■痴漢ビジネスは実在する
痴漢冤罪は従前より大きな問題となっていますが、実はこの痴漢冤罪をビジネスにしている人間が実際にいるようなのです。
そもそも痴漢冤罪ビジネスの手口ですが、基本的には複数の人間で行います。

まずターゲットとなる男性に被害者役の女性が接触し、「この人痴漢です!」などと突然騒ぎ立てます。その後、目撃者役の人間が「私ははっきり見ました。」などと証言し、大事になることを恐れ男性が示談金を支払ってしまう、という流れです。
驚くべきことに、過去には痴漢による示談金を1年半の間に6回、総額240万円も受け取ったという女性がいたそうです。もちろん、この女性のケースが痴漢冤罪かどうか、ビジネスとしてやっていたかどうかは断定できませんが、実際に痴漢冤罪が裁判で認められ、女性側が男性側に痴漢冤罪でっち上げの慰謝料を支払ったというケースも存在します。

■でっちあげた人が問われる罪
なお、痴漢冤罪をでっち上げて賠償金を受け取る行為は恐喝罪に該当し、10年以下の懲役となりますし、また、警察に告訴した場合は虚偽告訴罪に該当し、3か月以上10年以下の懲役となります。このようなリスクがあるにもかかわらず、痴漢冤罪ビジネスは水面下で消えることなく続いているようです。
これは、痴漢事件ではいとも簡単に男性が逮捕されてしまう可能性があることが根本的な原因ではないかと思います。

■でっち上げでも逮捕されてしまう
電車内で痴漢に間違われた場合、その場でどんなに「やっていない」と必死で説明したとしても、被害者(と思われる)女性から「この人に触られた」と申告されてしまえば、これだけで簡単に現行犯逮捕される可能性があるのです。通常の逮捕の場合は、裁判官が本当にこの人を逮捕してよいのかという事前審査があるのですが、現行犯逮捕の場合はそのような事前審査はありません。その場にいる(というより通報を受けて駆け付けた)警察官の判断のみで逮捕できてしまうのです。目撃者らしき人がいればほぼ100%逮捕でしょう。
このようないい加減な逮捕であっても、逮捕されてしまえばマスコミは氏名、年齢、職業、を公開します。
これで社会的信用はガタ落ちです。会社はクビになり、奥さんからは離婚を言い渡されてしまいます。
このように、痴漢冤罪というのは示談に応じないととてつもなく大きなリスクを負う可能性が非常に大きい犯罪類型であります。ですので、実際にやっていなくてもお金を払って済ますことができるのであれば済ませたいと考えるのも無理はないと思います。痴漢冤罪ビジネスというのはこのような男性の弱みに付け込む卑劣な犯罪なのです。
男性としては非常に迷惑であり、かつ怖い存在でありますが、逆に相手方も犯罪行為をしているわけですので、大事にされるのを非常に嫌います。
ですので、このような痴漢冤罪に巻き込まれた場合は自分一人で判断してしまうのではなく、早急に弁護士に相談し、最善の策を練ることが一番大切であると思います。

*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)