヌーボー』」
2006年「今も語り継がれる76年や05年に近い出来」
2007年「柔らかく果実味豊かで上質な味わい」
2008年「豊かな果実味と程よい酸味が調和した味」
2009年「過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来」
2010年「2009年と同等の出来」
2011年「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」
2012年「偉大な繊細さと複雑な香りを持ち合わせ、心地よく、よく熟すことができて健全」
2013年「みずみずしさが感じられる素晴らしい品質」
2014年「エレガントで味わい深く、とてもバランスがよい」

 2000年前後は「過去最高」のインフレ状態である。この強烈なキャッチコピーによって、「ボジョレー・ヌーボー=美味しい」と刷り込まれてしまったのだろう。

おいしい飲み方

 以上の紹介でボジョレー・ヌーボーがどんなものなのか、だいたいおわかり頂けただろう。

この知識を踏まえた上で改めて飲んでみれば、ボジョレー・ヌーボーの味についてこれまでと違った見解を持てるかもしれない。そこで、いくつかの美味しく飲むための方法を紹介しよう。
 まず、年内には飲みきること。ワインは寝かせるほど熟成されるイメージがあるが、ボジョレー・ヌーボーは保存しても美味しくならない。これを大前提として、具体的な飲み方はというと、ボトルを寝かせて保存し、飲む前に10~12℃くらいに冷やす。冷蔵庫に1時間程度入れておけば、ちょうどよい温度になるだろう。
また、飲む際は口の狭いグラスを使うと、比較的弱いといわれるボジョレーの香りを逃さずに楽しむことができる。

 世界で日本だけしか盛り上がってなかったとしても、まだ飲んだことがない人は一度くらいは飲んでみてはいかがだろうか?

(文・編集部)イラスト:jennyb79 / 123RF.com