松本潤と有村架純が、映画『ナラタージュ』で大人の恋愛を紡いだ。それは、教師と生徒として出会った二人の、一生に一度しか巡り会えない禁断の恋。
イメージを覆すようなキャラクターで、大胆ラブシーンにもトライした彼ら。共演はドラマ『失恋ショコラティエ』で兄妹役を演じて以来となるが、松本は「たくましくなっていた」と有村の成長に驚くことしきり。苦しい恋に身を投じた感想とともに、お互いへの信頼度を語ってもらった。

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 原作は2006年版「この恋愛小説がすごい!」第1位に輝いた島本理生の同名小説。大学生のヒロイン・泉が、高校教師の葉山と再会。妻のいる彼とすべてを捧げてもいいと思える恋に落ちていく姿を描く。


 まっすぐに「好き」という想いをぶつけてくる泉に対して、葉山の気持ちは曖昧だ。松本がオーラを消して、恋に苦悶する男を演じているのも新鮮だが、松本は「ラブストーリーって、双方向の想いが描かれる印象がありますが、本作では台本を読んでも葉山の心情は描かれていなくて。今までやったことがないアプローチになると思ったので、ぜひやってみたいと思った」と吐露。「葉山としてどこまで見せるのか、どう表現するのか。そういったことをやれたのは新しい経験でした」とつかみどころのない、難役だからこそぶつかってみたいと思ったそう。

 有村にとっても、激しい恋に落ち、身も心もさらけ出す役柄は新境地。
「今まで私は、まっすぐで素直な女の子という正統派な役柄が多くて。このような作品や役柄に出会ったのは初めてでした」と語り、「そういう役が多いイメージを持たれているとも思っていたので、今回のような役をいただけるとは思わなくて。素直にうれしかったし、それと同時に、今しかできないことをこの作品で残したいと強く思いました」と女優としての強い意志をのぞかせる。

 2014年のドラマ『失恋ショコラティエ』では兄妹役を演じた彼ら。“兄妹”から“禁断愛の相手”となった感想は?松本は「本作までの間に、すごい数の現場を経験されたんだと思う。たくましくなっていた」とにっこり。
「お芝居を始めると、架純ちゃんはすごいですよ。ものすごく雰囲気がある。富山で撮影をしていたんですが、現場に行くと、凛として泉を背負った架純ちゃんがいてくれる。僕もそこに行くと自然と葉山になれたと思います」。 一方の有村は「以前はお兄ちゃんだったので、今回のお話をいただいて“ああ、そうか…”と。松本さんの写真を見て、“葉山先生”と思ったりして。
お兄ちゃんから葉山先生に切り替えました」と照れ笑い。「変わらないなと思ったのは、プロフェッショナルな部分。みんなが気持ち良く幸せになれる形というのを、瞬時に判断してくださる。私はカメラの位置や照明さんの位置など、すべてを把握してお芝居をすることがなかなかできなくて。でも松本さんは、スタッフさんも幸せになる形をスッととってくださる」。

 信頼感もたっぷりに禁断愛を体現したが、葉山と泉でいる時間は「苦しかった」と声をそろえる。
「葉山と泉は、絶対的な負のエネルギーのチャンネルがたまたま合って惹かれ合っていったんだと思う。倫理観ということで言えばナシなんだろうけれど、それは理屈で動けるものではないし」(松本)。「葉山先生といるとき、泉はずっと背伸びをしていて。すごく苦しい時間だった。葉山先生は泉にとって命の恩人だし、それだけ大きな存在だったとしか言いようがない」(有村)と、苦しくとも止められない恋心について思いを馳せる。

 美しくも激しいラブシーンも強く印象に残る。
松本は「葉山は言葉が少なくて、自分の気持ちを伝えようとしないキャラクター。その葉山の感情がむき出しになるシーンでもあります。自分の想いを語るのが極端に少ない役なので、そういうシーンがより強く残るのかもしれないですね」と語る。彼らが体当たりで挑んだ、痛いほど切ない恋をぜひ目撃してほしい。(取材・文・写真:成田おり枝)

 『ナラタージュ』は10月7日より公開。